相当算
相当算(そうとうさん)は算数における計算法の一つである。主に比や割合に関する問題で使用される。算数では文字を使った式(中学受験生以外は新学習指導要領の前倒し実施より復活)や未知数を四角とする計算は習うが、方程式を習わないため、この計算法を用いる。
以下、比の数aは「a」とする[1]。
考え方
方程式が未知数をxなどの文字に置き換えるのに対して、相当算は比の1と実際の数量との関係で考える。式で表すと「1」=bとなるようにする。これを求めるために、両辺が等しければ両辺の数を加減乗除してもその関係は変わらない(0の除法は不可)という性質を利用する。ごく簡潔な例で言うと、100gで250円の肉と150gで300円の肉の値段を比較する際に1グラムあたりの値段で比較するために一方の関係を100で、もう一方の関係を150で割るのと同じ方法である。
例題
- お姉さんと弟は5:3の割合でお小遣いを持っていました。しかし、お姉さんは700円の本を買ったので、その割合は6:5になりました。二人は最初いくらお金を持っていたでしょうか。
- 循環小数0.321…を分数に直しなさい。
解答例
例題1
弟はお金を使っていないので、弟の比「3」と「5」を最小公倍数15でそろえると、最初のお金の比は25:15、後の比は18:15となる。姉のお金の比は「7」減っているが、これは姉が使ったお金の700円に相当することがわかる。
よって、「7」=700となり、両辺を7で割ると、「1」=100円となる。これを最初の比「25」と「15」に掛け算すると、姉は2500円、弟は1500円となる。
例題2
0.321…=「1」とする。 この両辺を1000倍すると321.321…=「1000」となる。
さらにこれから0.321…=「1」を引いて、321.321…-0.321…=「1000」-「1」とすると、321=「999」となる。
この両辺を999で割ると、「1」=321/999、約分して107/333となる。
方程式との関係
ニュートン算や仕事算は仕事量を「1」ではなくxとすれば、そのまま一次方程式になる。また、循環小数を分数に直す方法は方程式の方法とほとんど変わらない。高校の「数学Ⅰ」でも循環小数を分数に直す問題が出題されるが、そこでは「1」ではなくxとしているだけで、他はまったく同じである。それでも方程式を使わないのは、算数には負の数の概念が登場しない[2]ことと算数では文字同士の演算を習わないことの2点による。
算数では-1は「マイナス1」という数ではなく、「ひく1」という手順として扱われるので、移項ではなくa=bならば両辺に同じ数を加減乗除してもその関係は変わらないという前述の規則を応用したものとして扱われる。
また、x+x=2xといった文字式の演算規則も習わないため、方程式で必要な未知数同士の計算ができない(計算の工夫として分配法則を学習するので、それを用いて計算することは小学生でも不可能ではない)。よって、未知数の加法を「1」+「1」=「2」という数の計算でしか表せない。加えて、×の記号を省略する表記法も学ばないため、方程式ではかえって式が煩雑になることもある。これらが方程式ではなく相当算を使う理由となっている。
関連項目
注・参考文献
- 歌丸優一著『やりなおし算数道場』(講談社ブルーバックス)