阿蘇カルデラ
阿蘇カルデラ(あそカルデラ)は、熊本県にあるカルデラ地形である。
概要
南北25km、東西18kmで、中心部に中央火口丘の阿蘇五岳があって、カルデラ底を北部の阿蘇谷、南部の南郷谷に分断している。
カルデラ内の阿蘇谷と南郷谷には湖底堆積物がある[1]。地質調査やボーリング調査によって阿蘇カルデラ形成後にカルデラ内において湖が少なくとも3回出現したと考えられ、古いものから、古阿蘇湖、久木野湖、阿蘇谷湖と呼ばれている[2]。また、現在露出している中央火口丘群は活動期間後半の8万年前から現在までに形成された山体に過ぎず、活動初期の山体は噴出物に埋没している[3]。
形成史
阿蘇カルデラは、27万年前から9万年前に起きたAso-1・Aso-2・Aso-3・Aso-4の4つの火砕流の噴出に伴う活動で形成された。特に大規模だったのはAso-4で多量の火砕物を放出し、火砕流は当時陸続きだった秋吉台(山口県)まで流走した[4]。その距離は160kmにもなる。Aso-4の噴火で、現在見られる広大な火砕流台地を形成した。その後の侵食でカルデラ縁は大きく広がり、現在の大きさにまで広がったと考えられている。なお、Aso-4火山灰が日本列島を広く覆っていることは1982年に初めて気づかれ1985年に発表された[5][6]。またこの4回の火砕流の体積は内輪に見積っても約200 km3である[7]。
- 主な噴出年代と噴出量
- Aso1 : 約26.6万年前[8]、噴出量 32 DRE km3[9]。
- Aso2 : 約14.1万年前[8]、噴出量 32 DRE km3[9]。
- Aso3 : 約13万年前[10]、噴出量 96 DRE km3[9]。
- Aso4 : 約9万年前、噴出量 384 DRE km3[9]。
注)DRE(Dense Rock Equivalent)は換算マグマ噴出量。噴出堆積物の量はこれよりもはるかに多い。
阿蘇カルデラの大きさ
阿蘇カルデラの大きさは、よく世界最大級[11][12][13]や、世界有数[14][15]と言われる。また、阿蘇カルデラのようなじょうご型カルデラで、カルデラの内側に安定した集落を形成し、広く農地開墾が行なわれ、国道や鉄道まで敷設されている例は、世界的にも珍しいとされる[16]。
世界一や日本一と言われることもあるが[17][18]、実際には、阿蘇カルデラは大きさでは世界一でも日本一でもない。世界最大のカルデラはインドネシアのトバカルデラ(長径約100km、短径約30km)である[18][19]。トバカルデラのようなバイアス型カルデラでは、70 - 80kmになることも珍しくない。また、日本では、屈斜路カルデラ(長径約26km、短径約20km)[20]が最大で、阿蘇はこれに次ぐ第2位である[18]。
脚注
- ↑ 久木野層(くぎのそう) 南阿蘇村 熊本県
- ↑ 古川邦之、鎌田浩毅:阿蘇カルデラ内西方, 高野尾羽根流紋岩溶岩の内部構造 地質学雑誌 Vol.111 (2005) No.10 P590-598, doi:10.5575/geosoc.111.590
- ↑ 長岡信治、奥野充、阿蘇火山中央火口丘群のテフラ層序と爆発的噴火史 地学雑誌 Vol.113 (2004) No.3 P.425-429, doi:10.5026/jgeography.113.3_425
- ↑ 藤井純子ほか、山口県に分布する阿蘇4テフラの古地磁気方位 第四紀研究 Vol.39 (2000) No.3 P227-232, doi:10.4116/jaqua.39.227
- ↑ 出典 : 日本のテフラの時空間分布図 阿蘇4 - 群馬大学 早川由紀夫研究室、2016年4月閲覧
- ↑ 町田洋、新井房夫、百瀬貢、『阿蘇 4 火山灰 : 分布の広域性と後期更新世示標層としての意義』 火山. 第2集 30(2), 49-70, 1985-07-01, NAID 110002989968
- ↑ 小野晃司(地質調査所環境地質部)「阿蘇火山-1 火砕流堆積物とカルデラ (PDF) 」、アーバンクボタ NO.22、p.45、株式会社クボタ、1984年4月、2016年4月閲覧
- ↑ 8.0 8.1 阿蘇火砕流 熊本県高等学校教育研究会 地学部会
- ↑ 9.0 9.1 9.2 9.3 阿蘇カルデラ 産総研 (PDF)
- ↑ 下山正一、低平地地下における阿蘇3火砕流堆積物(Aso-3)の年代について 佐賀大学低平地防災研究センター編 低平地研究 Vol.10 p.31-38
- ↑ 阿蘇山について 阿蘇山火山博物館
- ↑ 阿蘇山について 阿蘇山火山防災連絡事務所
- ↑ 阿蘇市の概要 阿蘇市
- ↑ 阿蘇カルデラ 阿蘇ジオパーク オフィシャルサイト
- ↑ プロローグ 鎌田浩毅
- ↑ 阿蘇カルデラ - ウェイバックマシン(2015年2月11日アーカイブ分) JSTデジタル教材【地球】ビジュアル情報集
- ↑ 例えば、1981年には「阿蘇火山 世界一のカルデラ」(ISBN 978-4486005971)という書籍が出版されている。
- ↑ 18.0 18.1 18.2 火山についてのQ&A Question #2509 回答者 中田節也、特定非営利活動法人日本火山学会
- ↑ 火山 4章 火山のかたち 早川由紀夫
- ↑ 第四紀火山岩体・貫入岩体データベース 屈斜路カルデラ 産業技術総合研究所
関連項目
外部リンク
- 阿蘇山 - 気象庁
- 日本活火山総覧 第4版 阿蘇山 (PDF) - 気象庁
- 阿蘇カルデラ - 阿蘇ジオパーク