タタ・グループ
タタ・グループ(英語: Tata Group、ヒンディー語: टाटा、タタ財閥とも)は、インド西部、マハーラーシュトラ州の州都ムンバイを拠点とするインドの企業グループである。
ビルラ、リライアンスと並び、インド3大財閥(インドの財閥も参照)のひとつであり、サブグループに分かれていない単一の財閥としてはインド最大である。インドにおける産業や商業に幅広く関与しており、ほとんどの領域で上位の勢力になっている[1]。現在、会長職は元会長のラタン・タタが暫定的に務めている[2]。
構成企業100社以上。車(タタ・モーターズ)、鉄(タタ製鉄)、IT、電力で売り上げの8割を占める。
概要
インド最大の財閥であり、ペルシア一帯(現在のイラン)からインドに渡ってきたパールシー(ゾロアスター教徒)の子孫であるジャムシェトジー・タタ(1839年-1904年)が、1868年にボンベイ(ムンバイ)で設立した綿貿易会社をその始まりとする。1870年代には綿紡績工場を建ててインド有数の民族資本家となった。彼は大きな製鉄所、世界的な教育機関、大ホテル、水力発電所をインドに建設することを夢見たが、そのうち生前に実現したのは1903年に建てられたタージマハル・ホテルのみであった。しかし彼の残した構想は、タタ・スチール、インド理科大学院、タージ・ホテルズ・リゾーツ&パレス、タタ・パワーとして結実した。
彼の後継者らは植民地下において、また独立後のインドにおいて次々と業容を拡大した。経済界だけではなく、政治的にも大きな影響力を持ち、綿紡績、鉄鋼、電力、金融、不動産、自動車(商用車の国内シェアは5割以上)食品、レジャー、通信、IT、小売、持株会社タタ・サンズ、タタ・インダストリーズを通して、7つの本業セクターで91の会社を経営している。
グループ企業
おもなグループ企業には、自動車メーカーのタタ・モーターズ、製鉄会社のタタ・スチール、電力会社のタタ・パワー、ソフトウェア会社のタタ・コンサルタンシー・サービシズ (TCS)、紅茶を製造・販売するタタ・ティーなどがある。2006年の連結売上高は288億ドル(約3兆円)であり、インドのGDPの約3.2%に相当した。従業員数は、2006年時点で約29万人。
タタグループは積極的なM&A(合併・買収)で事業分野や規模拡大を進めている。グループ中核企業のひとつ、タタ・スチールは、2007年に粗鋼生産量世界第8位の鉄鋼メーカーであったコーラス社(本社イギリス、オランダ)を買収して、世界第5位相当の規模に成長した。他に傘下のインド最大手のタタ自動車は、約27万円の超低価格自動車「ナノ」を2009年に発売し、2008年6月には米フォード・モーター傘下だった英高級車ブランドの「ジャガー」と「ランドローバー」ブランドを米フォード・モーターから23億ドルで買収している[3]。
また、タタグループの移動体通信事業者であるタタ・テレサービシズ リミテッドは、2009年にNTTドコモより約2,500億円の出資を受け、タタドコモとして事業を行ったが[4]、2014年に保有株式をすべて売却し、690億円の赤字を計上した[5]。その後、NTTドコモとの間で合弁解消の処理をめぐり訴訟沙汰になっている[6]。
性格
タタ・グループの企業倫理は厳しく、汚職の多いインドにあっては異色であり、日本企業など海外の企業がインドに進出する際にタタ・グループを提携先に選ぶ要因になっている[7]。また、パールシーの一族が経営してきたためカースト制度とも無縁で、実力主義を貫き優れた人材を出自を問わず抜擢してきた[7]。社会貢献や労働者への適正な待遇も特徴で、タタ・スチールの工場のあるジャムシェードプルでのあらゆる公共サービスの提供、1912年のタタ・スチール工場設立以来の8時間労働採用、インド国内での財団の社会福祉事業など、その方針は古く分野も多岐にわたる[7]。こうしたことからスチールをはじめとしたタタ・グループは、政府による国有化を住民の反対運動で免れ、左翼ゲリラの攻撃の対象にもならずにきた[7]。一部の調査では2009年には世界で11番目に評判の良い企業とされた[8] 。
教育、健康、コミュニティ発展などの分野で社会貢献活動を行っており、奨学金の設立、「タージ・マハル・ホテル」建築なども行っている。また8時間労働制(1912)、無料治療制(1915)、有給休暇制・事故補償制(1920)などを導入し、インドの産業界にも影響を与えた[9]。
複数の慈善団体が、持株会社タタ・サンズの株式の66%を所有し、慈善事業と各社の統制、相続税負担の免除をしている[10]。
歴代会長
- ジャムシェトジー・タタ(1868-1904)
- ドラブジー・タタ(1904-1932)
- ノウロジー・サクラトヴァラ(1932-1938)
- ジャハンギール・ラタンジ・ダーダーバーイ・タタ(1938-1991)
- ラタン・タタ(1991-2012)
- サイラス・パロンジ・ミストリー(2012-2016)
- ラタン・タタ(暫定、2016-)
参照
- ↑ http://www.indokeizai.com/Z-Tata.htm
- ↑ 引用エラー: 無効な
<ref>
タグです。 「bloomberg20161025
」という名前の引用句に対するテキストが指定されていません - ↑ インド自動車大手タタ・モーターズ、ジャガーとランドローバーを買収 AFPBB 2008年6月3日
- ↑ NTTドコモによるインド タタ・グループの株式取得について
- ↑ http://diamond.jp/articles/-/55338
- ↑ 混迷深めるタタ・グループの経営紛争。どうなる後継者選び日刊工業新聞ニュースイッチ(2016/11/28)2016/11/28閲覧]
- ↑ 7.0 7.1 7.2 7.3 タタ財閥 悩む代替わり 朝日新聞 2010.09.19
- ↑ Kneale, Klaus (2009年5月6日). “World's Most Reputable Companies: The Rankings”. Forbes. . 21 June 2009閲覧.
- ↑ http://daigakuin.soka.ac.jp/assets/files/pdf/major/kiyou/22_keizai1.pdf
- ↑ 「ラタン・タタ氏」アジアを拓く人 日本経済新聞 2013年1月14日6面