ブラッドタイプ・ハラスメント

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ブラッドタイプ・ハラスメント(通称:ブラハラ)とは、日本において少数の血液型であるAB型に対する不当な評価であり、そのことが心理的な苦痛を与えていることである[1]

問題の背景

1994年に当時、福島大学の助教授であった佐藤達哉は、少数派の集団の方が評価が低いという2個の研究を元にして、このことが日本での血液型の小集団であるAB型の人々の印象が悪かった調査結果の原因だと考え、不当な評価が行われる小集団のAB型の人々は苦痛になっている可能性が高い、とした[1]。このことは、血液と性格に関係があるかどうかということではない[1]。単に人数的に少数というだけで、セクシャルハラスメントのような嫌がらせを受けてることにつながるため、ブラッドタイプ・ハラスメントという用語を作ったとしている[1]

日本や韓国など一部の国では血液型性格分類が存在するが、血液型と性格の関連性は[2] 。だが1970年代から2000年代前半にかけて、多くのテレビや書籍が根拠なく分類を広めたため、いまだに血液型と性格の関連性を信じている人もいる[3]。2000年代の終盤以降、血液型性格診断を取り扱うTV番組などによって血液型で性格を決めつけられるなど差別を受ける危険性が指摘されるようになり[4]、読売新聞がブラッドタイプ・ハラスメントに言及したこともある[5]

行政機関の対応

厚生労働省熊本労働局などでは「血液型は職務能力とは全く関係ない」としており、血液型を採用面接などで尋ねないよう企業に求めている[5][6]大阪労働局は、採用試験の応募用紙に血液型などの記入欄を設けていた企業に対し、実際に行政指導を行ったこともある[5]

出典

  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 佐藤達哉「ブラッドタイプ・ハラスメント」、『現代のエスプリ』第324号、1994年、 154-164頁。
  2. 学者による、十分な数の標本集団で、十分管理された統計においては、複数年にわたって特定の血液型と特定の性格に明確な関連性を示すデータは得られていない。血液型性格分類に対するステレオタイプを持つ被験者だけ、またはある年だけ見ると相関性が見られることもまれにあるが、同一調査を長期に渡って行うと逆方向の相関となる可能性もある。もしも長期に渡ってコンスタントに一定方向の相関が見られるならば、明らかに相関があると言えるのだが、そのようなデータは出てきていない。
    • 山崎賢治&坂元章(1992) 「血液型ステレオタイプによる自己成就現象~全国調査の時系列分析~」『日本社会心理学会第33回大会発表論文集』 - 血液型性格関連説が社会的に広まり始めたころから数年後の1978年を起点に1988年まで、日本人延べ32,347人の自己評価による性格の経年変化を調べ、自己評価の性格がステレオタイプに沿ったものへとより強化される傾向があることを示した。ただし最も大きな偏りを示した項目でも大量のデータでないと有意味とされない程度の微弱なものであった。
    • 武藤浩二・長島雅浩他(2012)「教員養成課程における科学リテラシー構築に向けた疑似科学の実証的批判的研究」『2011年度科研費研究成果報告書』 - 山崎賢治・坂元章(1992)は1978年から1988年までの11年間に毎年約3,000人(延べ32,347人)を解析したものであるが、このデータを2000年代にまで拡張して解析しても、同様の結果が出ることが判明した(詳細な人数・年数は報告書には未掲載)。
    • 山岡重行(2001)「第二夜 血液型性格診断に見るダメな大人の思考法―思いこみと勘違いのメカニズム」 『ダメな大人にならないための心理学』(pp.35-73)
    • Sakamoto, A., & Yamazaki, K. (2004). Blood-typical personality stereotypes and self-fulfilling prophecy: A natural experiment with time-series data of 1978–1988. Progress in Asian Social Psychology, 4, 239–262.(上記の山崎賢治&坂元章(1992)と同様の内容)
    • 山岡重行 (2009) 血液型性格判断の差別性と虚妄性(自主企画(2)) 日本パーソナリティ心理学会大会 - 1999年から2009年までの6600人を調べたところ、血液型性格分類に対するステレオタイプを持つ被験者に限り多くの項目で有意差が出た。
    • 松井豊 (1991) 血液型による性格の相違に関する統計的検討 東京都立立川短期大学紀要 - 1980/82/86/88年の約1万人を調査したところ、上記の山崎賢治&坂元章(1992)と同じデータだが差は出ていないと述べている。
    • 縄田健悟(2014) 血液型と性格の無関連性 - 日米約1万人のデータを調べたが差は出なかった
  3. MARI YAMAGUCHI (2005年5月6日). “Myth about Japan blood types under attack”. The Canadian Press. 2009年12月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2014閲覧.
  4. 山岡重行「テレビ番組が増幅させる血液型差別 (特集 偏見とステレオタイプの心理学) (PDF) 」 、『心理学ワールド』第52号、2011年1月、 5-8頁。
  5. 5.0 5.1 5.2 “科学 血液型と性格「関連なし」…日米1万人超を調査”. 読売新聞(YOMIURI ONLONE). http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20140722-OYT8T50051.html . 2014-8-17閲覧. 
  6. 厚生労働省熊本労働局の「血液型は職務能力とは全く関係ない」という発表内容は熊本労働局のサイトで確認できる。2015年10月12日閲覧

関連項目


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