粒子統計

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粒子統計 (りゅうしとうけい、: Particle statistics) は、粒子の集団が従う統計力学的な性質を言う。

古典統計

古典力学において、系のすべての粒子(素粒子および複合粒子)は区別可能である。これは、ある系の個々の粒子をそれぞれ標識し追跡することが可能であることを意味する。結果として、その系の中のどの二つの粒子の位置を交換しても、系全体の配置が全く異なってしまう。さらに、系が取りうる任意の状態を二つ以上の粒子が占めることに対して制約がない。古典力学における粒子統計はマクスウェル=ボルツマン統計(M-B統計)と呼ばれる。

量子統計

量子力学が古典力学と異なる基本的な特徴は、ある特定の型の粒子はお互いを区別不可能な点である。これは、同種粒子の集合からなる系の中のどの二つの粒子を交換しても、系の構成は変わらない(量子力学の言葉では、系の波動関数は構成粒子の交換について不変である)ことを意味する。異なる性質の粒子(例えば、電子と陽子)からなる系の場合、系の波動関数は同種粒子同士の交換について不変である。つまり、同種粒子のみからなるそれぞれの系に分けて考えたときに、その構成要素の交換に対して不変である。

このように古典統計と量子統計では系の記述が異なる。量子統計の全てにとって根本的である系の同種粒子交換対称性は、スピン統計定理に則り、次の二つの統計的性質に分類することができる。

ボース・アインシュタイン統計

ボース=アインシュタイン統計(B-E統計)において、系のどの二つの粒子を交換しても、系の状態の対称性は保たれる。すなわち、交換前の系の波動関数は交換後の系の波動関数と等しい

系の波動関数それ自身が変化しないことは、系の状態について次の非常に重要な帰結を導く。すなわち、系が取りうるある一つの状態を同時に占めることのできる粒子の数に制限がない。ボース=アインシュタイン統計に従う粒子は整数スピンを持つものであることが分かる。このような性質の粒子は、ボース粒子と呼ばれている。ボース粒子の例は、光子やヘリウム4原子などがある。B-E統計に従う系の一例として、すべての粒子の集合が同じ状態で存在するボース=アインシュタイン凝縮がある。

フェルミ・ディラック統計

フェルミ=ディラック統計(F-D統計)において、系のどの二つの粒子を交換しても、系の状態の反対称性は保たれる。すなわち、交換前の系の波動関数は交換後の系の波動関数と符号を反対にしたものである

この統計においても、系の波動関数それ自身は変化しない。フェルミ=ディラック統計において、負の符号に変化する理由は以下のようにして理解することができる:

交換される粒子が同じ状態にあると仮定する。粒子はお互い区別不可能であると考えられているので、粒子の座標を交換しても系の波動関数は不変であるはずである(粒子は同じ状態にあるという仮定から)。それゆえ、同種の状態と交換する前の波動関数は同種の状態と交換した後の波動関数と等しい

この量子統計における同種粒子の交換対称性とフェルミ=ディラック系の基本的な非対称性とを組み合わせると、交換前の系の波動関数はゼロであるという結論が導かれる。これは、フェルミ=ディラック統計において、二つ以上の粒子は系が取りうる単一の状態を同時に占めることができないことを示している[1]。これはパウリの排他原理と呼ばれる。

半整数スピンを持つ粒子(フェルミ粒子)はフェルミ=ディラック統計に従うことが分かる。フェルミ粒子の例は、電子、陽子、およびヘリウム-3などがある。

関連項目

脚注