「気候研究ユニット・メール流出事件」の版間の差分

提供: miniwiki
移動先:案内検索
(1版 をインポートしました)
(ページの白紙化)
(タグ: Blanking)
 
1行目: 1行目:
'''気候研究ユニット・メール流出事件'''(きこうけんきゅうユニット・メールりゅうしゅつじけん、クライメイトゲート、クライメートゲート、Climategate)は、[[2009年]]11月に[[イギリス]]にある[[イースト・アングリア大学]](UEA)の[[気候研究ユニット]](CRU:[[:en:Climatic Research Unit|'''C'''limatic '''R'''esearch '''U'''nit]])が[[クラッキング (コンピューター用語)|クラッキング]]され、[[地球温暖化]]の研究に関連した[[電子メール]]と文書が公開されたことによって発生した一連の事件のこと<ref name="BBC-1120">{{cite news|title=Hackers target leading climate research unit|url=http://news.bbc.co.uk/1/hi/sci/tech/8370282.stm|publisher=BBC News|date=20 November 2009}}</ref><ref name="times-1121">{{cite news|title=Sceptics publish climate e-mails 'stolen from East Anglia University' |last=Webster |first=Ben |url=http://www.timesonline.co.uk/tol/news/environment/article6926325.ece |work=The Times |date=21 November 2009}}</ref><ref name="telegraph-pole"> {{cite news |title=Climategate: the final nail in the coffin of 'Anthropogenic Global Warming'? |url=http://blogs.telegraph.co.uk/news/jamesdelingpole/100017393/climategate-the-final-nail-in-the-coffin-of-anthropogenic-global-warming/ |last=Delingpole |first=James |date=20 November 2009 |publisher=UK Telegraph}} </ref><ref name="dailykos">{{cite web|url=http://www.dailykos.com/storyonly/2009/11/21/806908/-ClimateGate-reveals-nefarious-conspiracy!|title=ClimateGate reveals nefarious conspiracy!|publisher=[[Daily Kos]]|accessdate=21 November 2009}}</ref>。『クライメートゲート事件』とも<ref>[http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=12697 英国イーストアングリア大学により設置された独立レビュー組織による「クライメートゲート事件」レビュー結果の公表について(お知らせ)][[環境省]]公式サイト</ref>
 
  
この事件は一般のメディアでも報じられ、標的とされたUEAのCRUの所長が一時的に所長職から離れる等の事態となった。しかし公的機関による調査の結果、不正の事実は何も見あたらなかった<ref name="UEA_14Apr2010"/>。科学的にも、CRUの報告に疑念の余地がほぼ無いことが当初から指摘されており<ref>http://www.ametsoc.org/policy/climatechangeclarify.html</ref><ref name="UCS"/>、新たな分析でも一致する結果が得られている。
 
 
[[File:Hubert Lamb Building.jpg|thumb|right|230px|[[イースト・アングリア大学]]―クライマティック・リサーチ・ユニット(CRU)の建物]]
 
 
==事件の経緯==
 
===発端===
 
2009年11月17日<ref name="UEA_3Nov2009"/>に[[クラッカー (コンピュータセキュリティ)|クラッカー]]がCRUの[[サーバー]]に格納された個人ファイルを入手し、そこで発見した電子メールを[[オンライン]]で公開した<ref name="BBC-1120"/>。1996年以降<ref name="Guardian_2009Dec08"/>の1000通以上のメールと3000以上の文書が流出し、懐疑論者達によって、[[地球温暖化]]を人為だとするための国際的陰謀の証拠であるとして取り上げられた<ref name="telegraph24Nov2009"/>。断片的で選択された文面を根拠にして、気候変動懐疑論者から、気候研究者らに多くの非難メールが寄せられた<ref name="Guardian_2009Dec08"/>。地球温暖化に対する懐疑論者はスキャンダルとして喧伝し、[[ウォーターゲート事件]]になぞらえ'''クライメートゲート'''と呼んだ(従ってClimategateという語は中立的ではなく懐疑論者により用いられる。)<ref name="Time Dec7 2009">Time Dec7 2009</ref> メールを巡り疑惑となっている個別の争点は、下に記す。<!--実際には、以下のような記述が必要でしょう。データが操作されていたかどうか、異なる意見を持つ科学者の論文掲載に対して意義を唱えていたかどうか(実際は問題があった論文を通したことに対して意義を唱えていた)、情報公開法に基づく公開前に対象データが破棄されていたかどうか(実際は破棄されていない)、等が主なものである-->研究界、気候変動研究者らは疑惑を否定し、メールでは、間違った事は行われていないとしている<ref name="telegraph24Nov2009">[http://www.telegraph.co.uk/earth/environment/globalwarming/6637006/Climate-change-scientists-face-calls-for-public-inquiry-over-data-manipulation-claims.html Climate change scientists face calls for public inquiry over data manipulation claims]</ref>。関連する科学者の所属する各機関は、この事件についての調査を開始すると発表した<ref name="UEA_3Nov2009"/><ref>[http://www.timesonline.co.uk/tol/news/environment/article6945445.ece Met Office to re-examine 160 years of climate data]</ref>。
 
イギリスの新聞[[ガーディアン]]は、デンマークで行われた[[気候変動枠組条約]]締約国会議(COP15)への影響が懸念されると報じた<ref name="Guardian_2009Dec08"/>。<!--政治への影響-->
 
 
===事件を巡る調査===
 
UEAは個人情報を含むこれら文書の"悪意のある"公開を非難し、盗難について独立調査を命じた。イギリス警察はメールの盗難がどのように行われたかを調査している<ref name="UEA_3Nov2009"/><ref name="telegraph24Nov2009"/><ref name="Guardian_2009Dec08"/><!--UEAのプレスリリースではリークとの表記はなく「盗難」のみ。-->。また一部の研究者に殺害予告などの脅迫が行われ、治安当局が捜査する例も発生した<ref name="Guardian_2009Dec08"/><ref>[http://www.abc.net.au/news/stories/2009/12/09/2766874.htm?site=thedrum The ugly side of climate politics] {{en icon}} [[オーストラリア放送協会]](ABC)</ref>。
 
 
2009年12月1日に、[[フィル・ジョーンズ (気候学者)|フィル・ジョーンズ]]<ref>Phil Jones。University of East Anglia. Climate Research Unit所長。現在、本事件の調査中のため所長職を離職</ref>は調査終了まで所長の身分を休職する事を発表した<ref name="UEA_1Nov2009">[https://www.uea.ac.uk/mac/comm/media/press/2009/dec/CRUphiljones CRU update 3]University of East Anglia。2009年12月1日</ref><ref name="UEA_3Nov2009"/><ref name="Guardian_2009Dec08">[http://www.guardian.co.uk/environment/2009/dec/08/hacked-climate-emails-death-threats Hacked email climate scientists receive death threats]ガーディアン2009Dec08</ref><ref>http://www.webcitation.org/5lnKYt5cA</ref>。ピーター・リス<small>(Peter Liss)</small><ref>Peter Liss。CBE,FRS</ref>がCRU所長代行に就任<ref name="UEA_1Nov2009"/><ref name="UEA_3Nov2009"/>。UEAは外部からのジョーンズに対する辞任要求は退けた<!--今後プレスリリースからの出典を追記したい-->。
 
 
同年12月3日に、UEAは、ミューア・ラッセル<small>(Muir Russell)</small><ref>Muir Russell。自然哲学(物理学)。エジンバラ王立協会フェロー。元グラスゴー大学校長・副総長。</ref>
 
を独立調査の長に任命<!-- will-->し、2010年春までにデータの操作や隠蔽があったのかどうかの調査、およびコンプライアンスの点検、適切な手法の推奨を行うとした<ref name="UEA_3Nov2009">[http://www.uea.ac.uk/mac/comm/media/press/2009/dec/CRUreview Sir Muir Russell to head the Independent Review into the allegations against the Climatic Research Unit (CRU)]。University of East Anglia。2009年12月3日</ref>。また2010年3月22日、UEAは外部のロナルド・オクスバラ<small> ([[:en:Ronald_Oxburgh,_Baron_Oxburgh|Ronald Oxburgh]])</small>を長とする科学評価パネルを発足させ、CRUの科学研究の質の評価を依頼した<ref name="UEA_22Mar2010">[http://www.uea.ac.uk/mac/comm/media/press/CRUstatements/SAPannounce CRU Scientific Assessment Panel announced] University of East Anglia。2010年3月22日</ref>。
 
 
[[ペンシルベニア州立大学]]もマイケル・マン<small>(Michael Mann)</small>の研究について調査することを明らかにし、マンは調査を歓迎するとした<ref>http://www.webcitation.org/5loJCAUIi</ref>。2010年2月3日、結果が発表され、マンはデータ操作や隠蔽をせず、trickという語が指すのは普通の統計的手法に他ならないとし、またジョーンズからのデータ・メールの消去依頼にもかかわらずそれらを行わなかったとした。一方で科学者としての倫理、品行に問題がなかったかどうか、特別調査チームを編成して引き続き調査すると発表した<ref name="PSU">http://www.research.psu.edu/orp/Findings_Mann_Inquiry.pdf</ref>。
 
 
[[イギリス気象庁]]は、人々の間での地球温暖化研究の信頼が損なわれたことを認め、「結果としてはおそらく結論は変わらないだろう」としながらも、3年間かけて自らの気象データベースを洗い直すことを表明した<ref>[http://www.timesonline.co.uk/tol/news/environment/article6945445.ece Met Office to re-examine 160 years of climate data]</ref>。
 
 
===調査結果===
 
2010年3月、[[イギリスの議会|英国議会]]の[[庶民院 (イギリス)|庶民院]](下院)は調査報告書を発表した<ref name="HC201003">[http://www.publications.parliament.uk/pa/cm200910/cmselect/cmsctech/387/38702.htm 英国議会(庶民院)による調査報告書、2010年3月]</ref>。メールに見られたtrickなどの口語は事実を歪めるような企みを意味するものでは無く、またジョーンズが査読プロセスの妨害を図る内容も無かったと指摘している<ref name="HC201003_SUMMARY">[http://www.publications.parliament.uk/pa/cm200910/cmselect/cmsctech/387/38703.htm 英国議会(庶民院)による調査報告書の要約、2010年3月]</ref>。またジョーンズが当初データの開示要求を中傷と見なし、開示を拒んだことは理解できると指摘する一方、UEAが事態の収束のためにより速やかに公開を進めるべきであったとも指摘している<ref name="HC201003_SUMMARY"/>。またデータそのものの正当性の判断に関して、報告書は下述のOxburgh卿の率いる評価パネルに判断を委ねた<ref name="HC201003_SUMMARY"/>。
 
 
2010年4月14日、Ronald Oxburgh卿の率いる科学評価パネルは、CRUの科学研究には不正は認められないと報告した<ref name="UEA_14Apr2010">[http://www.uea.ac.uk/mac/comm/media/press/CRUstatements/oxburgh Response by the University of East Anglia to the Report by Lord Oxburgh’s Science Assessment Panel] University of East Anglia。2010年4月14日</ref>。同時に、事件に関して不当な批判が寄せられているとし、パネルは批判者を逆に批判した。
 
 
調査結果を受け2010年7月、ジョーンズは研究所の長として再就任した。
 
 
調査結果の発表後、ニューヨーク・タイムズやニューズウィーク誌で、メールの内容はそもそもスキャンダルではなかった<ref>http://www.nytimes.com/2010/07/11/opinion/11sun2.html?_r=1</ref>のであり、事件と同様に調査結果も大きく報道されるべき<ref>http://www.newsweek.com/blogs/the-gaggle/2010/06/25/newspapers-retract-climategate-claims-but-damage-still-done.html</ref>などの指摘がなされた。
 
 
===データの再分析===
 
[[カリフォルニア大学バークレー校]]の物理学者Richard A. Muller([[:en:Richard A. Muller]])らが新たな解析手法によるデータの再分析に乗り出した。彼は以前から気候学者の解析手法に批判的で懐疑論者に理解を示していたため、懐疑論を支援するKoch Industriesは彼がCRUのデータを否定してくれるものと期待し、研究資金も提供した。
 
 
2011年にその結果が発表され、再分析はCRUとほぼ完全に合致する結果となり、温暖化に疑いはないとし、議会でも証言するなど話題となった<ref>http://www.bbc.co.uk/news/science-environment-15373071</ref>。またMuller自身がその結果には驚いたとしており、同年10月、自身の懐疑論を[[ウォール・ストリート・ジャーナル]]で正式に撤回した<ref>http://online.wsj.com/article/SB10001424052970204422404576594872796327348.html</ref>。
 
 
===IPCCの対応===
 
暴露された電子メールには、[[気候変動に関する政府間パネル]](IPCC)の評価報告書の編著者が報告書への文献の採用などに関する意見を述べていたものが含まれており、2009年11月ごろから活発となったIPCCの評価手続きへの批判の材料のひとつとなった。2010年3月、国連事務総長およびIPCC議長は、インターアカデミーカウンシル([[:en:InterAcademy_Council|InterAcademy Council]], IAC)に、IPCCの評価手続きに関するレビューを要請した<ref name="IndependentReview">[http://www.env.go.jp/earth/ipcc/ipcc_statement/20100310a.pdf 国連及び気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の要請に応じた、IPCC のプロセスと手続についての、科学アカデミーによる独立レビューの実施、2010年3月10日]</ref>。その声明の中でIPCC議長は、[[IPCC第4次評価報告書|第4次評価報告書]]の「厳密さと信頼性を確信している」とした上で、さらに批判に耳を傾けて改善に取り組むと述べた。
 
 
2010年8月、IAC<ref name="IAC_IPCCreview">[http://reviewipcc.interacademycouncil.net/ Interacademy Council, Review of the IPCC]</ref>は独立レビューの結果<ref name="IAC_IPCCreview_report">[http://reviewipcc.interacademycouncil.net/report/Climate%20Change%20Assessments,%20Review%20of%20the%20Processes%20&%20Procedures%20of%20the%20IPCC.pdf Climate Change Assessments: Review of the Processes and Procedures of the IPCC, Interacademy Council, Aug 30 2010]</ref>を発表した。「IPCCの評価手続きは全体的に成功を収めてきた」(the IPCC assessment process has been successful overall)と述べた上で、組織体制強化や透明性向上等の勧告を行った<ref name="IAC_IPCCreview_report"/><ref name="IAC_JP">[http://www.env.go.jp/earth/ipcc/ipcc_statement/20100830.pdf インターアカデミーカウンシル(IAC)によるIPCCレビュー報告書要旨(環境省仮訳)]</ref>。
 
 
==事件に対する当初の反応==
 
===気候学者===
 
気候変動に関する研究者は、当該の文章は選択および歪曲されたうえで文脈を無視して公表されたと主張している<ref name="dailykos"/>。CRUの研究者は、その電子メールは「文脈が無視されており、正直な意見の交換を単に反映した」ものであると述べた<ref>{{cite news|last=Eilperin|first=Juliet|title=Hackers steal electronic data from top climate research center|url=http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/11/20/AR2009112004093.html|date=21 November 2009}}</ref>。
 
 
アンディ・リッジウェル<small>(Andy Ridgwell)</small><ref>Andy Ridgwell。Bristol大学。気候研究者。</ref>は「科学やデータを無視し意図的に完全な反対屋の立場をとると決意した声高な少数派が、気候科学者をウソだ金のためと非難しており、この10年ほど気候変動の科学で空が落ちてくると騒ぐ悲観論者を演じてきており、非難も主張も新しいものはない。」とする<ref name="Guardian_2009Dec08"/>。
 
 
エジンバラ大学の気候学者デビッド・レイ<small>(David Reay)</small>は、今回の事件における批判者らを「陰謀論者」と表現したうえで、人為温暖化の科学的根拠を支持した<ref name="Guardian_2009Dec08"/><ref> Guardian該当部分直訳は、「陰謀論者がお祭り騒ぎをしている。が、陰謀論者らがもしまともに研究の世界のことを知っていたなら、出版された論文やデータセットが、常に別の研究者グループによって、継続的に厳しい目でチェックされていることがわかるだろう。IPCC報告書に用いられた情報は、科学の全分野の中でももっとも厳しく論議され、試されてきた部類に入る。」</ref>。
 
 
気候研究者のハンス・フォン・シュトルヒ<small>(Hans von Storch)</small>は、人為温暖化は疑わないものの、イースト・アングリア大学の研究者を批判している。この大学の研究者らは、派閥を形成したうえで、外部の研究者との研究データの共有の拒否という、「科学の基本原則」を侵害しており、「科学を権力闘争として弄している」と述べた<ref>[http://online.wsj.com/article/SB125902685372961609.html Lawmakers Probe Climate Emails] [[ウォールストリートジャーナル]] {{en icon}}</ref>。一方ではその後、Nature<ref>Nature7277</ref>誌中の手紙で、人為温暖化の科学的根拠を揺らがせるものは出てきていないこと、事件についてのメディアの報道でデータ解釈について誤解が見られることを指摘し、温暖化研究の科学が「世界的陰謀」であると信じている人は馬鹿げているとコメントした。
 
 
気候変動の専門家として著名なコロラド大学のロジャー・A・ピールケ(父)<small>(Roger A. Pielke Sr.)</small>は今まで人為的温暖化の事実を支持すると同時にIPCCの体質に対しては批判的意見を表明してきた。彼は今回の事件に対し、「他の複数の研究機関のデータもCRUのと一致している以上、今回のメール流出事件は二酸化炭素による温暖化の根拠には影響を与えない。その一方で、IPCCのメンバーが、自分の研究と同時にそれを含めた分野全体の研究報告の評価の双方に関わる現状は問題がある」という趣旨の見解を示した<ref>[[ニューヨーク・タイムズ]]12/2/2009</ref>。
 
 
このように気候学者の間では、CRUの研究者の(あるいは排他的な)態度には賛否両方の意見が出ているものの、データ捏造を疑う声は上がっていない。<!--あらかじめ釘:違うのなら具体的人名を-->
 
 
===機関===
 
IPCCのパチャウリ<small>(Rajendra Pachauri)</small>議長は、問題は重大で、調査が必要だとBBCに話した<ref name="Guardian_2009Dec08"/>。IPCCは事件の経緯を調査することを明らかにし、「今回の事件で温暖化の証拠が揺らぐわけではない」とした。
 
 
UEAは「CRUから出された研究は、関連雑誌の査読を経ており、人間活動の気候への影響に対する強いコンセンサスの基礎である」と主張<ref name="telegraph24Nov2009"/>。更には、盗まれた電子メールと文書は文脈から離されて選択的に公表されたものであるとした<ref name="Guardian_2009Dec08"/>。
 
UEA副総長のエドワード・アクトン<small>(Edward Acton)</small>は、「本学の評判と品位が最優先である。CRUに向けられた疑惑に対して、独立した完全な調査をしたい。」とした<ref name="UEA_3Nov2009"/>。
 
 
イギリス政府の[[エネルギー・気候変動省]]は、「気候変動の証拠は圧倒的だ。UEAの結論は、独立したNASAとNOAAのデータセットと整合的である。」とした<ref name="telegraph24Nov2009"/>。
 
 
===学術団体===
 
[[アメリカ気象学会]]は、「仮にそのチームに不適切な行為があったとしても-そしてまだその証拠はない-地球温暖化は他の数多くのデータに裏付けられている」との声明を出し、この事件は学会の気候変動に対する態度に影響を与えるものではないと指摘した<ref>http://www.ametsoc.org/policy/climatechangeclarify.html</ref>。
 
 
[[アメリカ地球物理学連合]]は、不正なサイバー攻撃によって流出したメールが科学上の論争を曲解させるために利用されていると遺憾の意を示し、人為地球温暖化を再確認した<ref>http://archive.is/20120717053230/www.agu.org/news/archives/2009-12-08_hacked-emails-climate-researchshtml.shtml</ref>。
 
 
サイエンス誌を発行する[[アメリカ科学振興協会]] (AAAS)は事件の社会への影響に関し遺憾の意を示す一方、気候変動については大量の厳格な科学的根拠に基づいていることを述べた<ref>Science Nov</ref>。
 
 
===メディア・諸団体===
 
多くのメディア(タイム, エコノミスト, ワシントンポスト, BBC等)や科学誌は、メールには不正の証拠は見られないとしている。「社会主義者の邪悪な陰謀(evil socialist plot)を信じる人が多いようだ」([[Nature|ネイチャー]]誌社説)などの揶揄が見られる。タイムはCRUのデータと他の機関のデータを並べて表示し一致することを示し、事件は科学的なものでなく政治的なものであるとした<ref name="Time Dec7 2009"/>。Scientific American([[日経サイエンス]])<ref>Scientific American Feb 2010; 日経サイエンス2010年3月号</ref>は、トリックの語は工夫の意に解釈でき、メールにデータ改竄を示すものはなく、またたとえCRUのデータを除外しても結果が変わらないのであり、事件は温暖化の科学的議論には影響を与え得ないとした。
 
その一方、信頼性や不確実性が確認しやすいよう、研究者がデータをより積極的に開示するべきとも指摘されている<ref name="Mainichi_201005">[http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20100517ddm004070013000c.html 社説:温暖化疑惑事件 科学者はもっと発信を]</ref><ref name="HC201003_SUMMARY"/>。
 
 
科学ライターのジョージ・モンビオ<small>(George Monbiot)</small>は、3~4人の研究者の問題行為が明らかになったとしたが、それが温暖化を否定する証拠かについては「Not at all(全く違う)」と強く否定している<ref>http://www.guardian.co.uk/environment/georgemonbiot/2009/nov/25/monbiot-climate-leak-crisis-response</ref>。
 
 
[[AP通信]]は複数の科学者や[[研究倫理]]の専門家に意見を求める本格的調査を行った<ref>
 
http://www.usnews.com/articles/news/energy/2009/12/12/climategate-science-not-faked-but-not-pretty_print.htm</ref>。科学者の見解としては、人為温暖化の事実は全く揺らがず、データ捏造を示すものはないことが示された。また、渦中の科学者の態度は排他的であると言えるが、異常とまではいかない("This is normal science politics, but on the extreme end, though still within bounds")という見解を示した。
 
 
消費者のために噂の真偽等を判定する非営利ウェブサイトとして知名度の高い{{仮リンク|ファクトチェック (アメリカのサイト)|label=FactCheck.org|en|FactCheck.org}}はこの事件について、メールから明らかになったのは研究者の失礼な態度くらいであり、懐疑派は主張に合うよう事件を歪曲して伝えている、またCRUのデータはIPCCが利用するデータのほんの一部でしかないので温暖化の科学的事実には関係ない、と判定した<ref>http://factcheck.org/2009/12/climategate/</ref>。
 
 
『{{仮リンク|憂慮する科学者同盟|en|Union of Concerned Scientists}}』 (The Union of Concerned Scientists)は2009年2月に声明を発表し、本件で取り上げられた中国の気温のデータは信頼性があり、地球温暖化の事実とも整合すると指摘している<ref name="UCS"/>。また懐疑論者達による一連の攻撃はでっち上げ(manufactured)であり、IPCCの結論には疑問の余地が無い(indisputable)と指摘している<ref name="UCS">[http://www.ucsusa.org/global_warming/science_and_impacts/global_warming_contrarians/attacks-on-the-ipcc.html Attacks on the Intergovernmental Panel on Climate Change Obscure Real Science, Union of Concerned Scientists]</ref>。
 
 
===国家首脳級===
 
2009年のコペンハーゲンでのCOP15会議中、国連事務総長[[潘基文]]、[[ゴードン・ブラウン]]英首相、ホワイトハウス報道官[[ロバート・ギブス]]はそれぞれ、今回の事件は温暖化の科学的根拠を疑わせるものではなく、温暖化は事実であるとの見解を示した<ref>http://www.reuters.com/article/idUSTRE5B735X20091208</ref><ref>http://www.guardian.co.uk/commentisfree/cif-green/2009/dec/06/gordon-brown-climate-change-copenhagen</ref>。
 
 
COP15の直前に、産油国サウジアラビアのCOP担当者<ref>lead climate negotiator, Mohammad Al-Sabban。</ref>は、気候変動は人為ではないことが示唆され、排出削減の合意に多大な影響を与えうるとBBCに語った<ref name="Guardian_2009Dec08"/>。
 
 
===政治家・コメンテーター===
 
コメンテーターの[[ラッシュ・リンボー]]<ref>[[:en:Rush Limbaugh|Rush Limbaugh]]"an American radio host, conservative political commentator, and an influential opinion leader in the conservative movement in the United States."</ref>を筆頭とする米国保守陣営はブログ等<ref>[http://blogs.news.com.au/heraldsun/andrewbolt/index.php/heraldsun/comments/hadley_hacked Warmist conspiracy exposed? | Herald Sun Andrew Bolt Blog]</ref><ref name="times-1121"/><ref name="telegraph-pole"/>で重大スキャンダルとして一斉に科学者に対する強烈な批判を開始した。米英両国で、以前から懐疑派を自認してきた政治家、特にJim Inhofe米上院議員らが事件への調査を要求している。上述のように専門の研究者からはデータ捏造を疑う声が上がっていないのに対し、リンボー等の多くの保守系コメンテーターはデータの捏造と断定しており、人為温暖化はhoax(ウソ)であるとの以前からの主張の補強に援用している。
 
 
温暖化対策に反対しているナイジェル・ローソン<small>([[:en:Nigel Lawson|Nigel Lawson]])</small><ref name="Lawson">Nigel Lawson。イギリス、サッチャー政権下の大蔵大臣。温暖化対策を批判する [[:en:Global Warming Policy Foundation|気候変動政策財団]]の創設者・現主席。</ref>は、データが操作、消去されたり、論文の発表を妨害していたようにも見えるとし、「あるいは不正ではなく全て問題なく説明できることなのかもしれないが、しかし独立した調査が必要である」としている<ref name="telegraph24Nov2009"/>。
 
 
==メール個別の争点==
 
 
盗み出されたメールについては、下記のような批判があった。しかしいずれも、指摘されたような不正の事実は見つからなかった<ref name="UEA_14Apr2010"/>。
 
 
===フィル・ジョーンズのメール(1999年11月16日)===
 
メールの中で問題にされているのは、マイケル・マンなどと交わしたメールで「[[ホッケースティック論争|ホッケースティック曲線]](過去1,000年間の気温変化グラフ)における[[1960年代]]~[[1970年代]]の気温の低下を隠ぺいし、それ以後の上昇を誇張している」と解釈できると懐疑論者は主張している。ただしその内容については、以下のように英語圏の識者の間でも解釈が分かれる表現であった<ref>より具体的なメールの文面は英語版記事[[:en:Climatic Research Unit documents]]参照</ref>。大きく取り上げられている例がトリック(trick)という語の使用である<ref>[http://eco.nikkei.co.jp/column/kanwaqdai/article.aspx?id=MMECzh000025112009 急 地球温暖化データにねつ造疑惑(09/11/26)] 日経エコロミー、2009年11月26日。</ref>。英語ではtrickは人を騙す意味には限らず、コツという意味がある。また、ある期間の年輪のデータが気温を正確に反映していないことは流出したメールより前に発表されており<ref>http://eco.nikkei.co.jp/column/emori_seita/article.aspx?id=MMECza000024122009</ref><ref>RealClimate</ref>、こうした理由から多くの科学者はメールはデータ捏造の証拠とはみなしていない。
 
 
イギリスの新聞[[デイリー・テレグラフ]](以下テレグラフと略す)は、フィル・ジョーンズのメールでは、世界の気温の生データについて"下落傾向を隠す(hide the decline)"に際しての"トリック(trick)"に触れている、とした<ref name="telegraph24Nov2009"/>。
 
 
これに関して、フィル・ジョーンズは、気温の図を"マッサージ(massage)"したことを否定し、「"trick"とは、騙す行為ではなく"コツ"の意味であり、何か悪いことを示すと言うのは、ばかげた話だ」とした<ref name="telegraph24Nov2009"/>。
 
UEAと共同で気候変動の監視をしているイギリス気象庁<!--スポークスマンはDave Britton-->は、「全くもって陰謀でも捏造でもない。全てのデータは査読を受け、信頼出来るデータである」とした<ref name="telegraph24Nov2009"/>。
 
 
===マイケル・マンのメール(2003年3月11日)===
 
テレグラフによると、フィル・ジョーンズが、地球温暖化の科学的コンセンサスに対する論文を通した雑誌編集者を解任するように働きかけたとするメール<ref name="telegraph24Nov2009"/>。テレグラフによると、反対する科学者の論文が学術雑誌に掲載されないようにとの試み<ref name="telegraph24Nov2009"/><!--英語wikiによると、フィルではなくて、マイケルのようだが-->。
 
<!--説明は後ほど加筆予定-->
 
 
背景は英語版[[:en:Soon and Baliunas controversy|Soon and Baliunas controversy]]参照
 
 
===フィル・ジョーンズのメール(2004年7月8日)===
 
正確さの欠如を理由に論文をIPCCが取り上げないようメールで圧力をかけたとされる。しかし実際には、当該論文は取り上げて論じられている<ref>Nature Editorial, 24Nov2009</ref>。<!--McIntyreの論文-->
 
 
===フィル・ジョーンズのメール(2005年2月2日、2008年5月)===
 
テレグラフによると、情報公開法で公開されないようにと、各種ファイルを破棄するようにするとの会話<ref name="telegraph24Nov2009"/>。
 
トム・ウィグリーによると「いかなるデータも消していない。国立気象サービスのデータは閲覧可能であるし、GISSやNASAがデータを用い、独自の結果を出している。」としている<ref name="Guardian_2009Dec08"/>。
 
 
<!-- ===サンターのメール(2009年11月12日)=== 説明は後ほど加筆予定-->
 
===トレンバースのメール(2009年8月12日)===
 
テレグラフによると、ケヴィン・トレンバース<ref>Kevin Trenberth。US National Centre for Atmospheric Research</ref>が、世界の気温の上昇の傾向が見られないのは、"travesty(滑稽だ)"と認めている<ref name="telegraph24Nov2009"/>とするメール。
 
 
トレンバースは、「私のメールが、世界の指導者達が炭素排出削減を合意するためのCOP15をなし崩しにするために、選択的にリークされ、誤解釈されている。このような酷く選択的なメールの使われ方と、文脈を無視した使われ方は酷くショックである。COPの直前というのは偶然ではないだろう。」としている<ref name="telegraph24Nov2009"/>。
 
 
===その他のメール===
 
懐疑派に対する露骨な言葉による侮辱や、懐疑派への圧力をほのめかす文面も公開された<!--以下のref-->。ネイチャー<ref>Nature Editorial 24Nov2009</ref>やエコノミスト誌<ref>Econimist 26 nov 2009</ref>では、それらはどの分野の科学者もやっていることであるという論調であった。
 
 
== 出典 ==
 
{{reflist|2}}
 
 
== 外部リンク ==
 
* [http://www.cru.uea.ac.uk/ 気候研究ユニット]{{en icon}}
 
 
{{地球温暖化}}
 
 
{{DEFAULTSORT:きこうけんきゆうゆにつとめえるりゆうしゆつしけん}}
 
[[Category:気候変動]]
 
[[Category:地球温暖化]]
 
[[Category:科学史]]
 
[[Category:情報流出事件]]
 
[[Category:イギリスの事件]]
 
[[Category:大学で起きた事件]]
 
[[Category:2009年のイギリス]]
 
[[Category:2009年11月]]
 
[[Category:2009年の科学]]
 

2018/12/22/ (土) 22:03時点における最新版