天理市
天理市(てんりし)は、奈良県北中部に位置する市。中心部に天理教関連の施設が集中していることなどから、宗教都市として知られている[1]。
Contents
市名の由来
名称は天理教に由来する。同教の本部が市中心部の丹波市町にあったこと、同教が市制施行時に一帯に普及していたことによる。県に対する合併申請書類の一つ、市名選定の理由書は、次のように述べている。
「 | (前略)市の中心たる元丹波市町は天理教教会本部の所在地であり従来より天理の町として又宗教の町としてその名は全国の隅々にまで知れわたつております。 この際合併を契機として宗教都市たる本質を明瞭に表現し関係町村相携えて街を天下の理想郷たらしめるべく住民の意向や感情を勘案してこゝに「天理市」を選定したものであります。 |
」 |
2017年現在、日本で市名に宗教団体の名称が使われている唯一の例である[2]。なお、教団側は「山辺市」を推薦していた。
かつて、天理市民ではない天理教信徒が天理市の市名を、山辺郡をそのまま市名にした「山辺市」に変更するよう求めて天理市長を訴えたが、この訴えは却下された[3]。
地理
奈良県北中部に位置する。市域を東西に西名阪自動車道、名阪国道が貫き、南北軸と交わる交通の要所となっている。 東部は大和高原等が広がる山間地であり、西部は奈良盆地に含まれる平坦地となっている。 市の中心部には石上神宮、大和神社や天理教関連の施設が集中しており、宗教都市としての性格を持ち合わせる。西部は、近鉄や西日本旅客鉄道の沿線であり、住宅地として開発が行われ、大阪へのベッドタウンとしての性格を持ち合わせる。都市としては、複数の顔を持ち、同市内でありながら、街の雰囲気、住民の指向は違いを見せる。
気候
奈良県を参照。
人口
天理市(に相当する地域)の人口の推移 | |
総務省統計局 国勢調査より |
1990年代後半 - 2000年代前半に掛けては増減が激しい時期があったが、近年は微減傾向である。
歴史
- 1954年(昭和29年)4月1日 - 山辺郡丹波市町・朝和村・福住村・二階堂村・添上郡櫟本町・磯城郡柳本町が合併して天理市が発足。奈良県下で4番目の市となる。
- 1954年(昭和29年)9月24日 - 市章を制定[4]。
- 1958年(昭和33年)10月15日 - 磯城郡田原本町の一部(大字桧垣・遠田・海知・武蔵)を編入。
市域の変遷
明治22年 | 明治26年 | 明治27年 | 大正12年 | 昭和29年 | 現在 |
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奈良県 | |||||
山辺郡 | 天理市 | ||||
山辺村 | 丹波市町 | ||||
二階堂村 | |||||
朝和村 | |||||
福住村 | |||||
式上郡 | 磯城郡 | ||||
柳本村 | 柳本町 | ||||
添上郡 | |||||
櫟本村 | 櫟本町 |
行政
歴代市長
- 中島賢蔵 (1954年(昭和29年)4月 - )
- 北沢善之 (1957年(昭和32年) - )
- 堀内俊夫 (1966年(昭和41年)5月 - )
- 尾崎喜代房 (1976年(昭和51年)9月 - )
- 前川尭 (1988年(昭和63年)8月 - )
- 市原文雄 (1992年(平成4年)5月 - )
- 南佳策 (2001年(平成13年)10月 - )
- 並河健(2013年(平成25年)10月-)
立法
天理市議会
- 定数:18名
- 任期:2015年(平成27年)4月30日 - 2019年(平成31年)4月29日[5]
- 議長:大橋基之
- 副議長:東田匡弘
- 監査委員:加藤嘉久次
会派名 | 議席数 | 議員名(◎は幹事長) |
---|---|---|
清風会 | 9 | ◎飯田和男、堀田佳照、廣井洋司、三橋保長、市本貴志、東田匡弘、内田智之、大橋基之、中西一喜 |
創生 | 4 | ◎寺井正則、鳥山淳一、今西康世、仲西敏 |
創造未来 | 4 | ◎佐々岡典雅、岡部哲雄、加藤嘉久次、榎堀秀樹 |
無会派 | 1 | 荻原文明 |
奈良県議会
- 定数:2名
- 選挙区:天理市選挙区
- 任期:2015年(平成27年)4月30日 - 2019年(平成31年)4月29日
議員名 | 会派名 | 当選回数 |
---|---|---|
岩田国夫 | 自民党奈良 | 5 |
川口延良 | 自民党絆 | 1 |
経済
産業
市の中心部には天理教関連の施設が多く、宗教都市の様相を呈しているが、市全体的には農業地帯である。 特にいちごの栽培が盛んである。
人口増に対応した商業活動も活発であり、大型ショッピングセンターも設置された。
また、「天理ラーメン」という、ひとつのジャンルとなった、トンコツ、鶏ガラをベースにニンニク、豆板醤で味付けされ、具には炒めた白菜、豚肉を使用した彩華ラーメンや、天理スタミナラーメンが有名である。
市北部にはシャープの総合開発センターがあり、研究所およびLSD・液晶ディスプレイの工場が置かれている。
新興住宅地
大阪から電車、車で1時間程度の距離であることから、ベッドタウンとしての役割を担っており、特に近鉄天理線沿いを中心に新興住宅地が現在も拡大し続けている。
企業
- 天理興業
- センタン 天理工場
- シャープ 総合開発センター(施設内にシャープミュージアムがある。ただし、新製品などの研究所内のため事前予約制である。[6])
- 彩華
- なかい(天理スタミナラーメン)
- 三原食品
- 長寿飯店
- 大和軒
- 近藤豆腐店
- 大和農園
- 坂本金属工業
- 春日台カントリークラブ
- 天理総合運輸
金融機関
農業協同組合
奈良県農業協同組合(JAならけん)
- 二階堂支店・天理営農経済センター(前栽町)
- 福住出張所(福住町)
- 櫟本支店(櫟本町)
- 天理支店(川原城町)
- 朝和支店(成願寺町)
- 柳本支店(柳本町)
上記の各支店・出張所、およびイオンタウン天理内にJAバンクATMが設置されている。
日本郵政グループ
(※2014年6月現在)
- 天理郵便局(川原城町) - 集配局。
- 二階堂郵便局(二階堂北菅田町)
- 天理前栽郵便局(杉本町)
- 天理櫟本郵便局(櫟本町)
- 天理別所郵便局(別所町)
- 天理親里館(おやさとやかた)郵便局(三島町)
- 天理丹波市郵便局(丹波市町)
- 天理朝和郵便局(西長柄町)
- 天理三昧田(さんまいでん)郵便局(三昧田町)
- 柳本郵便局(柳本町)
- 天理福住(ふくすみ)郵便局(福住町)
- 山田簡易郵便局(山田町)
- 大阪支店 天理よろづ相談所内出張所(三島町)(ATMのみ/ホリデーサービス実施)
- 大阪支店 イオンタウン天理内出張所(東井戸堂町)(ATMのみ/ホリデーサービス実施)
その他簡易郵便局を除く各郵便局にATMが設置されており、天理・天理親里館の各郵便局ではホリデーサービスを実施。
天理市内の郵便番号は「632-00xx」(天理郵便局の集配担当)となっている。ただし、長滝町は「632-0123」、福住町は「632-0122」、山田町は「632-0121」(以上3地区は針ケ別所郵便局(奈良市針ケ別所町)の集配担当)となっている。
姉妹都市・提携都市
国内
- なし
海外
- ラ・セレナ市(チリ共和国コキンボ州) - 1966年(昭和41年)10月1日提携
- バウル市(ブラジル連邦共和国サンパウロ州) - 1970年(昭和45年)4月18日提携
- 瑞山市(大韓民国忠清南道) - 1991年(平成3年)11月7日提携
地域
学校教育
小学校
中学校
高等学校
大学・短期大学
社会教育
ホール・集会場
- 天理市文化センター
- 天理市福祉センター
公民館
- 朝和公民館
- 櫟本公民館
- 井戸堂公民館
- 式上公民館
- 祝徳公民館
- 前裁公民館
- 丹波市公民館
- 東部公民館
- 二階堂公民館
- 福住公民館
- 柳本公民館
- 山田公民館
図書館
- 天理市立図書館
- 天理大学附属天理図書館
体育施設
- 長柄総合運動公園
- 天理市立三島体育館
- 天理市立二階堂体育館
- 天理市立二階堂運動場
- 天理市立白川ダム運動場
- 天理市立福住運動場
- 天理市立天理ダム運動場
- 温水プール(コナミスポーツ天理)
- 親里競技場(ラグビー場、野球場、フィールドホッケー場 天理教本部運営)
警察
消防
- 奈良県広域消防組合天理消防署
- 天理教保安室消防掛・境内掛
隣接する自治体
奈良県
交通
鉄道
バス
- 奈良交通
- 天理市コミュニティバス「いちょう号」
- 天理市デマンドタクシー「ぎんなん号」
このほか、当市北部の大和郡山市に近い地域では大和郡山市コミュニティバス「元気治道号」の伊豆七条町・伊豆七条町セレモニー琴前・新庄町各停留所も利用可能となっており、近鉄郡山駅・JR大和郡山駅へアクセスできる。
また、当市南部の桜井市に近い地域では桜井市コミュニティバス「西北部循環線」の大豆越停留所が利用可能となっており、桜井駅へアクセスできる。
道路
高速道路・有料道路
一般国道
- 名阪国道
- 五ヶ谷IC・高峰SAは奈良市に存在
- 京奈和自動車道
- 郡山南IC
- 名称は「郡山」と付いているが、天理市二階堂北菅田町に存在
- 郡山南IC
- 国道24号
- 国道25号…途中で名阪国道と下道に分かれる。
- 国道169号
主要地方道
- 奈良県道36号天理王寺線
- 奈良県道38号桜井都祁線
- 当市内は僅か300mほどしか通過しない。
- 奈良県道47号天理加茂木津線
- 奈良県道50号大和高田桜井線
- 当市内は僅か500mほどしか通過しない。
- 奈良県道51号天理環状線
一般県道
- 奈良県道145号櫟本停車場線
- 奈良県道109号天理斑鳩線
- 奈良県道150号柳本停車場線
- 奈良県道186号福住矢田原線
- 奈良県道187号福住上三橋線
- 奈良県道192号福住横田線
- 奈良県道193号筒井二階堂線
- 奈良県道196号柳本田原本線
- 奈良県道247号笠天理線
- 奈良県道267号横川三昧田線
- 奈良県道781号都祁名張線
- 起点付近のみ通過する。
名所・旧跡・観光スポット・祭事・催事
名所・旧跡
文化財や史跡が散在。
- 山の辺の道 - 日本最古の道
- 崇神天皇陵
- 景行天皇陵
- 手白香皇女衾田陵
- 櫛山古墳
- 黒塚古墳
- 西山塚古墳
- 東大寺山古墳
- 赤土山古墳
- 石上神宮 - 官幣大社、二十二社
- 大和神社 - 官幣大社、二十二社
- 氷室神社
- 夜都岐神社
- 長岳寺
- 内山永久寺
- 龍王山城
- 福住中定城
天理教関連の施設
- 天理大学附属天理図書館 - 国宝や重要文化財を収蔵
- 天理大学附属天理参考館 - 国宝や重要文化財を収蔵
市内中心地には「おやさとやかた」と呼ばれる天理教独自の建築物が林立している。これは教祖の中山みきが言ったとされる「今に,ここら辺り一面に,家が建て詰むのやで。奈良,初瀬七里の間は家が建て続き,一里四方は宿屋で詰まる程に。屋敷の中は,八町四方と成るのやで。」[7]という言葉をもとに、2代目真柱・中山正善が「神のやかたであるところの元のぢば,その元のぢばを取り囲む子供の住居たるおやさとやかたをめぐらしまして,ここに親も子も共々に,神も人も共々に一つ心になって,陽気ぐらしの実を,否,世界の平和の雛型を進めて行き度い」という正善の決意のもとに同輩の建築家・内田祥三と奥村音造とともに「かんろだい」(教会本部)を中心に、約870m四方に68棟を建て巡らすという広大な「おやさとやかた構想」によって建設されたものであり、1954年(昭和29年)から着工され、現在も構想は継続しており、建設中である。現在の建物は、信者宿泊施設の「詰所」をはじめ、天理大学、天理高等学校、また天理よろづ相談所病院など福祉と医療、学校教育、信者の宿泊、教務などの諸施設として使用されている[7]。2014年(平成26年)現在、26棟が完成している[8]。
そのほか、天理教の教祖百年祭を記念し建設された、親里競技場があり、野球場、フィールドホッケー場、ラグビー場は地元の天理高等学校野球部、天理大学ラグビー部が常時使用しているほかに、各種大会や全国大会が開催されている。
祭り
天理市PR大使(観光大使)
天理中学校・天理高等学校・天理大学出身。2014年10月10日 天理市が委嘱。
天理市と天理教
- 天理教の二代真柱・中山正善が、1960年(昭和35年)、名誉市民となっている。
- 毎年、天理教から行政当局に対して多額の寄付金がなされているが[9]、教団側は特に使用目的を指定していない。寄付金は、毎年の当該年度の一般会計予算の中に組み入れられており、
天理市出身の有名人
- 碧井れみ(シンガーソングライター、関西を中心に活動)
- 有本尚紀(テニス選手)
- 在原業平(平安時代の歌人)
- 海原かなた(漫才師海原はるか・かなた)
- 熊谷俊人(全国最年少の市長・千葉市長、幼少時に引っ越し千葉県浦安市や兵庫県神戸市で育つ。)
- 佐々木六華(テレビ宮崎アナウンサー)
- 立川理道(ラグビー日本代表選手)
- 中山平八郎(明治の衆議院議員 奈良県再設置運動の功労者)
- 中井久夫(精神病理学 神戸大学名誉教授 医学博士)
- 中西彩(アーチェリー選手、北京パラリンピック日本代表)
- 中山みき(天理教教祖)
- ハイビスカスみぃ(プロレスラー)
- 真鶴秀五郎(元大相撲力士)
- 道上龍(レーシングドライバー)
- ミシェル未来(タレント、生まれはオーストラリア)
- 村上和雄(遺伝子解読 筑波大学名誉教授 農学博士)
- 山村聰(俳優)
脚注
- ↑ 島田裕巳 『聖地にはこんなに秘密がある』 講談社、2011年6月。ISBN 978-4-06-216475-7。
- ↑ 地方自治体名としては、過去に金光教本部の所在地であることに由来する金光町が岡山県浅口郡に存在したが、合併で浅口市となったことに伴い消滅している。私的団体に由来する市名としても、現存するのはこの天理市と愛知県豊田市(トヨタ自動車に由来。旧称・挙母市)のみである。過去の例としては、平成の大合併で郡上市となった旧明宝村の例がある(元は明方村であったが、村おこしの明宝ハムの商品名に合わせ、明宝村に村名を変更していた)。日野自動車(トヨタ自動車系)がある日野市(設立時は日野村)や、日立製作所の所在する日立市(設立当時は日立村)は、企業が地名を社名に取り入れたものである。
- ↑ 奈良地裁昭和51年(行ウ)第2号市名変更請求事件、1976年(昭和51年)9月27日判決(天理市民でない者が,天理市がその市名に特定宗教団体の名称を借用していることは憲法20条に反しているとして,天理市の市名を山の辺市に変更することを求めたところ,「原告には権利保護要件(訴権),当事者適格及び義務づけ訴訟提起の法律上の利益がない」などとする被告の翻案前答弁を引用し,同訴えを不適法却下した事案。)。「A市という市名をB市に変更せよとの訴えが不適法として却下された事例」『判例時報』(第836号pp. 47–48、1977年2月11日)参照。
- ↑ 『図典 日本の市町村章』 小学館辞典編集部、小学館、2007-01-10、初版第1刷。ISBN 4095263113。
- ↑ 奈良県 任期満了日一覧
- ↑ “展示施設のご案内”. シャープ. . 2013閲覧.
- ↑ 7.0 7.1 森進 (2009-10). “「おぢば帰りの行為と意味」(中) - 「ぢば」,「やしき(屋敷)」,「親里」の呼称と意味;「おぢば帰り」,「お屋敷帰り」,「おやざとまいり(親ザト参リ)」の呼称と意味 -” (pdf). Tenri University journal (天理大学学術研究委員会) 61 (1): "pages = 27-28". NAID 40016894897 . 2015閲覧..
- ↑ 天理教公式サイト「おやさとやかた」
- ↑
参考文献
- 島田裕巳 『聖地にはこんなに秘密がある』 講談社、2011年6月。ISBN 978-4-06-216475-7。
- クラーマー・スベン「「宗教都市」天理市の誕生 : その問題点と市町村合併史上の意味」、『史学雑誌』第126巻第8号、史学会、2017年、 54-76頁。
関連項目
外部リンク
- [{{#property:P856}} 天理市]
- オープンストリートマップには、天理市に関連する地理データがあります。