新潟市美術館
新潟市美術館(にいがたしびじゅつかん)は、新潟市中央区西大畑町5191番地9にある新潟市立の美術館。英文表記は「Niigata City Art Museum」。
概要
1985年10月13日に「みる、つくる、語る」の3つのモットーを掲げて開館。2012年にはこれをさらに進化させ、①「発見する美術館」、②「学べる美術館」、③「生きている美術館」、④「つながる美術館」、⑤「信頼の美術館」の5つを新しい運営方針の柱として策定した。コレクションは「新潟の昨日・今日・明日」「19-20世紀の美術」「21世紀の美術」の3テーマにそって収集が進められ、2017年3月現在の所蔵品総数は4,764点となっている。 特に、新潟出身の作家では阿部展也の作品収集に力を入れ、初期から晩年までの作品1,387点を所蔵。 国内作家では草間彌生の作品85点、海外作家ではウジェーヌ・カリエールの作品30点の所蔵が際立っている。 また、かつて新潟県庁舎横にあった「BSN新潟美術館」(新潟放送が運営、1964年5月1日開館 - 1985年11月5日閉館)の所蔵品の多くが同美術館の閉館後に寄託されている。
美術館の建物は道路向かいの西大畑公園とともに、新潟市出身の建築家・前川國男の最晩年の設計によるもので、1986年のBCS賞受賞作品である。2012年に導入した美術館のロゴとシンボルマークは服部一成によるデザイン。
2015年の開館30周年に合わせ、施設の大規模改修が行われ、7月19日リニューアル・オープンとなった。
- 開館時間:午前9時30分~午後6時。
- 休館日:月曜日、祝日・振替休日の翌日、年末年始(12月28日-1月3日)
コレクション
- ピエール・ボナール「浴室の裸婦」
- オディロン・ルドン「丸い光の中の子供」「黄色いケープ」「光の横顔」
- ウジェーヌ・カリエール「母と子」ほか29点
- パブロ・ピカソ「ギターとオレンジの果物鉢」「貧しい人々」「母の化粧」
- ルネ・マグリット「博学な樹」
- マックス・エルンスト「ニンフ・エコー」「兵士のバラード」
- パウル・クレー「プルンのモザイク」
- ブリジット・ライリー「Drift 1」
- クロード・ヴィアラ「無題」
- オーギュスト・ロダン「死の顔・花子」「空想する女・花子」「バルザックの頭部」
- アントワーヌ・ブールデル「アポロンの首」
- アリスティド・マイヨール「ディナの頭部」
- アルベルト・ジャコメッティ「みつめる頭部」
- アレクサンダー・カルダー「赤、空中のデイジー」
- ジョセフ・コーネル「レーダー天文学」
- 山口長男「縺れた形」
- 瑛九「(作品)」
- オノサトトシノブ「四つの丸(赤・緑・紺)」
- 菅井汲「La lune(月)」
- 大矢紀「風韻」
- 小山田二郎「漂着物」
- 今井俊満「無題」
- 篠原有司男「日本橋」
- 加納光於「稲妻取り」「振りまわす巣房の下でⅢ」
- 高松次郎「形 No.1205」「影(鍵)」「影(鍵)No.176」「紙の単体 No.362」
- 中西夏之「紫・むらさきⅩⅢ」
- 宇佐美圭司「霧の街に沈む」「作品 1963年4月17日」
- 田島征三「種まく女」「霜枯れの畑にいるバッタの霊」
- 田島征彦「こたろう」
- 絹谷幸二「ダリア・ガナッシィーニの肖像」
- 辰野登恵子「Untitled 93-18」
- 草間彌生「流星」「自己消滅」ほか
- 小山正太郎「雨益猛」ほか15点
- 土田麦僊「龍」
- 佐藤哲三「原野」ほか13点
- 横山操「グランドキャニオン」
- 阿部展也「妖精の距離」ほか
- 星襄一「光る木」ほか
- 牛腸茂雄「日々」「見慣れた街の中で」「幼年の『時間』」「扉をあけると」
交通
- 新潟駅万代口バスターミナルから新潟交通バスの下記路線を利用
- 2番線から「新潟市観光循環バス」で「新潟市美術館入口」下車後徒歩約3分(時刻表上「白山公園先回り」が29分、「朱鷺メッセ先回り」が32分)
- 4番線から「C60 八千代橋線 入船営業所」行で「西堀通八番町」下車後徒歩約5分(乗車時間約16分)
- 0・1番線から「【BRT】萬代橋ライン」で「古町」下車後徒歩約12分(乗車時間約10分)※本数が一番多い
過去の展示上の問題
2009年(平成21年)7月、「水と土の芸術祭」の会場として同美術館で展示されていた土に藁を混練した土壁状の作品にカビが発生し、隣室の展示作品にも拡大。専門家から他の作品に雑菌が付着して腐敗するおそれがあると指摘された。さらに、翌2010年2月には、展示室でクモや昆虫約40匹が発生しているのが確認された。
同美術館では、同年4月から国宝の中宮寺木造菩薩半跏像及び14点の重要文化財等を展示して企画展「奈良の古寺と仏像」を開催する予定であったが、文化庁は展示作品にカビやクモが発生したことから美術館の運営管理に問題があると判断し、国宝及び重要文化財の展示を認めない方針を決めた[1]。このため、同企画展の同美術館での開催は見送られ、長岡市の新潟県立近代美術館で開催された。
「奈良の古寺と仏像」展の開催は、中心市街地の活性化策としても大いに期待をされていただけに、市民の落胆は大きく[2]、篠田昭市長は、自らを減給30%1か月の処分とするなどしたが[3]、この混迷は、市当局による強引な美術館の人事に起因するものとして、一部世論による厳しい責任の追及もあった[4][5][6]。
その後、公募による館長の選任や学芸員の採用・育成などマンパワーの拡充と、施設の大規模改修(2014-15年)を経て、展示保存環境の増強が図られ、2016年には、国宝2点、重要文化財17点を含む「徳川名宝展」を開催。国指定文化財の公開可能館となった。
脚注
- ↑ 文化庁、クモで国宝展示認めず 新潟市美術館に - 共同通信、2010年3月10日
- ↑ 新潟市美術館:カビ・クモ発生問題 仏像展、長岡開催 古町の関係者落胆 - 毎日新聞新潟版、2010年3月18日
- ↑ 新潟市 - ようこそ市長室へ:HP版ひこうき雲平成22年3月25日
- ↑ 市美術館 仏像展断念 課題も山積 信頼どう取り戻す - 新潟日報、2010年3月20日
- ↑ 新潟市美術館 独断運営でほころび 生え抜き学芸員放出 - 毎日新聞、2010年3月21日
- ↑ 作品管理の基本 問い直す 新潟市美術館長解任 - 読売新聞、2010年3月25日
関連項目
- 新潟放送 - 当美術館が開館するまで長らく県内に美術館が存在しなかったため、新潟市一番堀通町(現・中央区)に1964年5月1日から1985年11月5日まで「BSN新潟美術館」を運営。閉館後は所蔵品を寄託。
- 北川フラム - 2007年から非常勤で館長を務めていたが、上記の展示上の問題により2010年3月12日付けで更迭された。