決戦・日本シリーズ

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決戦・日本シリーズ』(けっせん・にほんシリーズ)は、1974年に発表されたかんべむさし短編小説早川書房ハヤカワ・SFコンテストに応募、選外佳作を受賞して「SFマガジン」に掲載された。

作品概要

兵庫県西宮市に本拠地を置いていた二つの球団、阪急ブレーブス(現:オリックス・バファローズ、本拠地:阪急西宮球場)と阪神タイガース(本拠地:阪神甲子園球場)が日本シリーズで戦うことになったら……という、(結局、片方が後身球団に移行、さらに別球団と合併し、実現できなかったカードである)プロ野球球団の戦いを想定して描いた短編である。

阪急電鉄阪神電気鉄道という、大正期以来阪神間にて輸送を競い、それぞれ独自の文化を築いていた両社の沿線の様子の違いを、指し示した作品でもある。奇抜な発想に濃厚な関西弁、個性豊かな登場人物、上方落語の影響を受けた語り口など魅力ある一編となっている。

また阪急ブレーブスや阪急西宮球場、今津駅の連絡線や、阪急西宮北口駅の平面交叉などが過去のものとなり、さらには阪急・阪神が阪急阪神ホールディングスという同一企業の傘下となった現在では、読む者にある種の郷愁感を覚えさせる作品ともなっている。

内容

ファイル:今津線シリーズ.png
阪急西宮球場と阪神甲子園球場及び阪急今津線の位置関係図。因みに、阪急西宮球場は現在は阪急西宮ガーデンズになっている。

関西を本拠とするスポーツ新聞「スポーツイッポン」(スポーツニッポンのパロディ)が、発足25周年を記念してイベントを企画した。おりしも阪急・阪神の両社が保有する野球球団、「阪急ブレーブス」と「阪神タイガース」が開幕以来独走態勢に入っていたことから、「日本シリーズで両球団が戦い、敗北した方の会社の路線を勝利した会社の電車が凱旋走行する」というものであった。それぞれのホームグラウンドの阪急西宮球場阪神甲子園球場をつなぐ位置にある路線である今津線にちなんで「今津線シリーズ」と、この対決は呼ばれるようになった(西宮球場は、現在今津南線と呼ばれている区間の北端にある西宮北口駅のすぐ南東にあった。甲子園は、今津線の南端で阪神本線との乗換駅である今津駅から東(梅田側)に2駅で最寄駅の甲子園駅である)。

対決は、セ・パの両チームにとどまらず、ファン、応援団をはじめ、芸能人からマスコミ、企業、文化人、さらには阪神間の各都市、すなわち大阪市尼崎市西宮市芦屋市神戸市の住民・商店街、それらが贔屓のチームにより二分されての大騒動となってゆく[1]。ペナントレースは順調に両チームが優勝し、日本シリーズとなるが、その日本シリーズは第7戦までもつれ込んで引き分けとなり、最終決戦となる第8戦の大詰め、逃げ切るかサヨナラかの際に、熱球的ファンである作家のドクトルロカンボこと喜多北杜夫が怪しげな呪文を唱え出し……

書誌情報

  • 『決戦・日本シリーズ』早川書房ハヤカワ文庫) 1976年6月15日初版 ISBN 978-4150300791
    本作を表題作とする短編集。「まわる世間に」「背で泣いている」「追い込まれた時代」「決戦・日本シリーズ」を収録。表紙楢喜八、解説筒井康隆
  • 『'74年日本SFベスト集成』筒井康隆編 徳間書店 1975年5月 ISBN 978-4191509405
    • 徳間文庫版 1983年6月 ISBN 978-4195774786

実際に起こった例

『決戦・日本シリーズ』はフィクションであるが、実際に阪神線を阪急電車が走行した例がある。

また、作品中でも言及があるように、阪急・阪神の両社は神戸高速鉄道に乗り入れているが、鉄道事業法の施行後は神戸高速線が両社(と山陽電気鉄道)の免許区間となった。2010年の事業形態変更後も新開地 - 高速神戸の1駅間は阪神阪急それぞれの神戸高速線として事業区間が重複しており、同じ線路を両社の車両が走行している(駅務や運行管理といった業務は両社から阪急レールウェイサービスへ委託されている)。

関連項目