トラス橋
トラス橋(トラスきょう)は、桁部分にトラス構造を使った橋である。トラスは細長い部材を両端で三角形に繋いだ構造でありそれを繰り返して桁を構成する。トラス橋は桁橋の一種に分類される。橋で使われるトラスの形式には図のようなものがある。
材料としては木材や鉄などの金属が使われるが、ある程度以上の規模の橋は鋼鉄が主流である。鉄を使ったものの場合多くは箱型断面やH型断面の溶接構造が一般的だが、H形鋼や山形鋼が組み合わされた構造の場合もある。近年コンクリート製のものも作られるようになった。
トラス橋の設計に伴う構造計算では部材のつなぎ目は一点で繋がり自由に回転できるようになっているとして考える。理想的なトラスでは荷重や温度変化に伴う部材のたわみや伸縮はこの接続点部分に集約される。実際の橋梁においては、初期のトラス橋では理論と同じピン接合の構造が見られたが、現在ではガセットプレートによる剛結接合が一般的である。
トラス構造は他の形式の橋梁でも部分的に用いられることがあり、吊り橋の桁部分に用いたものはトラス吊り橋(例 : 明石海峡大橋)と呼ぶ。一方でアーチ部分がトラス状になったものはブレースト・リブ・アーチ橋(例 : 荒川橋)、橋脚がトラス状になったものはトレッスル橋(例 : 旧余部橋梁)と呼び、通常トラス橋とは呼ばない。
現在では50mから100m程度の径間で架設されることが多く、多くの場合、アーチ橋と経済性や景観との比較の上、採否が決定される。同じ長さの場合、プレートガーダー橋(鈑桁)よりも軽量となるが、架設に手間がかかる。
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桁の数による分類
単純トラス橋
2つの橋脚でトラス構造の桁を支えるもの。トラス橋として最も簡単な形式である。
連続トラス橋
ひとつの長い桁をふたつの橋脚間で完結させず、いくつかの橋脚で支えるもの。
載荷弦の位置による分類
載荷弦とは、上弦(水平方向の部材のうち、上側)・下弦(同・下側)のうち、荷重が乗る側のことである。鉄道橋でいえば、線路が載っている側である。
上路式
デッキトラスともいう。上弦が載荷弦となっているもの。桁内を通行することがないため、主構(上・下弦材およびそれらを結ぶ垂直材・斜材。即ち桁の側面)同士をつなぐ対傾構を設置することで強度を増すことができる。また桁の高さの分だけ橋脚の高さを抑えることができるため、経済的である。桁下に十分な空間がある場合などに採用される。道路橋の場合は、下路式に比べてトラスが自動車運転者の視界を妨げないという利点がある。
下路式
スルートラスともいう。下弦が載荷弦となっているもの。主構の内部を通行する。跨線橋や跨道橋、河川横断部など桁下の空間に余裕が少ない場合に採用される。道路橋の場合、トラス内部を自動車が通行することになるため、運転者の視界を狭める、橋幅が狭い場合、トラスに自動車のミラーが接触する恐れが有るため、大型車同士が離合出来ない、通過車両に車高制限がかかる、豪雪地の場合トラスに付着した雪や氷の塊が落下し、車両に直撃するといった短所がある。
形状による分類
曲弦トラス
不載荷弦(荷重が載らない側の弦材)が曲線を描くもの。不載荷弦にかかる応力はトラスの中央部でもっとも大きく、端部でもっとも小さいため、その負担に応じて桁高を変化させたものである。多くは格点(部材の結合点)を直線で結ぶ、折れ線状である。長スパンとなった場合には不載荷弦端部の桁高を低くでき、中央部の断面積を平行弦トラスよりも小さくできるので、同じスパンの平行弦トラスよりも軽量化できる(平行弦トラスの不載荷弦中央部は、曲弦トラスの場合よりも高い強度が必要となる)。第二次世界大戦前の採用例が多い。
曲弦トラスの別称
19世紀末から20世紀初頭の日本において多く架設された、セオドア・クーパーが設計した標準桁(当時は標準桁を各地で使用した)をクーパートラス (Cooper truss) という。径間100フィートから300フィートまで10種が設計され、うち9種263連が架設された。特定の形の呼称ではないが、径間200フィートの単線下路曲弦プラットトラス(かつ中央パネルの3格間の上弦部分が直線状となるシュウェドラートラス (Schwedler truss))が92連ともっとも多く架設されたためにその代名詞的存在となり、とくにこれをクーパートラスと呼ぶことがある。
上弦が放物線に近い形状の桁をパーカートラス (Parker truss) という。日本の国鉄では200フィートの複線用トラス桁で多く採用されていた。
平行弦トラス
載荷弦、不載荷弦ともに直線かつ平行であるもの。現代での採用例が多い。
トランケートトラス
通常、斜めに立ち上がる端柱を垂直にしたもので、「切り詰める」という意味の英語「truncate」に由来。下路式トラス橋で用いられる。川の流れに対して斜めに橋を架ける斜橋に多く用いられ、この場合、主構を真横から見ると、一端は斜めに、他端は垂直になっている。日本では比較的古い鉄橋でわずかに採用されたのみで、現在新たに架橋されるものでは採用されていない。
- 木曽川橋梁(犬山橋)(名鉄犬山線新鵜沼駅~犬山遊園駅間)
- 木曽川橋梁(名鉄名古屋本線笠松駅~木曽川堤駅間)
- 第3大和川橋梁(関西本線三郷駅~河内堅上駅間))
- 第1球磨川橋梁(肥薩線鎌瀬駅~瀬戸石駅間)
- 第2球磨川橋梁(肥薩線那良口駅~渡駅間)
ポニートラス
左右の主構のみで、上横構がないもの。小規模な中路・下路トラス橋に見られる。
- 浜中津橋 - 日本初の鉄道用鉄橋の橋桁転用例。
- 長良川橋梁(東海道本線) - 曲弦ワーレントラス5連、ポニートラス4連の混成橋梁。
- 愛知川橋梁(近江鉄道) - ポニーワーレントラス.
- 鬼怒川橋梁(東北本線)- ポニーワーレントラス。