ワイモバイル
ワイモバイル株式会社(Ymobile[1] Corporation)は、東京都港区に本社を設置し、かつて存在した日本の電気通信事業者である。
2014年7月1日付けでイー・アクセス株式会社から商号変更した[2]。
主にADSL回線の卸売、及びY!mobileのブランド名で移動体通信およびPHSサービスを提供している。2013年1月1日付で一度ソフトバンクの完全子会社となったが[3][4]、議決権付株式の売却により、同年1月17日から持分法適用関連会社となった[5]。
2015年4月1日、ソフトバンクモバイル株式会社(2015年7月1日付でソフトバンク株式会社に商号変更[6])に吸収合併され、解散した[7]。
概要
- 誕生
1999年(平成11年)に、インターネット・サービス・プロバイダとADSL回線の契約を一括で提供するホールセール(卸売)を行う企業として設立。
当時の商号は「イー・アクセス株式会社」である。
- ADSL事業
2000年(平成12年)4月28日、東京の青山局で無料試験サービス(下り最大512kbps、上り最大256kbps)を開始した後、同年10月1日に正式にサービスを開始した。
2002年(平成14年)6月には、当時の日本テレコム(事業上はのちのソフトバンクテレコム、会社組織上は同ソフトバンクモバイル、現:ソフトバンク)からADSL事業(J-DSL)を約55億円で譲り受け。同時に日本テレコムが筆頭株主となった。
- ISP事業
2004年(平成16年)7月1日、AOLジャパンから日本国内に於けるAOL事業を約21億円で譲り受け、ISP事業へ参入した。
- 移動体通信事業(イーモバイル)
2005年(平成17年)移動体通信事業会社としてイー・モバイル株式会社を設立。サービス開始は2007年(平成19年)(データ通信)、2008年(平成20年)(音声通話)である。
2005年(平成17年)11月9日、総務省電波監理審議会[8]の答申により、BBモバイル(ソフトバンクグループ)及びアイピーモバイルと同時に事業計画の認定が発表された。これにより、事業認可と電波免許の交付(1.7GHz帯)が行われた。コアネットワークはエリクソン、基地局はエリクソン(東名阪地域)と華為技術(その他地域)の製品を用いた。
2011年(平成23年)3月31日に親会社イー・アクセスに吸収合併され法人は解散。イー・モバイルのブランド名はモバイル事業部門のブランドとして、Y!mobileに変更されるまで継続使用された。
2012年(平成24年)6月27日、総務省はイー・アクセスに700MHz帯を割り当てることを発表[9]。
2012年(平成24年)9月、楽天株式会社との合弁(楽天51%、イー・アクセス49%出資)による楽天イー・モバイル株式会社(MVNO事業者)を設立。
- ソフトバンクとの提携へ
2012年(平成24年)10月1日に、ソフトバンクによる完全子会社化(株式交換方式)および、ソフトバンクモバイルとの業務提携が発表された[10]。
株式交換の効力発生日は、当初2013年2月28日とされたが、その後の両社の合意により2013年1月1日に変更された[11][12]。買収費用は株式取得金額が約1800億円、負債額も同じく1800億円の合計3600億円程度とされる。
完全子会社化完了後、ソフトバンクは出資比率を3分の1未満に減らす方向で検討[13]に入った。これは、ソフトバンクの連結対象会社に移動体通信事業者であるソフトバンクモバイルがあり、双方が連結対象会社である場合、総務省から「一体の移動体通信事業者」と判断され、両者の利用電波の周波数割り当て等に影響を及ぼす可能性があるため、経営支配上ソフトバンクからある程度の独立性を確保し「別個の移動体通信事業者」の立場を確保する目的とされる。
その後、 2013年1月17日付で日本国内外11社に議決権付株式の66.71%を譲渡し、連結子会社から持分法適用関連会社となった[5]。ただし2014年7月現在、ソフトバンクは全発行済株式の99.68%を保有するが、うち約99%は議決権の無い株式となっている。
なお、完全子会社化・業務提携締結の目的は、イーモバイルの1.7GHz帯LTE回線とされ、ソフトバンクのiPhone 5のテザリング事業開始の前倒しと通信総量制限の緩和を発表している[3]。なお、イー・モバイル事業は継続予定としている[14]。
ウィルコムとの合併・商号変更
2013年12月3日、株式会社ウィルコムとの合併が発表された。その後、PHSサービスに関する問合わせが相次いだことから、合併により法人としてのウィルコムは消滅するが、PHSサービスについては、継続して提供することが発表された[15]。
2013年12月4日にソフトバンクモバイル取締役専務執行役員CTOで、ウィルコムの管財人代理でワイモバイルの取締役も務める宮川潤一のTwitter(@miyakawa11)[1]によると2012年6月14日[2]に表明した圏外でウィルコムが使用できない全国すべての道の駅にPHS基地局設置についてはIP基地局化が必須であり時間を要したが、既に完成し数箇所設置後安定性の確認中である。6月にイー・アクセスとウィルコムの合併で新会社には必ず申し送りし実現すると表明した。2014年4月末現在までにPHSがエリア改善で使用できるようになった道の駅が増えている[16]。
2014年3月27日に、同年6月1日にイー・アクセスとウィルコムが経営統合を行い、合併した後の存続会社としてのイー・アクセス株式99.68%を、6月2日にヤフーがソフトバンクから3240億円で取得し、同時に社名を「ワイモバイル株式会社」とすることを発表した[17]。
これによって、2014年6月から「日本初のインターネットキャリア」として「Y!Mobileブランド」を掲げ、携帯電話・PHS事業(MVNOを含む)とADSLのホールセール事業を展開していくと表明[18]。取締役7名は、イー・アクセス側から3名、ヤフー側から社長の宮坂を含む3名、残る1人はSBからウィルコムの宮内社長で構成するとしている。この買収にあたり、ソフトバンクの孫正義社長はヤフー代表取締役の宮坂学社長に「やる以上は思い切ってやりなさい」とアドバイスをしたようである。ソフトバンクから見れば子会社の付け替えだけで売却益が557億円となる[19]。
しかし、2014年5月19日にヤフーはイー・アクセスの株式買収を中止すること、ワイモバイルへの社名変更時期を6月2日から「後日」としたことを発表した。理由として「ソフトバンクとの協議の結果、ヤフーとイー・アクセスがそれぞれ得意分野に特化した方が適切と考えた」と述べている[20]。なお、ヤフーからの取締役派遣は村上臣執行役員1名のみに留まることになった[21]。
2014年7月1日付で商号変更を実施。
なお、2018年3月31日、ソフトバンク・ウィルコム沖縄がPHS事業の新規契約受付を終了した。[22]
Y!mobileブランドの誕生
商号の変更後、2014年7月17日に、同年8月1日付でブランド名を「Y!mobile」に統一・変更することを正式に発表[23]し、新しいブランドロゴおよび料金プランも発表され、同年8月1日に「Y!mobile」ブランドが誕生した。
新料金プランは、「スマホプラン」「Pocket WiFiプラン」「ケータイプラン」の三種類[24]で、これに対応する「Y!mobile」ブランドのスマートフォン・Pocket WiFi・PHSの計7機種(同年8月1日以降順次発売)も発表された[25]。旧ブランドで発売されていた端末の一部は引き続き販売された。
旧ブランドで提供されていた料金プランや各種サービスなどは、同年7月で新規申込受付を終了した一部の料金プランを除き[26]、継続して新規申込ができる。ただし、名称変更が行われた料金プランやサービス[27]がある。
利用者向けのサポートサイトについては、従来はブランドにより「My EMOBILE」・「My WILLCOM」・「オンラインサポート(My SoftBank)」と名称が分かれていたものを「My Y!mobile」に変更・統一した。
口座振替のお知らせ・ご利用料金のご案内など請求書はMy Y!mobileにアクセスして確認することになる。紙ベースでの発行を個人契約の利用者が希望する場合、一部の例外を除き有料である[28]。
子会社
子会社として、ワイモバイル(現・ソフトバンク株式会社)が84%出資する株式会社ウィルコム沖縄がある。
沿革
- 1999年(平成11年)11月1日 - 千本倖生(第二電電株式会社の設立メンバー)によりイー・アクセス株式会社設立。
- 2000年(平成12年)
- 2001年(平成13年)9月 - カーライル・グループが第三次私募増資を通じて資本参加。
- 2002年(平成14年)
- 2月14日 - MSN Messengerを利用したインターネット電話サービスを開始。
- 6月 - 日本テレコムからADSL事業を譲り受ける。
- 2003年(平成15年)10月3日 - 東京証券取引所マザーズへ上場。
- 2004年(平成16年)
- 2005年(平成17年)11月9日 - 総務省より事業計画が認定され、1.7GHz帯が割り当てられた。
- 2006年(平成18年)8月4日 - アッカ・ネットワークスの発行済み株式の10.3%を取得。
- 2007年(平成19年)
- 3月31日 - 子会社イー・モバイルによる携帯電話事業を開始。
- 12月 - ソフトバンクとの合弁会社・オープンワイヤレスネットワークによるモバイルWiMAXの事業参入を申請したが、落選。
- 2008年(平成20年)
- 2009年(平成21年)
- 4月1日 - 東北インテリジェント通信からADSL事業を譲り受ける。
- 6月25日 - アッカ・ネットワークスを吸収合併。
- 2010年(平成22年)7月1日 - イー・モバイルを完全子会社化し、同社と経営統合。
- 2011年(平成23年)3月31日 - イー・モバイルの法人を吸収合併。合併後はイー・アクセスのブランドとなる。
- 2012年(平成24年)
- 6月27日 - 総務省より開設計画が認められ、700MHz帯が割り当てられる。
- 9月7日 - 楽天との合弁会社、楽天イー・モバイル株式会社を設立。
- 9月19日 - 楽天イー・モバイルが、Rakuten SUPER WiFiサービスの事業開始。
- 10月1日 - ソフトバンクとの株式交換による完全子会社化、およびソフトバンクモバイルとの業務提携を発表。会見には千本倖生と孫正義の創業者同士が出席した。発表時点での株式交換効力発生日は2013年2月28日。イー・モバイル事業は継続する予定で、ソフトバンクモバイルとの業務提携に基づいてネットワークを相互利用する[10][14]。
- 11月2日 - ソフトバンクとの株式交換効力発生日が2013年1月1日に前倒しされる[31]。
- 12月26日 - 上場廃止。
- 2013年(平成25年)
- 2014年(平成26年)
- 2015年(平成27年)
- 4月1日 - ソフトバンクモバイル(現・ソフトバンク)に吸収合併され、解散。
株主
議決権付き株式
以下の11社に100株ずつ譲渡される[38]。
- Alcatel-Lucent Participations(フランス)
- Telefonaktiebolaget L M Ericsson(スウェーデン)
- Comverse, Inc.(アメリカ)
- Samsung Asia Pte. Ltd.(シンガポール)
- Nokia Siemens Networks Holdings Singapore Ltd.[39](シンガポール)
- オリックス株式会社(日本)
- JA三井リース株式会社(日本)
- 東京センチュリーリース株式会社(日本)
- 芙蓉総合リース株式会社(日本)
- 三井住友ファイナンス&リース株式会社(日本)
- 三菱UFJリース株式会社(日本)
脚注・出典
- ↑ 英社名表記にエクスクラメーションマーク"!"は付かない。
- ↑ 社名変更に関するお知らせ
- ↑ 3.0 3.1 村井令二 (2012年10月1日). “ソフトバンク、イー・アクセスを約1800億円で買収”. ロイター . 2012閲覧.
- ↑ 石川温 (2012年10月2日). “攻めに転じたソフトバンク イー・アクセス買収で手に入れたもの”. 日経新聞 . 2012閲覧.
- ↑ 5.0 5.1 “子会社の異動を伴う株式譲渡に関するお知らせ”. ソフトバンク. (2013年1月17日) . 2014-1-11閲覧.
- ↑ 商号変更について
- ↑ 合併に伴う新会社発足と人事について
- ↑ 電波監理審議会の概要(総務省公式ホームページ)
- ↑ イー・アクセスが念願のプラチナバンド獲得、ドコモとKDDIにも――700MHz帯の割り当て決まる
- ↑ 10.0 10.1 “ソフトバンク株式会社による株式交換を通じてのイー・アクセス株式会社の完全子会社化に関するお知らせ 兼 ソフトバンクモバイル株式会社とイー・アクセス株式会社の業務提携のお知らせ” (PDF) (プレスリリース), ソフトバンク株式会社, (2012年10月1日)
- ↑ ソフトバンク株式会社とイー・アクセス株式会社の株式交換契約の一部変更に関するお知らせ
- ↑ ソフトバンクのイー・アクセス買収、日程など変更 - ケータイwatch 2012年11月2日
- ↑ “ソフトバンクがイー・アクセスへの出資比率を3分の1未満に 総務省、電監審に報告”. (2012年11月28日) . 2013-1-9閲覧.
- ↑ 14.0 14.1 “ソフトバンクがイー・アクセスを1800億円で買収 LTE通信設備を一気に増強”. 産経新聞. (2012年10月1日) . 2012閲覧.
- ↑ イー・アクセス株式会社との合併に関する報道発表について
- ↑ エリア改善情報 | ウィルコム(WILLCOM)
- ↑ “ヤフー、携帯キャリア「ワイモバイル」開始 -イーアクセスを3240億円で買収”. マイナビニュース. (2014年3月27日) . 2014閲覧.
- ↑ 平賀洋一 (2014年3月27日). “ヤフーがイー・アクセスとウィルコムを買収 新会社は「ワイモバイル」”. ITmedia . 2014閲覧.
- ↑ 盛田諒 (2014年3月28日). “ヤフーの携帯キャリア「ワイモバイル」の問題点”. アスキークラウド編集部 . 2014閲覧.
- ↑ ヤフーがイー・アクセス買収を中止、両社は得意領域に特化(IT Pro、2014年5月19日)
- ↑ ヤフー、携帯参入中止=イー社子会社化も-周波数帯配分への影響考慮?(時事通信、2014年5月19日)
- ↑ http://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1055943.html
- ↑ 新ブランドおよびブランドロゴについて - ワイモバイル・ウィルコム沖縄2社連名によるリリース(配信元:ワイモバイル株式会社) 2014年7月17日(2014年7月18日閲覧)
- ↑ Y!mobile 新料金について(※具体的な料金についてはスマホプランの告知のみ) - ワイモバイル・ウィルコム沖縄2社連名によるリリース(配信元:ワイモバイル株式会社) 2014年7月17日(2014年7月18日閲覧)
- ↑ Y!mobile 新商品について - ワイモバイル・ウィルコム沖縄2社連名によるリリース(配信元:ワイモバイル株式会社) 2014年7月17日(2014年7月18日閲覧)
- ↑ 4G-Sプラン、ウィルコムプランLiteなどの新規申込み受付終了について - ワイモバイル・ウィルコム沖縄2社連名によるリリース(配信元:ワイモバイル株式会社) 2014年7月17日(2014年8月2日閲覧)
- ↑ 「ワイモバイル」提供開始に伴うサービス名称変更について (PDF) - ワイモバイル株式会社 2014年7月18日(2014年8月2日閲覧)
- ↑ http://www.ymobile.jp/service/seikyusho/ 請求書発行サービス
- ↑ 創業5年での一部上場は合併、分割、合弁、子会社化などにより設立された企業以外では最短である。
- ↑ NTT東日本とNTT西日本を別事業者と解釈した場合。
- ↑ ソフトバンク株式会社とイー・アクセス株式会社の 株式交換契約の一部変更に関するお知らせ - ソフトバンク 2012年11月2日
- ↑ イー・アクセスとウィルコムの合併、6月に延期
- ↑ イー・アクセスとウィルコム、合併を6月に延期
- ↑ ウィルコム
- ↑ イーアクセス
- ↑ 社名変更に関するお知らせ - ワイモバイル 2014年7月1日
- ↑ イー・モバイルとウィルコムが「Y!mobile」に――8月にブランドを統合、スマホ2機種など新端末を順次発売(ITmedia Mobile, 2014年7月17日)
- ↑ “ソフトバンク、イー・アクセスの議決権付き株式を11社に譲渡”. (2013年1月17日) . 2013-5-10閲覧.
- ↑ ノキア・シーメンスモバイル。ノキア及びシーメンス両社の通信機器部門を統合した合弁事業。
関連項目
- Y!mobile - ワイモバイルが展開する通信サービス並びにスマートフォン・PHS方式の携帯電話・モバイルWi-Fiルーターのブランド名。