アルストム
アルストム(フランス語: Alstom [alstɔm])は、フランスに本拠地を置く多国籍企業で、世界の鉄道車両の2割強のシェアを有している。本社はパリのルヴァロワ=ペレ。
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会社概要
アルストムグループの中核企業であり、上場企業(ユーロネクスト)である。おもな子会社には以下のようなものがあり、いずれも世界有数の重電メーカーである。
- アルストム・パワー (Alstom Power)- 発電機、ボイラーなどの電力インフラを担当。
- アルストム・グリッド (Alstom Grid) - 送電事業を担当。
- アルストム・トランスポール (Alstom Transport) - 鉄道車両、トロリーバスなどの交通インフラを担当
シーメンスとの統合構想
2017年にアルストムはシーメンスの輸送部門(シーメンス・モビリティ)と統合し新会社の株式を折半することで両社間は覚書を交わした。社名は『シーメンス・アルストム』で本社はパリ、上場はフランス(ユーロネクスト・パリ)となり、CEOはアルストム側から。11人の取締役で6人はシーメンス側が派遣する予定[1]。中国中車の台頭に対抗する狙いがある。
2018年3月、両社は合併契約を締結。各地域での独占禁止法審査を待って年末に完了する[2]。7月13日、欧州委員会が独占禁止法抵触の可否について調査を開始[3]。7月17日、アルストムの株主は統合を承認した[4]。
子会社の事業
アルストム・パワー
アルストム・グリッド
2010年6月国営電力会社アレヴァより送電・配電部門を買収して子会社化した。この買収はアルストムだけでなく、シュナイダーエレクトリックも関わっており、送電事業をアルストムが、配電事業をシュナイダーエレクトリックが引き継ぐものである。アルストムは2004年にアレヴァに送電部門を売却しており、事実上の買い戻しである。本社はフランス・パリ近郊のラ・デファンス。
アルストム・トランスポール
ボンバルディア・トランスポーテーション、シーメンスと並ぶ御三家の一つで世界の鉄道車両の2割強のシェアを有する大企業である。車体だけでなくモータをはじめとした電装品も製造できる会社である。本社はフランス・パリ郊外のサン=トゥアン。
主な製品
フランス国内向け
- フランス国鉄(SNCF) - TGVの全車両を含め各種機関車・客車・電車・気動車などを多数納入。
- パリ交通公団(RATP) - 地下鉄(メトロ)、路面電車(トラム)、近郊電車(PER)の各車両。
- リヨン交通局(TCL) - 地下鉄車両、路面電車、など。
- 低床電車のブランド「Citadis」シリーズについてはシタディスを参照。
フランス国外向け
- 高速鉄道
TGVタイプの高速鉄道車両・システムを積極的に売り込んでいるほか、フィアットの鉄道部門から振り子式車両・ペンドリーノの技術を引き継いでおり、250km/h程度までの路線にはこちらも売り込んでいる。
- イギリス国鉄 - 373形(ユーロスター用)
- ベルギー国鉄 - PBKA型(タリス)
- オランダ国鉄 - PBKA型(タリス)
- ドイツ鉄道 - PBKA型(タリス)
- スイス国鉄 - RABe503形
- イタリア国鉄 - ETR600、ETR610など
- ヌオーヴォ・トラスポルト・ヴィアッジャトーリ(NTV) - AGV
- AVE - 100系、101系、104系、120系
- アムトラック - アヴェリア・リバティ (Avelia Liberty) 〔2021年営業運転開始予定〕[5][6]
- 韓国高速鉄道 - KTX-I
- 中国高速鉄道CRH5型電車
- 地下鉄
- 路面電車
- 超低床電車のブランド「Citadis」シリーズは、アルジェ、バルセロナ、ダブリン、メルボルンなど世界約28都市の路面電車網で導入されている。
- チューリッヒ市交通局 - VBZ Be 5/6…ボンバルディアとの共同設計。
- 機関車
- NJトランジット - PL42ACディーゼル機関車
- 電車・気動車
- ドイツ鉄道
- 汎用規格車両
- 客車
- 新交通システム
開発中
- AGV - 次世代高速鉄道車両
アルストムリンク式台車
アルストムが開発した台車の軸箱支持方式は、アルストムリンク式として有名である。
この軸箱支持方式は、従来のペデスタル式(軸箱守式)台車の欠点である軸箱守と軸箱との摺動を防ぐため、軸箱を台車枠から2本のリンクによって支持するものである。同社の開発した方式では、軸距の変化を無くし、軸箱の動きを妨げないようにするため、各々のリンクを段違いに配置したワッツリンクとなっているのが特徴である。
日本では一部の大手私鉄(小田急電鉄、東武鉄道、旧営団、名古屋鉄道、阪急電鉄、京阪電気鉄道など)で1960年ごろの一時期採用されたことがあり、小田急電鉄の車両では近年(1000形車両・20000形車両)まで継続的に採用されている。
なお、日本国内における製造ライセンシーだった住友金属では、アルストム(リンク)方式とは称さず、「住友リンク方式」と称していた。
沿革
- 1928年 - トムソン・ヒューストン社とアルザス地方のソシエテ・アルザシエンヌ・コンストリュクシオン・メカニック社が合併してアルストム(Alsthom)設立。
- 1932年 - 電気機関車を製造していたCEF社を買収。
- - 巨大客船ノルマンディー用に当時最高出力となるエンジンを納入。
- 1937年 - トロリーバスを製造していたヴェトラ社を買収。
- 1977年 - フランス北部Paluel原子力発電所に1300MWの発電機を納入。
- 1978年 - フランスの高速鉄道TGVが開業。
- 1986年 - フランス電力公社(EDF)より世界最大出力(当時)となる212MWのガスタービンを受注。
- 1990年 - TGV試験車両が世界最速(当時)の515km/hを記録。
- 1999年 - スイス・ABB社との共同出資でABB・アルストム・パワー社を設立。
- ガスタービン事業をゼネラル・エレクトリック社に譲渡。
- 2000年 - ABB・アルストム・パワー社のABB出資分もアルストムが買い上げる。
- イタリア・フィアットの鉄道部門を買収。
- 2004年 - 経営危機により政府の支援を受ける。
- 送電・配電部門(T&D)をアレヴァに売却。
- 世界最大(当時)の客船クイーン・メリー2を納入。
- 2006年 - アルストム・マリン社の大半の株式を韓国・STXへ譲渡。
- 2007年 - TGV試験車両が鉄輪式鉄道としては世界最速の574.8km/hを記録。
- スペインの風力発電製造会社エコテクニア(現:アルストム・エコテクニア)を買収。
- 2010年 - アレヴァから送電事業を買い戻してアルストム・グリッド社を設立。
- 2014年 - ゼネラル・エレクトリックから169億ドルでアルストム・パワー社とアルストム・グリッド社を買収する提案を受ける[7]。
- 2015年 - アルストム・パワー社とアルストム・グリッド社の買収手続きが完了し、両社はGEパワーに統合される。
日本法人
日本法人として、ABB・アルストム・パワー株式会社、アルストム株式会社がかつて存在した(2015年、GEパワーに統合された)。
関連項目
- ヌオーヴォ・トラスポルト・ヴィアッジャトーリ - 車両(AGV)を提供
- ビッグスリー
脚注
- ↑ シーメンス、アルストムと鉄道事業統合 欧州連合で中国に対抗 2017-09-27 日本経済新聞
- ↑ シーメンスとアルストム、合併契約を締結 2018-03-27 NNA EUROPE
- ↑ 欧州委、独シーメンス・仏アルストムの鉄道事業統合を本格調査 2018-07-14 日本経済新聞
- ↑ (英語)Alstom shareholders approve Siemens Mobility merger 2018-07-17 レールウェイ・ガゼット・インターナショナル
- ↑ “Alstom to provide Amtrak with its new generation of high-speed train”. Alstom (2016年8月). . 2016閲覧.
- ↑ “Amtrak awards Northeast Corridor high speed train contract”. Railwaygazette (2016年8月26日). . 2016閲覧.
- ↑ “GE offers $13.5 billion enterprise value to acquire Alstom Thermal, Renewables, and Grid businesses”. General Electric. . 2014閲覧.
外部リンク
- ALSTOM(英語)(フランス語)
- アルストムジャパン (PDF)
- アルストム トータル イマージョン 拡張現実