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雌阿寒岳(めあかんだけ)は、北海道、阿寒の活火山で標高1,499m。古くはアイヌ語でマチネシリ。玄武岩からデイサイト(SiO2 50 - 70%)の成層火山群、1000 - 2500年前には、阿寒富士火山体が形成。日本百名山に選定されている[1]。
概要
釧路市と足寄町に跨っているだけではなく、振興局も跨いでそびえている。国土地理院による正式名称は雌阿寒岳だが、深田久弥の百名山をはじめ一般に阿寒岳というと、この雌阿寒岳を指すことが多い。
阿寒の名を冠する山は他に二座あり、雌阿寒岳の近くに阿寒富士(1,476m)、少し離れて雄阿寒岳(1,371m)がある。何れも火山である。雄阿寒岳と阿寒富士は今のところ静かだが、雌阿寒岳は現在もさかんに活動している。登山家の深田久弥が訪れた1959年や、最近では1998年に小規模な噴火を起こし、周辺では降灰が観測され、登山の禁止と解除が繰り返されている。2006年3月21日に小規模噴火を起こした。
登山道はオンネトー湖畔からのものと雌阿寒温泉からのもの、他に阿寒湖畔からのものなど数本があるが雌阿寒温泉とオンネトーからのものがよく利用される。両コースの場合、山頂までは夏場の標準的な登山の場合で3時間程度。標高差は約800m程度。北海道の山の中でも比較的登山道の整備もよく、コースからの眺望も良好で家族連れや初心者にも上りやすい山である。ただし活火山のため登山が制限される場合があるのと夏場でも悪天候に注意は必要である。頂上には1972年に落雷のため登山中に死亡した小学生を悼む石碑が建っている。
周辺の地理
阿寒周辺をはじめ周辺にはこれらの火山から流れ出た溶岩が周辺の川を堰き止めて作った湖が点在していて、マリモで有名な阿寒湖は雄阿寒岳の麓にあるが、多数の遊覧船が湖面を埋め、湖畔の温泉街と共に『観光地化』されている。 雄阿寒岳周辺にはペンケトーとパンケトーという湖もあり、アクセスの悪さから観光開発がされず原始的な雰囲気を残している。雌阿寒岳の麓には静かな原生林に囲まれた雌阿寒温泉(野中温泉)と、かつて秘湖と呼ばれたオンネトーがある。
阿寒周辺は過去に巨大カルデラ噴火があったと考えられ、その結果、阿寒湖が形成されたとも言われているが、まだ詳細は分かっていない。
火山活動
頂上部には大きな噴火口がある。その周辺数カ所や山麓のいくつかの場所には噴気口があり、活発に噴煙を上げている。噴火口の底には雨水のたまった小さな沼が存在する。昔は赤沼、青沼、小赤沼と3つの沼があったが、80年代後半から火山活動の活発化による地熱の上昇によって小赤沼は干上がってしまい、現在見られるのは赤沼と青沼だけである。
気象庁の常時観測火山で火山性微動や噴火に伴う空気の振動等を観測するための地震計や空振計が設置されている[2]。2006年12月16日には噴火警戒レベルが導入された。
噴火の歴史
噴火活動は、主にポンマチネシリ火口及び中マチネシリ火口で行われていて、しばしば噴火が見られるなど活発な活動が知られているが、雌阿寒岳が見える範囲に住民が入植した1900年代初頭以前の活動は知られていない。火山の周辺は無人地帯で集落等は存在せず国道と道道、僅かな宿泊施設が点在するのみであり、かなり大規模な噴火が生じない限り、直接的な被害は生じないものと考えられている。有史以降の噴火は、水蒸気爆発 - マグマ水蒸気爆発による噴火である。
- 1951年 7月から1952年 2月にかけて断続的に鳴動が起きる。
- 1952年 3月 十勝沖地震の直後から数日間鳴動が活発になる[3]。
- 1954年-1961年 断続的に小噴火、火山灰が降灰。噴火時の風向きにより北東70kmの網走市、東40kmの弟子屈町へ及ぶ。
- 1964年-1966年 断続的に小噴火。
- 1988年 小噴火。
- 1996年 小噴火。北側約50km程度の半径のドーナツ状の範囲に微量の降灰。
- 2006年 小噴火。火口西側にごく小規模な融雪を伴う泥流が発生。
植生
山麓は樹林帯で、エゾマツ、アカエゾマツ、ダケカンバなど北海道の原生林によく見られる樹種が多い。標高900m近くまで上がるとハイマツの林となり、眺望も開けてくる。更に標高1,100mを越えると高山植物帯となる。
この山で見られる高山植物のうち、メアカンキンバイとメアカンフスマの2種にこの山の名前が付けられている。最初に発見されたのがこの山で、現在でも多数がこの山で見られるが、この山の固有種ではない。
標高1,200m以上では大部分は火山性の砂礫地で、所々に高山植物が群生している。以前は登山道の近くでも「高山植物の女王」と呼ばれるコマクサが多数生えていたが、登山者の盗掘によってすっかり少なくなってしまった。
中腹のハイマツ帯では秋にはマツタケが生えるが、雌阿寒岳は阿寒摩周国立公園の中にあるため採取は禁止されている。
アイヌによる伝承
火口から噴煙を上げ、火山活動の影響で草木が生えない雌阿寒岳の姿を見たアイヌ民族は、「山同士の争いに巻き込まれて槍で突かれ、傷口から膿を流している」と解釈し、さまざまな伝説を造り上げてきた。
以下はその例である。
- 雄阿寒岳と雌阿寒岳は夫婦の山だったが、雄阿寒岳は留辺蘂の奥にあるポンヌプリ(小さい山)を妾として囲っていた。それを知った魔の神・ニッネカムイが「山のくせに妾を持つのは生意気だ」と、雄阿寒はおろか罪科の無い雌阿寒まで槍で突き刺した。雌阿寒の火口は、その傷跡だという。
- 大雪山系のオプタテシケ山と雌阿寒岳は夫婦山だった。ところが喧嘩別れして、雌阿寒は実家に帰ってしまった。いつか恨みを晴らしてやろうと機会を窺う雌阿寒は、ある時ついに遠くのオプタテシケ目掛けて槍を投げつけた。それを見た十勝のヌプカウシ山が驚いて止めようとして、片方の耳を削られた。騒ぎを知ったオプタテシケは槍を投げ返して雌阿寒に命中させたので、今でも雌阿寒は傷から膿を流しているのだ。なお、槍を止めようと立ち上がったヌプカウシの居場所に水が溜まったのが然別湖である。
雌阿寒岳 ギャラリー
- Onneto and Akan1 DSCN2488 20060805.JPG
オンネトーから見た雌阿寒岳(左)と阿寒富士(右)
- Meakan.JPG
雄阿寒岳五合目より
周辺の山
脚注
- ↑ 『日本百名山』深田久弥(著)、朝日新聞社、1982年、ISBN 4-02-260871-4
- ↑ “雌阿寒噴火の危険に備えて 専門家「地震情報周知を」「噴石対策必要」”. 北海道新聞 (北海道新聞社). (2014年10月14日)
- ↑ 大地震によって誘発された噴火 (PDF) 北海道大学地球物理学研究報告
関連項目
外部リンク
- 雌阿寒岳 -
- 日本活火山総覧(第4版)Web掲載版 雌阿寒岳 (PDF) - 気象庁
- 日本の第四紀火山:雌阿寒岳 - 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
- 雌阿寒岳の雌阿寒の概要 - 北海道釧路土木現業所
- 防災関連
- 雌阿寒岳火山防災ガイドブック 保存版 雌阿寒岳火山防災会議協議会版 - 防災科学技術研究所
- 雌阿寒岳ハザードマップ - 釧路市