「テントウムシ」の版間の差分

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(おもな種)
 
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なお、テントウムシやその体液が大量付着された[[ブドウ]]で作り出した[[ワイン]]の味が変わるので(「テントウムシ汚染」と呼ばれる)、テントウムシの大発生はワインの商品価値に悪影響を及ぼしている<ref>[http://www.thedrinksbusiness.com/2012/02/ladybird-contamination-on-the-rise/ Ladybird Contamination on the Rise]The Drinks Business、2012年2月2日</ref><ref>[http://www.swissinfo.ch/jpn/テントウムシの襲来/6979358 テントウムシの襲来]swissinfo.ch、2008年10月15日</ref>。
 
なお、テントウムシやその体液が大量付着された[[ブドウ]]で作り出した[[ワイン]]の味が変わるので(「テントウムシ汚染」と呼ばれる)、テントウムシの大発生はワインの商品価値に悪影響を及ぼしている<ref>[http://www.thedrinksbusiness.com/2012/02/ladybird-contamination-on-the-rise/ Ladybird Contamination on the Rise]The Drinks Business、2012年2月2日</ref><ref>[http://www.swissinfo.ch/jpn/テントウムシの襲来/6979358 テントウムシの襲来]swissinfo.ch、2008年10月15日</ref>。
 
== おもな種 ==
 
=== 肉食 ===
 
; [[ナナホシテントウ]] {{Snamei||Coccinella septempunctata}}
 
: [[アフリカ]]、[[ヨーロッパ]]、[[アジア]]まで広く分布する代表的なテントウムシ。体長8mmほどで、翅は赤く、和名のとおり7つの黒い紋がある。個体間で模様の変異はない。アブラムシや[[ハダニ]]を食べるが、餌不足に陥った幼虫は共食いをすることもある。
 
; [[ナミテントウ]] {{Snamei||Harmonia axyridis}}
 
: 「テントウムシ」という和名を使用したこともある。アジアに広く分布し、ナナホシテントウと並ぶ代表的な種類。体長7mmほど。ナナホシテントウとはちがい、黒地に2つの赤い紋、黒地に4つの赤い紋、赤や黄色に多くの紋、赤や黄色の無地など体色に多くの変異がある。アブラムシを捕食する。
 
; ダンダラテントウ {{Snamei||Cheilomenes sexmaculata}} ([[シノニム|syn.]] {{snamei|Menochilus sexmaculatus}})
 
: 体長5mmほどで、ナミテントウよりやや小型。翅は黒地に赤い紋が4つあるが、ナミテントウにも似た模様のタイプがいるので区別がつけにくい。アブラムシを捕食する。
 
; カメノコテントウ {{Snamei||Aiolocaria hexaspilota}}
 
: 体長12mmほどの大型のテントウムシ。翅は黒地に橙色の模様があるが、これが[[カメ]]の[[甲羅]]の模様にも似ていることからこの和名がある。[[クルミハムシ]]の幼虫を捕食する。
 
; ヒメカメノコテントウ {{Snamei||Propylaea japonica}}
 
: 和名のとおり、カメノコテントウに似た模様があるが、体長は4mmほどしかない小型の種類。翅の模様にはいくつかの変異がある。アブラムシを捕食する。
 
; ジュウサンホシテントウ {{Snamei||Hippodamia tredecimpunctata timberlakei}}
 
: オレンジ色の翅に和名の通りの13個の黒い紋がある。また一般的なテントウムシと異なり[[ハムシ]]のような縦に長い体を持つ。アブラムシを捕食する。
 
; ウンモンテントウ {{Snamei||Anatis halonis}}
 
: 体長10mmほどの大型のテントウムシで、オレンジ色の翅に周囲が白い黒の紋を持つ。アブラムシを捕食する。
 
; オオテントウ {{Snamei||Synonycha grandis}}
 
: 体長12mmほどの大型のテントウムシだが、生息数は少ない。アブラムシを捕食する。
 
; [[ベダリアテントウ]] {{Snamei||Rodolia cardinalis}}
 
: 体長4mmほどの小型のテントウムシ。翅は赤く、黒い模様がある。[[ワタフキカイガラムシ]](イセリアカイガラムシ)を捕食する。[[オーストラリア]]に分布するが、ワタフキカイガラムシ駆除のために[[日本]]に持ちこまれ、そのまますみついた[[外来種]]である。
 
; アカホシテントウ {{Snamei||Chilocorus rubidus}}
 
: カイガラムシを捕食する。 [[ウメ]]の木に良く付いている。学名の {{Snamei|rubidus}} は[[ラテン語]]で暗赤色の意。
 
; ベニヘリテントウ {{Snamei||Rodolia limbata}}
 
: カイガラムシを捕食する。和名の通り黒の翅に縁が紅色の模様を持つ。
 
; アミダテントウ {{Snamei||Amida tricolor}}
 
: 学名の {{Snamei|tricolor}} (三色)の名の通り、茶色・黄色・黒の3色による特徴的な翅の模様を持つ。アオバハゴロモを捕食する。
 
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ファイル:BIEDRONA.JPG|[[ナナホシテントウ]]
 
ファイル:Harmonia axyridis.jpg|[[ナミテントウ]]
 
ファイル:Menochilus sexmaculatus.jpg|[[ダンダラテントウ]]
 
ファイル:Rodolia cardinalis.jpg|[[ベダリアテントウ]]
 
ファイル:カメノコテントウ (Aiolocaria hexaspilota).jpeg|カメノコテントウ
 
</gallery>
 
 
=== 菌類食 ===
 
; キイロテントウ {{Snamei||Illeis koebelei}}
 
: 体長5mmほど。胸部は白地に2つの黒い斑点があるが、翅は和名どおり黄色一色である。[[うどんこ病]]菌などを食べる。
 
; シロホシテントウ {{Snamei||Vibidia duodecimguttata}}
 
: 体長4mmほど。和名どおり黄褐色の地に白っぽい斑点がある。うどんこ病菌などを食べる。
 
; クモガタテントウ {{Snamei||Psyllobora vigintimaculata}}
 
: 体長2.5mmほど。黒・茶・白の斑模様。うどんこ病菌などを食べる。アメリカなどからの帰化種とされる。
 
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ファイル:Coccinellidae - Vibidia duodecimguttata-1.JPG|[[シロホシテントウ]]
 
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=== 草食 ===
 
テントウムシ科のうち[[マダラテントウ亜科]]のみが草食である。草食のテントウムシは肉食の種類に比べて[[鞘翅]]に毛が多いため、[[つや]]がないのが特徴である。
 
; [[ニジュウヤホシテントウ]] {{Snamei||Henosepilachna vigintioctopunctata}}
 
; オオニジュウヤホシテントウ {{Snamei||Henosepilachna vigintioctomaculata}}
 
: この2種は体長7mmほどで、淡い褐色の地に名のとおり28個の黒い点がある。和名のとおりオオニジュウヤホシテントウのほうが少し体が大きく、黒点も大きい。集団で[[ナス]]や[[ジャガイモ]]の葉を食べるため、害虫として扱われる。オオニジュウヤホシテントウはマダラテントウの中でもっとも寒冷地に進出しており、[[沿海州]]周辺まで分布している。一方、ニジュウヤホシテントウは北海道以南から[[東南アジア]]まで分布している。この2種は益虫である肉食性のテントウムシと違って、ナスやジャガイモなどの葉を食害するため、別名「テントウムシ'''ダマシ'''」ともいわれる。しかし、[[テントウダマシ科]]というテントウムシ科とは別の分類群が存在するので注意が必要である。
 
; ヤマトアザミテントウ {{Snamei||Henosepilachna niponica}}
 
; エゾアザミテントウ {{Snamei||Henosepilachna pustulosa}}
 
; ルイヨウマダラテントウ {{Snamei||Henosepilachna yasutomii}}
 
: オオニジュウヤホシテントウに近縁な日本[[固有種]]で、それぞれ[[アザミ]]などの[[キク科]]、[[ルイヨウボタン]]などの[[メギ科]]植物の葉を食べる。関東地方などでは害虫化している例もある。本州と北海道の大部分にはいずれかが生息しているが、九州と四国からはこれまで見つかっていない。
 
; ジュウニマダラテントウ {{Snamei||Henosepilachna boisduvali}}
 
: [[沖縄諸島]]に見られ、[[ウリ科]]植物の葉を食べる。
 
; ミナミマダラテントウ {{Snamei||Henosepilachna pusillanima}}
 
: [[与那国島]]などの[[八重山諸島]]に見られる。最近南方から侵入・定着したと考えられる。
 
; トホシテントウ {{Snamei||Epilachma admirabilis}}
 
: 体長8mmほどで、北海道南部以南の日本全国と[[中国]]に分布する。[[カラスウリ]]などのウリ科植物の葉を食べる。巻き蔓の間に産卵する。
 
; ツシママダラテントウ {{Snamei||Epilachna chinensis tsushimana}}
 
: シナマダラテントウの[[亜種]]とされ、日本では対馬でのみ見られる。[[アカネ科]]植物の葉を食べる。
 
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ファイル:Henosepilachna vigintioctopunctata 01.jpg|[[ニジュウヤホシテントウ]]
 
ファイル:Epilachna yasutomii.jpg|[[ルイヨウマダラテントウ]](東京西郊型エピラクナ)
 
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== 脚注 ==
 
== 脚注 ==

2018/9/28/ (金) 11:50時点における最新版


テントウムシ(天道虫・紅娘・瓢虫)は、コウチュウ目テントウムシ科(テントウムシか、学名: Coccinellidae)に分類される昆虫の総称。鮮やかな体色の小型の甲虫である。和名の由来は太陽に向かって飛んで行くことから、太陽神天道からとられた。

概要

成虫の体長は数mm - 1cm程度の小型の昆虫である。成虫は半球形の体型で、触角は短い。体は黒・赤・橙・黄・褐色など鮮やかな色で彩られ、体の模様も種類間で変異に富んでいる。日本では赤や黄の地色に黒い水玉模様、あるいは黄に白の水玉模様のものが多く、その多くはそれらの斑点の数で命名されている。

幼虫・成虫とも強い物理刺激を受けると偽死(死んだふり)をし、さらに関節部から体液(黄色の液体)を分泌する。この液体には強い異臭と苦味があり、外敵を撃退する。体色の鮮やかさは異臭とまずさを警告する警戒色といえる。このためなどはテントウムシをあまり捕食しないが、それでも寄生バチ寄生バエ菌類などの天敵が存在する。ニジュウヤホシテントウの幼虫はカマキリに捕食されることもある。

食性は種類によって大きく異なり、アブラムシカイガラムシなどを食べる肉食性の種類、うどんこ病菌などを食べる菌食性の種類、ナス科植物などを食べる草食性の種類の3つに分けることができる。このため農作物にとっては益虫害虫に大きく分かれることとなる。肉食性の種は近年では農作物の無農薬化を行う際、農薬代わりに使用される生物農薬の一つとして活用されている。

生活環

甲虫の仲間なので、 - 幼虫 - - 成虫という完全変態をおこなう。

成虫は交尾のあとに、食物の近くに数十個ほど固めて産卵を行う。孵化した幼虫はがなく、腹部が後方へ伸びる。さらに体には突起やとげをもち、成虫とは似つかない体型をしている。

甲虫類の中には幼虫と成虫で食性がちがうものもいるが、テントウムシ類は幼虫も成虫も同じ食物をとることが多い。なお、肉食性の種類の場合、餌が尽きると他の幼虫や蛹を共食いすることもある。

充分に成長した終齢幼虫は植物の裏などで蛹になる。蛹は楕円形で、翅こそ短いものの成虫の形に近い。腹部の先で壁面にくっつき、落下しないようになっている。蛹から羽化したばかりの成虫の翅は黄色だが、翅が固まるにつれ、特徴的な模様が現れる。

成虫はからまでよく見られる。トホシテントウなどは幼虫で越冬するが、多くのテントウムシは成虫で越冬する。越冬の際は石や倒木などの物かげで、数匹 - 数十匹の集団を作る。

人間との関わり

ナミテントウやナナホシテントウなど捕食性の種は、農作物に被害を与えるアブラムシを餌にしている。このため彼らは、生物農薬として利用されているが、そのフィールドの捕食対象を食べ尽くすと飛翔して移動してしまうため、定着性に問題があった。農業の世界では、飛べないテントウムシの出現が望まれていたが、名古屋大学が飛べないテントウムシを人工的に作り出すことに成功した。遺伝子組み換えではなく、RNA干渉という手法でを小さくしているため、このテントウムシの幼虫は、通常に翅が形成され、戸外に放しても遺伝子汚染の心配がない利点がある[1][2][3]

柑橘類の害虫ワタフキカイガラムシ(Icerya purchasi)を捕食するベダリアテントウは、生物農薬、益虫としてテントウムシが利用される場合の代表例として、図鑑等でも紹介される。

また、成田市千葉県立成田西陵高等学校では、掃除機の吸い込み口に網を付けた装置でテントウムシを集め、接着剤で背中の羽を接着して飛べなくする方法で生物農薬に使う研究がされ、2013年11月の全国農業協同組合中央会主催の「全国高校生みんなDE笑顔プロジェクト」で優勝を成し遂げた。接着剤は簡単に取れ、近在に生息する個体を使うことから生態への影響が少ない点が挙げられ、タヒチ政府からの引き合いもあるとともに、特許の出願が計画されている。[4]

なお、テントウムシやその体液が大量付着されたブドウで作り出したワインの味が変わるので(「テントウムシ汚染」と呼ばれる)、テントウムシの大発生はワインの商品価値に悪影響を及ぼしている[5][6]

脚注

参考文献

関連項目

外部リンク