養老鉄道
養老鉄道株式会社(ようろうてつどう、英: Yoro Railway Co., Ltd.)は、岐阜県西部・三重県北部を走る養老線を運営する鉄道会社である。近鉄グループホールディングス傘下の鉄道事業会社である近畿日本鉄道(近鉄)の子会社で、2007年(平成19年)10月1日付けで近鉄から養老線の運営を引き継いでいる。
なお立川勇次郎が設立し1913年(大正2年)から1919年(大正8年)にかけて養老線を開業させ、1922年(大正11年)まで同線を運営していた養老鉄道とは別の企業である。
社紋は親会社近畿日本鉄道の社紋の中央に「 Y 」の文字を入れたものになっている。
Contents
沿革
- 2007年(平成19年)
- 2月14日 - 近畿日本鉄道(当時)全額出資により、養老鉄道株式会社を設立[1]。
- 5月9日 - 養老線の第二種鉄道事業の認可を申請する。
- 6月27日 - 養老線の第二種鉄道事業が認可される。
- 7月31日 - 国土交通省中部運輸局に対し、養老鉄道線の運賃を申請する。
- 8月31日 - 国土交通省中部運輸局より、養老鉄道線の運賃が認可される。
- 10月1日 - 近畿日本鉄道より養老線を引き継ぎ運営を開始する[1]。近畿日本鉄道は第三種鉄道事業者として線路などの施設や車両を保有し、養老鉄道が第二種鉄道事業者として列車を運行する。また、同時にダイヤ改正を実施し、乗客の利便性を考慮して「平日ダイヤ」と「土曜・休日ダイヤ」を導入、朝夕を中心に列車の増発・区間延長を行う。
- 2017年(平成29年)
- 2018年(平成30年)
鉄道事業
路線
養老線は揖斐川に沿うように走っており、沿線にサイクリングロードが多数存在することもあり、播磨駅 - 大垣駅間および大垣駅 - 揖斐駅間において、土休日は終日、平日は昼間の指定列車でサイクルトレインを実施し、お勧めのサイクリングコースの提供も行っている。当該列車の前面には「サイクルトレイン」のマークが入っている。
列車は全列車ワンマン運転だが、一部の区間には車掌が乗務し、検札と車内での乗車券の発売を行っている。
2009年3月より毎週木曜日と土曜日の昼に車内で薬膳料理を提供する「薬膳列車」を運行している。料金は1日フリーきっぷ付で5,000円[8]。
車両
- 参照: 養老鉄道養老線#使用車両
すべて養老鉄道の所有である[9]。2014年3月までは近鉄の所有で、養老鉄道はそれを借り受けて運行していた[9]。日常の検修業務は近鉄時代と同じく西大垣にて行われ、大規模な検修も同じく近鉄の塩浜検修車庫にて行われる。検修業務は養老鉄道では行わず、近鉄により実施される。車両の塗色は、2008年7月6日の営業運転を最後に全車両が近鉄時代のマルーンの旧色1色塗装に戻されたが、2009年9月に600系1編成 (606F) がかつて走行していた近鉄南大阪線時代の「ラビットカー」と同じオレンジバーミリオン地に白帯を巻いた塗装に変更を受けている。
電気検測は引き続き近鉄所有の「はかるくん」(モワ24系)で行われている。公有民営方式に移行した2018年以降も同車で検測が行われている[10]。
運賃
大人旅客運賃(小児半額・10円未満切り上げ) - 2014年4月1日改定[11]
キロ程 km |
普通運賃 | 通勤定期 1か月 |
通学定期 1か月 |
---|---|---|---|
1 - 3 | 200 | 7,650 | 3,700 |
4 - 6 | 260 | 9,570 | 4,630 |
7 - 10 | 310 | 11,480 | 5,550 |
11 - 14 | 360 | 13,390 | 6,480 |
15 - 18 | 410 | 15,310 | 7,410 |
19 - 22 | 460 | 17,220 | 8,330 |
23 - 26 | 520 | 19,130 | 9,260 |
27 - 30 | 570 | 21,040 | 10,180 |
31 - 40 | 690 | 25,640 | 10,340 |
41 - 50 | 810 | 30,230 | 10,730 |
51 - 58 | 940 | 34,830 | 11,230 |
- 通勤定期の割引率:36.3%(初乗り200円区間)
- 通学定期の割引率:69.2%(初乗り200円区間) - ただし距離が長くなると割引率は上がる。4月1日 - 3月31日までと期間を指定しているが割安で再発行可能な1年用の通学定期も発売されている。
企画乗車券・グッズ
- 近鉄時代から発売額を据え置いて発売されていた養老線全線が1日乗り放題となる「養老線休日フリーきっぷ」(大人1000円・小児500円、土曜 ・休日と春休み ・夏休み ・冬休み期間中に発売)に代わって、2014年1月6日から平日も利用できる「養老鉄道1日フリーきっぷ」(大人1500円・小児750円)が発売されている[12]。
- 映画「聲の形」とのコラボ企画として乗車券やグッズが2017年2月12日より発売されている[13][14][15]。
- 2017年4月16日より三岐鉄道・伊賀鉄道と共に3社沿線の祭りがユネスコ無形文化遺産に登録された事を記念した切符「ユネスコ無形文化遺産登録記念入場券セット」を発売している[16][17]。
駅務機器・乗車券の様式
2007年10月1日より桑名駅の4番ホームに、養老鉄道線への中間改札口と近鉄線ののりこし精算機、それに養老鉄道線の自動券売機が設置された。また桑名駅の東口と西口にもそれぞれ養老鉄道線の自動券売機が設置されている。同時に新会社に移管された伊賀鉄道と同様普通乗車券、また養老鉄道線内のみの定期券は非磁気券化されたため、桑名駅の自動改札機は通れなくなった。なお、桑名駅から養老鉄道線に乗降する場合は、改札口を2回通ることになる。
養老鉄道各駅の駅名板や運賃表・有人駅の自動券売機はすべて新しいものに交換され、前述のように普通乗車券は裏が白色の非磁気化券に代わった。乗車券の地紋には養老鉄道の新社紋が描かれている(近鉄時代はスルッとKANSAIが使えないにもかかわらず、地紋はスルッとKANSAIのマスコット「スルットちゃん」だった)。
経営状態
養老鉄道は初年度、前年近鉄時代にあった約14億の赤字を約9億円にまで圧縮した[18]。
自治体の支援
養老鉄道は、大垣市、桑名市、海津市、養老町、神戸町、揖斐川町、池田町の各自治体から支援を受けている[19]。
- 平成19年
- 固定資産税・都市計画税相当額の支援
- 平成20年度以降
- 以下のうち、いずれか少ない方の額
- 3億円(上限額[18])
- 赤字額から線路使用料及び車両使用料に含まれる減価償却費並びに土地代等をのぞいた額の2分の1
例えば平成26年度は3億800万円(赤字額に対する補助3億円と新型ATS車上装置にかかる協調補助800万円)[20]
自治体が支援する理由としては、地価が下がる恐れもあり地域の発展のため(養老町企画政策課)、交通弱者の足として確保する必要があった(大垣市生活安全課)などが挙げられる[18]。
また、岐阜県は2013年度から、養老鉄道が近鉄に支払っている施設維持や修繕経費に相当する額に対して安全対策事業費として補助する方針を明らかにした。2013年度は約5000万円を補助する見込み。
近鉄の支援
近畿日本鉄道は、養老鉄道の赤字額から、自治体等の負担額を差し引いた残額を負担する[19]。
公有民営方式(上下分離方式)への移行
養老鉄道ではその後も年間9億円規模の赤字が続いていた[21]。そこで、2017年(平成29年)中に公有民営方式(上下分離方式)へ移行する計画となった[21][22]。
- 運行
- 運行は引き続き養老鉄道が行う[21]。
- 鉄道施設の保有及び管理
- 線路など鉄道施設の保有や管理は、沿線自治体などが出資する第三セクターか基金を拠出する一般社団法人の新法人に移行する[21]。近鉄は新法人に鉄道施設や車両を無償譲渡するとともに鉄道用地を無償貸与する[21]。また、沿線自治体の負担金は新法人に拠出する[21]。近鉄は、新法人の基金は拠出しないが、経営の安定化や車両修繕などを目的とする「養老鉄道経営安定化基金(仮称)」に対して1回限りで10億円を拠出する[22]。
2016年10月31日に、近鉄から養老鉄道の鉄道施設や車両を引き継いで保有・管理する新法人として「一般社団法人養老線管理機構」を2017年2月に設立するなどの基本方針が沿線自治体で合意された[2]。近鉄が拠出する10億円を積み立てる「養老線支援基金」を、2017年10月 - 12月に大垣市が設置する方針についても合意した[2]。
この方針に沿って策定され、2017年11月15日に認定申請されていた養老鉄道養老線の地域公共交通活性化再生法に基づく鉄道事業再構築実施計画が同年12月21日に認定されることになり[5][23]、2018年1月1日から養老線管理機構を第三種鉄道事業者、養老鉄道を第二種鉄道事業者とする新事業形態へ移行することになった[6][4]。
地域の支援
養老鉄道を支援する団体はいくつかある[24]。
- 養老鉄道活性化協議会(沿線市町)
- 養老鉄道永続を進める会(池田町)
- 養老鉄道を守る会(養老町)
- 養老鉄道をどうする会(海津市)
- 養老鉄道を守る会“かいづ”(海津市)
出典
- ↑ 1.0 1.1 明石泰明、2007、「近畿日本鉄道2つの路線の運営移管で再スタート」、『鉄道ピクトリアル』57巻12号(797)、電気車研究会 pp. 118
- ↑ 2.0 2.1 2.2 “養老鉄道2月に新法人 7市町合意 運用資金3億5000万円”. 岐阜新聞 (岐阜新聞社). (2016年11月19日). オリジナルの2016年11月21日時点によるアーカイブ。 . 2018年1月7日閲覧.
- ↑ “養老線再建向け新法人スタート”. 朝日新聞 (朝日新聞社). (2017年2月2日). オリジナルの2017年2月2日時点によるアーカイブ。 . 2018閲覧.
- ↑ 4.0 4.1 4.2 4.3 4.4 4.5 “養老線の事業形態変更の経緯等 (PDF)”. 大垣市 (2017年12月22日). 2018年1月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2018年1月7日閲覧.
- ↑ 5.0 5.1 “養老鉄道養老線の鉄道事業再構築実施計画の認定について” (PDF) (プレスリリース), 国土交通省, (2017年12月20日) . 2018年1月19日閲覧.
- ↑ 6.0 6.1 “養老線の事業形態変更記念事業の実施について” (日本語) (PDF) (プレスリリース), 養老鉄道, (2017年12月20日) . 2018年1月7日閲覧.
- ↑ “養老鉄道「ご当地駅名標」を設置”. railf.jp(鉄道ニュース). 交友社 (2017年12月21日). . 2018年1月7日閲覧.
- ↑ 養老鉄道・薬膳列車
- ↑ 9.0 9.1 『鉄道ファン』2015年1月号(第645号) pp.42 - 43
- ↑ “「はかるくん」が養老鉄道線を検測”. railf.jp(鉄道ニュース). 交友社 (2018年4月14日). . 2018年4月17日閲覧.
- ↑ 消費税率改正に伴う運賃の変更について - 養老鉄道、2014年3月6日(2014年4月7日閲覧)
- ↑ 養老鉄道、フリー切符が平日も利用可能に…価格は値上げ - レスポンス、2013年12月9日
- ↑ “『映画「聲の形」×養老鉄道コラボグッズ』発売”. railf.jp(鉄道ニュース). 交友社 (2017年2月9日). . 2017年4月17日閲覧.
- ↑ “映画「聲の形」×養老鉄道コラボグッズのインターネット通販です。”. 養老鉄道 (2017年3月30日). 2017年4月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2017年4月17日閲覧.
- ↑ “【女子旅@岐阜】映画「聲の形」と「ルドルフとイッパイアッテナ」の舞台モデル巡りをしてきた!”. しごとなでしこ. 小学館 (2017年4月4日). 2017年4月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2017年4月17日閲覧.
- ↑ “「ユネスコ無形文化遺産登録記念入場券セット」発売”. railf.jp(鉄道ニュース). 交友社 (2017年3月29日). . 2017年4月17日閲覧.
- ↑ “鉄道3社共同企画!ユネスコ無形文化遺産登録記念入場券セットを発売します!”. 伊賀鉄道 (2017年3月). 2017年3月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2017年4月17日閲覧.
- ↑ 18.0 18.1 18.2 (岐阜)養老鉄道2年目 増収が存続左右 読売新聞 2008年11月8日 2009年10月23日閲覧
- ↑ 19.0 19.1 近畿日本鉄道(株)養老線・伊賀線の事業形態移行について 国土交通省 中部運輸局 2007年度 2009年10月23日閲覧
- ↑ 養老線の支援と現状 - 伊賀市、2015年3月30日閲覧
- ↑ 21.0 21.1 21.2 21.3 21.4 21.5 “養老鉄道 存続 沿線7市町、近鉄と合意 新法人が施設管理”. 岐阜新聞. (2016年3月3日) . 2016閲覧.
- ↑ 22.0 22.1 養老線の事業形態変更について (PDF) - 養老鉄道、2016年5月6日
- ↑ 養老鉄道養老線の鉄道事業再構築実施計画の認定について (PDF) - 養老線ポータル、2017年12月20日
- ↑ 養老鉄道・伊賀鉄道の利用促進・支援体制等について 国土交通省中部運輸局 2007年度 2009年10月23日閲覧
関連項目
- 養老線管理機構 - 養老線の第三種鉄道事業者である沿線自治体出資の法人。
- 四日市あすなろう鉄道 - 養老鉄道と同様に2015年4月1日に近鉄から移管された内部・八王子線を運営。
- 伊賀鉄道 - 養老鉄道と同様に2007年10月1日に近鉄から移管された路線を運営。