コルモゴロフ自己同型

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数学において、コルモゴロフ自己同型(コルモゴロフじこどうけい、: Kolmogorov automorphism)あるいは K-自己同型または K-シフトK-システム などと呼ばれるものは、コルモゴロフの0-1法則を満たすある標準確率空間English版上で定義された可逆な測度保存自己同型のことを言う[1]。すべてのベルヌーイ自己同型English版K-自己同型である(K-性を持つとも言う)が、その逆は成り立たない。多くのエルゴードEnglish版力学系K-性を持つことが示されているが、より近年の研究ではそれらの多くは実際、ベルヌーイ自己同型であることが示されている。

K-性の定義は一般的であるように思われるが、それはベルヌーイ自己同型とは確かに異なるものである。特にオルンシュタインの同型定理は、K-システムに対しては適用されず、したがってエントロピーはそれらのシステムを分類する上で十分ではない。すなわち、同一のエントロピーを持つ非同型な K-システムが非可算個存在する。本質的に、K-システムの集まりは大きく、乱雑で分類されていないものとなる。一方、オルンシュタイン理論によって B-自己同型は「完全に」表現されている。

正式な定義

[math](X, \mathcal{B}, \mu)[/math]標準確率空間English版とし、[math]T[/math] を可逆な測度保存変換とする。このとき [math]T[/math]K-自己同型、K-変換あるいは K-シフトであるとは、次の三つの性質を満たす部分 σ-集合代数 [math]\mathcal{K}\subset\mathcal{B}[/math] が存在することを言う:

[math]\mbox{(1) }\mathcal{K}\subset T\mathcal{K}[/math]
[math]\mbox{(2) }\bigvee_{n=0}^\infty T^n \mathcal{K}=\mathcal{B}[/math]
[math]\mbox{(3) }\bigcap_{n=0}^\infty T^{-n} \mathcal{K} = \{X,\varnothing\}[/math]

ここで記号 [math]\vee[/math] は σ-集合代数の合併を表し、[math]\cap[/math] は共通部分を表す。ここで等号はほとんど至る所で成立するものと解釈される。すなわち、高々測度ゼロの集合の上でのみ異なるものとなる。

性質

σ-集合代数は自明でないと仮定する。すなわち、[math]\mathcal{B}\ne\{X,\varnothing\}[/math] とする。このとき [math]\mathcal{K}\ne T\mathcal{K}[/math] となる。すると K-自己同型は強混合English版であることが従う。

すべてのベルヌーイ自己同型English版K-自己同型であるが、その逆は成立しない。

注釈

  1. Peter Walters, An Introduction to Ergodic Theory, (1982) Springer-Verlag ISBN 0-387-90599-5

参考文献