H&M
H&M(エイチ・アンド・エム)は、スウェーデンのアパレルメーカーエイチ・アンド・エム ヘネス・アンド・マウリッツ(H & M Hennes & Mauritz AB, スウェーデン語発音:ホー・オック・エム ヘンネス・オック・マウリッツ、日本ではヘネス・アンド・モーリッツとも表記される)が展開するファッションブランド。低価格かつファッション性のある衣料品を扱う、いわゆるファストファッションの一翼を担う企業のひとつである[1][2]。
歴史
1947年にスウェーデン中部の都市ヴェステロースで創立。この時は婦人服を専門にしており、社名も「Hennes」(スウェーデン語で「彼女のもの」の意)であった。1968年にストックホルムの狩猟用品店「Mauritz Widforss」を買収した際、この店の在庫の中に紳士服のストックがあったことから、これ以降紳士服も扱うことになり、店名も「Hennes & Mauritz」となった。その後「H&M」の略称を正式なブランド名とし、現在に至る。
特徴
商品の主力は手頃な価格の衣料品であるが、カール・ラガーフェルド、ステラ・マッカートニー、ヴィクター&ロルフ、マシュー・ウィリアムソンなどの有名デザイナーによるラインナップや、マドンナ、カイリー・ミノーグとのコラボレーションによる商品も発売したことがある。H&Mのブランドで化粧品も手がけている[3]。
取り扱い商品
婦人服ではコート・ワンピース・カットソー・ドレス・ブラウス・ボトムスを取り扱い、紳士服ではジャケット・パーカー・セーター・シャツ・パンツを扱っている。
世界で約100名いる同社のデザイナーが、各年10回の世界旅行を行い、旅行先で受けたインスピレーションをもとに、次々とデザインをすることで、毎日のように新製品を投入する商法を成り立たせている[4]。
店舗展開
1964年に最初のスウェーデン国外店舗としてノルウェーに進出。2009年時点で、35か国に約2,000の店舗を持ち、73,000名以上の従業員を擁している[5]。
ヨーロッパではキプロス・リトアニア・マルタ・ブルガリア・ルーマニア・ラトビアを除くほぼ全てのEU加盟国、またスイス・ノルウェーの非EU国、ロシアに進出しており、ほぼ全域に店舗がある。特にドイツでは、2004年に撤退したライバルのGAPから国内の全店舗を買収したことで、H&Mにとって最大の市場となっている。
北米では2000年3月にニューヨークにオープンしたのを皮切りに、フィラデルフィア・ボストン・シカゴ・ワシントンD.C.・サンフランシスコなどの都市に出店。2004年にはカナダにも進出した。
中東では2006年にUAE・ドバイ、クウェートにフランチャイズの形で出店を果たし、さらに同地域での新規出店を予定している。
アジアでは2007年に香港と中国・上海、2009年に中国・北京、2010年に韓国・ソウル、2011年にシンガポール、2012年にタイ・バンコクとマレーシア・クアラルンプール、2015年に台湾[6]に出店している。
日本
2008年9月に日本1号店が東京都中央区・銀座中央通りに出店した。日本初出店ということで早くから話題となり、オープン当日には約5,000人が行列を作り、入場制限もされるほどの盛況であった[7]。H&Mの日本進出を受けて、商品の価格帯が重なるユニクロや、すでに日本進出していたザラなども店舗や品揃えの拡大を図るなどの対抗策に追われた[8]。
同年11月には2号店が渋谷区原宿・明治通りに開店。この際には、コム・デ・ギャルソンとのコラボレーション商品も先行発売された[9]。さらに、2009年9月に横浜市西区のランドマークプラザに出店。この店舗では、日本では初となる子供服を取り扱う[10]。2014年、京都市に日本国内最多・最大フロア面積 (3,400 m2) の大型店を出店[11]。2016年5月現在、29都道府県で57店舗を展開している。
首都圏以外の地域で初出店となった店舗は以下の通り。
- 2010年
- 2011年
- 2012年
- 2013年
- 2015年
- 2016年
- 2017年
- H&M Ginza.jpg
銀座店
- HandM Shibuya store.JPG
渋谷店
- H&M戎橋店.jpg
戎橋店
- East canal.jpg
博多店
批判
2018年1月の人種差別騒動
2018年1月、イギリス版オンラインショップの子供服コーナーで、「Coolest Monkey In The Jungle」(ジャングルで一番クールなサル)とプリントされたパーカーを黒人少年のモデルが着用している画像が掲載された。これが人種差別であるとしてTwitterなどのSNSが炎上し、H&Mは謝罪して写真をパーカー単体のものに差し替えた[15][16]。この問題を受け、カナダの歌手ザ・ウィークエンドは、H&Mとの契約の打ち切りを表明した[17]。また、2018年3月に同社とのコラボレーションを実施する予定だったアメリカ合衆国のラッパージー・イージーも、パートナーシップを打ち切る考えを明らかにした[18]。
H&Mは謝罪文の中で問題となったパーカーを全世界での販売を中止することを発表した[18]が、南アフリカの野党経済的解放の闘士は「人種差別に対して謝罪をすれば許されるという時代は終わった」として同年1月13日に南アフリカ国内で抗議デモを実施し、支持者の一部がH&Mの店舗を襲撃する事件も発生した[19]。一方、BBCが報じたところによれば、モデルの母親は「H&Mに人種差別の意図はない」と発言したため、他の黒人たちから批判され、身の安全のために転居を余儀なくされた。母親はBBCのラジオ番組「アウトサイド・ソース」のインタビューで、自らも人種差別の被害者であり人種差別が大きな問題であることは理解しているが、問題のパーカーを見て人種差別だとは思わないと話した。その上で、黒人やアフリカ系アメリカ人にとっては、自分は「裏切り者」であり、「金のために息子を売り飛ばした」と見られていると述べた[20][21]。
脚注
- ↑ 総括’09東京ファストファッション Time Out東京、2009年12月24日。
- ↑ 2009ユーキャン新語・流行語大賞(自由国民社サイト内)
- ↑ H&M - H&M企業情報
- ↑ 日本テレビ系『NEWS ZERO』2008年11月8日放送分より
- ↑ “H&Mについて”. . 2009閲覧.
- ↑ 『H&Mが台湾初上陸 1号店オープンに1200人以上が行列』2015年2月15日 Fashionsnap.com
- ↑ H&M大行列、銀座1号店が開業 NIKKEI NET, 2008年9月13日
- ↑ H&M、13日銀座に日本1号店 衣料品各社が対抗策 NIKKEI NET, 2008年9月13日
- ↑ H&M NAVI「H&Mとコム・デ・ギャルソンがコラボ」
- ↑ ヨコハマ経済新聞「『H&M』が9月に横浜ランドマークプラザに出店―神奈川では初」
- ↑ 京都に日本最大のH&M。世界遺産の元離宮二条城に巨大ショッピングバッグ出現 FASHION HEADLINE, 2014年11月14日
- ↑ カジュアル衣料H&M、日本に攻勢 2012年出店倍増 asahi.com 2011年8月11日
- ↑ “<さくら野仙台店>H&M 24日閉店、長町へ”. 河北新報. (2017年5月23日) . 2017閲覧.
- ↑ 中国地方初のH&Mが今秋、広島にオープン FASHION HEADLINE, 2013年4月12日
- ↑ 「H&M」、人種差別の非難に謝罪 「サル」と書かれたパーカーを黒人少年に BBCニュース, 2018年1月9日
- ↑ H&M、「人種差別」との批判受け謝罪 “猿”と書かれたパーカーに黒人少年を起用 ハフポスト, 2018年1月9日
- ↑ 梅山富美子 (2018年1月9日). “H&M差別騒動で炎上「失望した」グラミー賞歌手怒りの契約破棄”. シネマトゥデイ. . 2018年1月14日閲覧.
- ↑ 18.0 18.1 ALEXA TIETJEN (2018年1月11日). “黒人差別問題渦中の「H&M」 コラボアーティストの契約解消宣言相次ぐ”. WWD JAPAN. . 2018閲覧.
- ↑ “H&M ”差別広告” 南アフリカで店舗襲撃も”. NHK (2018年1月14日). . 2018年1月14日閲覧.
- ↑ H&M「サル」パーカーのモデル少年、家族と「安全のため」引越し2018年1月17日 BBC
- ↑ Family of H&M child model moved house 'for security' BBC