ja>ロゴスマン |
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− | {{otheruses|概念としてのロゴス|その他}}
| + | logos;古典ギリシア語の λόγος |
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− | '''ロゴス'''(logos)とは、[[ギリシア語|古典ギリシア語]]の {{lang|el|'''λόγος'''}} の音写で、
| + | 理性,言語,理法(法則),比例,定義などさまざまに訳されるギリシア語で,古代哲学,神学における重要な概念。[[ヘラクレイトス]]はロゴスを万物の生成を支配する永遠の理法とし,[[ストア派]]は世界を合目的的に支配する原理として神と同一視した。なおストア派は個物を形成する[[能動的理性]]を種子的ロゴス(ロゴス・スペルマチコス),分かたれて個々の人間に内在する思想 ratioとしてのロゴスをロゴス・エンディアテトス,ことばとして表出された oratioとしてのロゴスをロゴス・プロフォリコスと呼んだ。ユダヤ神学とギリシア哲学の融合を試みたアレクサンドリアの[[フィロン]]は,ロゴスを神と同一視せず,神と世界とを仲介し世界形成に関与する神的存在とした。これは『[[ヨハネによる福音書]]』における神のひとり子[[イエス・キリスト]]として受肉したロゴスと近似しており,直接の依存関係はないが[[キリスト教神学]]に与えた影響は大きい。 |
− | #[[言葉]]、[[言語]]、[[話]]、[[真理]]、[[真実]]、[[理性]]、 [[概念]]、[[意味]]、[[論理]]、[[説明]]、[[理由]]、[[定義]]、[[理論]]、[[思想]]、[[議論]]、[[論証]]、[[言表]]、[[発言]]、[[説教]]、[[教義]]、[[演説]]、[[質問]]、[[伝達]]、[[文字]]、[[文]]、[[口]]、[[声]]、[[名声]]、[[理法]](法則)、[[原因]]、[[根拠]]、[[秩序]]、[[原理]]、[[自然]]、[[物質]]、[[本性]]、[[神]]、[[計算|運命]]、[[熱意]]、[[計算]]、[[比例]]、[[尺度]]、[[比率]]、[[類比]]、[[算定]]、[[考慮]]などの意味<ref>出典は広辞苑</ref>。
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− | 転じて「論理的に語られたもの」「語りうるもの」という意味で用いられることもある。
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− | #万物の流転のあいだに存する、調和・統一ある理性法則。
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− | #[[キリスト教]]では、神のことば、世界を構成する論理としての[[イエス・キリスト]]を意味する。
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− | == 語彙、対比 ==
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− | ロゴスは、'''[[ミュトス]]'''と対比して用いられていた。
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− | ミュトスは、最近では“神話”とワンパターンに翻訳されることも多いが、原義としては、人が語る“ものがたり”や“お話”全般を指すのであり、ギリシャ[[悲劇]]や[[喜劇]]、[[アイソーポス]](イソップ)の寓話の題材もミュトスである。
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− | このミュトスに対して、ロゴスはある。「[[空想]]」に対して「[[理性]]」があり、「[[物語]]る言葉」に対して「[[論証]]する言葉」があるのである。
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− | == 歴史 ==
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− | === 古代ギリシャ ===
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− | ロゴスを最初期に世界原理とした哲学者は[[ヘラクレイトス]]である。ヘラクレイトスは世界の本性である[[アルケー]]([[根源原理]])ただし、[[原子]]の意味ではないが[[火]]また[[戦]]([[戦争]])にあると説いた。そのような絶えず流動する世界を根幹でつなぐのがロゴスであるとされた。ロゴスはここでは、世界を構成する言葉、論理として把握される。
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− | [[紀元前5世紀]]には[[ソフィスト]]が[[弁論術]]を教えた。そのなかには文法の知識もあったが、これは直接にはヘラクレイトスとの関係をもたなかった。[[ソクラテス]]は[[対話]]による「産婆術」を行い、また弟子である[[プラトン]]はいくつかの言葉についての考察を行ったが、とくに中期以降は[[幾何学]]が重視されるようになる。
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− | === ヘレニズム、ストア派 ===
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− | {{main|ストア哲学}}
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− | ロゴスが哲学用語として注目されるのは、[[ヘレニズム]]期の[[ストア哲学]]である。[[ゼノン]]をはじめとする[[ストア派]]の哲学者は、神が定めた世界の神的な論理を「ロゴス」と呼び、ときにこれを神とも同一視した。このような神格化に伴い、ロゴス賛歌のような詩も作られた。
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− | [[ストア派]]において、ロゴスは根幹となる概念であり、世界を定める理を意味する。ストア派のロゴスは「自然」(ピュシス、[[本性]])や「運命」〔テュケー)とも表現され[[神]]とも同一視される。また人間は世界の一部であり「人間の自然本性」としてロゴスを持って生まれているとされる。こうした「人間の自然」としてのロゴスは[[ダイモーン]]や[[ヌース]]とも呼ばれ、これに従った生き方が[[賢者]]の生き方であるとされる。 | |
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− | === キリスト教 ===
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− | キリスト教の成立にあたり、このようなロゴス観は大きな影響を与えた。
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− | 『[[ヨハネによる福音書]]』の冒頭では以下のように述べられる。
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− | {{quotation|
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− | {{lang|el|Ἐν [[アルケー|ἀρχῇ]] ἦν ὁ '''Λόγος''', καὶ ὁ '''Λόγος''' ἦν πρὸς τὸν Θεόν, καὶ Θεὸς ἦν ὁ '''Λόγος'''.}}<br/>
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− | はじめに言(ロゴス)があった。言は神とともにあり、言は神であった
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− | |『ヨハネによる福音書』1:1({{lang|grc|''Κατά Ιωάννην Ευαγγέλιο''}}<ref>{{cite wikisource|Κατά_Ιωάννην|Καινή Διαθήκη|el|nobullet=yes}}</ref>)}}
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− | これはキリストについて述べたものと解され、[[三位一体]]の教説の成立に当たって重大な影響を及ぼした。ロゴスは「父」の言である「子」(=イエス)の本質とみなされた。これにより「ロゴス」リストの別称ともなった。
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− | この箇所の{{lang|el|λόγος}}(ロゴス)は、[[ラテン語]]版聖書([[ウルガタ]]版)ヨハネによる福音書では ''{{lang|la|'''verbum'''}}''(ウェルブム) と訳された。
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− | {{quotation|{{lang|la|in principio erat '''Verbum''' et '''Verbum''' erat apud Deum et Deus erat '''Verbum'''.}}|{{lang|la|''Biblia Sacra Vulgata (Stuttgartensia)/Ioannes''}}<ref>{{cite wikisource|Biblia_Sacra_Vulgata_(Stuttgartensia)/Ioannes|Ioannes|la|nobullet=yes}}</ref>}}
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− | [[アウグスティヌス]]はこの一節を踏まえ、[[父なる神]]のロゴス({{lang|la|verbum}}、言)である子(=イエス)と、ロゴス({{lang|la|verbum}}、言)が担う愛としての[[聖霊]]についての説を展開し、父と子から[[聖霊]]が発出するという[[フィリオクェ問題|フィリオクェの教説]]を擁護した。
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− | (キリスト理解としてのロゴス論については、[[イエス・キリスト]]を参照)
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− | [[キリスト]]としての神の本性が、ロゴスすなわち論理と解されたことによって、[[西ヨーロッパ]]における[[哲学]]のひとつの流れである、[[論理]]と[[思弁]]を重んじる風潮、さらには[[論理]]と[[言語]]によって神を把握しようとする積極[[神学]]の道が拓かれた。このような背景もあり、今日哲学の分野で「ロゴス」といわれるときには、程度の差はあれ、単なる構造としての論理ではなく、“語られる力ある言”という“人格的な、かつ神的なロゴス”理解の影響があることが一般的である。
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− | === 論理学としての流れ ===
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− | その一方で、思考の論理としてのロゴスの学としての[[論理学]]の流れがある。アリストテレスによって綜合された古代のロゴスの学([[ロギケー]])は、[[ラテン語]]では logica と呼ばれた。これは[[ヨーロッパ]]の[[中世]]において[[神学]]の予備学である[[自由七科]]のひとつとされた。論理学は、[[幾何学]]など数学とともに教えられた。現代哲学において、あるいは数学において、[[論理学]]は重要な分野のひとつであり、ある種非認証の論理の厳密な追求が行われている。古代のロゴス理解とは同一ではないが、世界の構成原理としてのロゴスはこのような形でも追求されているのである。
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− | == 脚注 ==
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− | <references />
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− | == 関連項目 ==
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− | * [[イエス・キリスト]]
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− | * [[アレクサンドリアのフィロン]]
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− | * [[-logy]]
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− | * [[ミュトス]]
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