西ノ島町
西ノ島町(にしのしまちょう)は、島根県隠岐郡の町。隠岐諸島の西ノ島に所在する。面積56.05平方キロメートル、人口3,161人(平成24年5月1日現在)。隠岐郡内では隠岐の島町に次いで2番目に大きな町である。
Contents
地理
島は山がちで耕地は少ない。南岸は島前3島に囲まれた穏やかな海で、良港が多い。北岸は荒海であるが、良漁場である。 1915年(大正4年)島中央の地峡部を南北に貫く船引運河が開削され、島南部の港から北部の漁場へ簡単に行けるようになった。南岸の浦郷港は隠岐最大の漁業基地となっている。
歴史
古代の隠岐国知夫(ちぶり)郡三田(みた)郷の地である。延喜式神名帳の名神大社である由良比女神社をはじめ、式内社が多い。
- 近世 - 北前船の風待港として栄える。
- 1904年(明治37年)5月1日 - 隠岐国にて島嶼町村制施行。知夫郡(ちぶぐん)浦郷村(西側)は単独で自治体を形成。美田村・別府村・宇賀村(東側)は黒木村となる。
- 1915年(大正4年)5月 - 両村の境界部に船引運河が開通。
- 1946年(昭和21年)11月3日 - 浦郷村が町制施行して浦郷町となる。
- 1957年(昭和32年)2月11日 - 浦郷町と黒木村が合併して西ノ島町が成立。
- 1969年(昭和44年)4月1日 - 隠岐諸島内4郡が合併して隠岐郡となり、隠岐郡西ノ島町となる。
- 2005年(平成17年)4月23日 - 西ノ島大橋が開通。
離島ブーム
離島ブームとは、内地からの離島振興や離島観光地化の影響により、1967年(昭和42年)頃に離島への観光客が増加したことである[1]。さらに、隠岐諸島は1963年(昭和38)年に国立公園(大山隠岐国立公園)に指定された。それ以前の隠岐の人々にとって海は日常的なものであり、観光の対象やとりわけ美しいと感じる景観ではなかった。しかし、国立公園への指定をきっかけに突然観光客が激増したことで、旅館、民宿、土産物屋は無論のこと一般の人々も魚を売り、民宿を手伝い大いに潤った。国賀海岸では、国賀祭も始まり、皇太子来町のきっかけにもつながった[2]。1968年(昭和43年)には離島の観光ブームによる、観光客や釣り客、島民のおかげで隠岐汽船の経営は黒字になった[3]。
人口
西ノ島町(に相当する地域)の人口の推移 | |
総務省統計局 国勢調査より |
教育
- 西ノ島町立西ノ島小学校
- 西ノ島町立西ノ島中学校
交通
西ノ島#交通の項も参照のこと
航路
西ノ島を発着する航路は島西部の別府港を起点としており、ここから隠岐汽船が本土の七類港(島根県松江市)および境港(鳥取県境港市)へと、フェリー(フェリーくにが、フェリーおき、フェリーしらしま)および高速船(レインボージェット)を運行している[4]。
上記航路は島前内各島にも寄港するが本数が少ないため、同じく別府港から隠岐観光が島前の内海内で島前内航船を運行し、フェリーどうぜんおよび内航船いそかぜの2隻で中ノ島の菱浦港および知夫里島の来居港とを結んでいる。この内航船は一部隠岐汽船の本土行航路とも接続している[5]。
バス
西ノ島町営バスが浦郷・別府間を中心に島内を運行している。バス便は一部本土行航路との接続がある[6]。
観光
自然
- 国賀海岸 - 国の名勝および天然記念物[7]。
- 摩天崖 - 国賀海岸にある高さ250メートルを超える日本最大級の断崖。一生に一度は訪れたい遊歩百選と夕日百選に認定。
- 通天橋(国賀浜) - 国賀海岸の中心にある。海に大きくせり出した巨大な岩の架け橋。大自然がつくりだした造形の妙を見られる。
- 観音岩 - 国賀海岸の奇岩のなかでもひときわ細長くそびえたっている。会場からは百済観音に見えることから観音岩と呼ばれ陸上からは火が灯ったろうそくに見えることからローソク岩とも呼ばれる。夕日百選に認定。
- 明暗の岩屋 - 長さ250mに及ぶ自然が作り出した天然の洞窟(海浸食洞窟)[8]。
- 外浜海岸 - 西ノ島で唯一の砂浜ビーチ。透明度が高く、魚など生き物が豊富である。
展望所
- 赤尾展望所 - 摩天崖と通天橋を一望できる隠岐を代表する世界一級の景勝地。約7kmにわたって海食断崖や海蝕洞などの浸食海岸地形が続いている。夕日百選に登録。
- 鬼舞展望所 - 島前カルデラ(島前湾内)と日本海を見渡せる絶景スポット。周辺は牧歌的風景が広がる。
運河
- 船引運河 - 西ノ島中央部に位置する、内海と外海を結ぶ運河。1915年(大正4年)開削。
旧跡・神社
- 焼火神社 - 岩穴にはまり込むように建てられた社殿は隠岐最古の神社建築。本殿・通殿・拝殿から成る社殿は国の重要文化財に指定されており、海上守護神として信仰を集める。
- 黒木御所 - 元弘2年(1332年)に後醍醐天皇が配流から脱出までの1年余りを過ごしたといわれる伝承の地。西ノ島を代表する行在所跡。
- 由良比女神社 - 隠岐の国一の宮に定められた名神社で海上守護神として島民の信仰を集めている。漁業の神様由良比女命とイカにまつわる伝承がなる神社。
文化
神社
神社名 | 所在地 | 創建 | 主祭神 |
---|---|---|---|
焼火神社(たくひじんじゃ) | 焼火山 | 一条天皇の時 | 天照大神 |
799年以前 | 比奈麻治比賣命 | ||
真気命 | |||
別府 | 後醍醐天皇 | ||
別府 | |||
美田尻 | 901年 | 誉田皇命・足仲彦命・息長足媛命 | |
大山 | 綿津見神 | ||
大山神社(おおやまじんじゃ) | 大津 | 大山祀命 | |
浦郷 | 1200年頃 | 大山咋命 | |
小向 | 伊邪那岐命・素戔鳴雄命 | ||
波止 | 素戔鳴雄命 | ||
由良比女神社(ゆらひめじんじゃ) | 浦郷 | 由良比女命 | |
赤ノ江 | 句々廼馳命・軻遇突知命・金山彦・埴山姫命・草野姫 | ||
珍崎 | 聖大神・事代主命 | ||
三度 | 1703年以前 | 猿田彦大神 |
芸能
行事
- 精霊船(シャーラ船) - 毎年8月16日早朝に行われる送り盆の伝統行事。2004年(平成16年)記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財に選択[11]。木や竹の骨組みに葦や藁を巻きつけて作られる船:精霊(シャーラ)船に先祖の霊と供物を乗せて海へと見送る。船は各集落ごとに住民が協力しながら数か月かけて制作する。マストは盆旗(ぼんばた)と呼ばれる色紙によって、色鮮やかに飾りつけられる[12]。
方言
隠岐の方言には島それぞれ独特のアクセントがあり、西ノ島内でも地域別に違いがある。[13]
料理
名称 | 写真 | 説明 |
---|---|---|
まき | 5月5日の節句に作るもち米、粳米を混ぜて挽いたものを水でこねて、カタリの葉(サルトリイバラの葉)で包んでから蒸したもの。[13] | |
こじょうい(なめみそ) | 隠岐の代表的な副食兼調味料。夏の終わり頃に炒り大豆を挽き割ったものと、蒸した小麦を混ぜ合わせ、麹を入れて発酵させてつくる。[13] | |
ヤキメシ | 焼きおにぎりにこじょうい(なめみそ)をつけたもの。 | |
西ノ島西部にある、赤ノ江地区に伝わる料理で、地元の人は「シャクネ巻き」と呼んでいる。軽くあぶった岩海苔の上にまんべんなくご飯を敷き、しゃもじでしょう油を塗って、「スズ」と呼ばれる巻簀で巻いたシンプルな海苔巻き。[14] | ||
えりやき鍋 | 漁師たちが船上で食べていた賄食。シイラを唐辛子や玉ねぎを入れ甘辛く煮た鍋。「えりやき」とは魚を「炒める」が方言で「える」になったもの。[15] | |
おさかなスリーミーバーガー | 西ノ島のご当地バーガー。西ノ島で採れた野菜と、西ノ島で採れたアジやアゴ(飛び魚)、白イカのすり身をパテに使用し、町内で焼き上げたバンズと手作りのソースが特徴。[15] |
姉妹都市
出身者
出典
- ↑ 西ノ島町小中学校教員会 『ふるさと 隠岐 西ノ島』 西ノ島町小中学校教員会、1995年3月、12頁。
- ↑ 小坂勝昭 『離島「隠岐」の社会変動と文化ー学術的研習ー』 株式会社御茶の水書房、2002年2月5日、143頁。
- ↑ 隠岐汽船株式会社 『隠岐汽船創立百周年記念誌ー百年の航跡』 隠岐汽船株式会社、1995年10月1日、90頁。
- ↑ http://www.oki-kisen.co.jp/timetable/ 隠岐汽船HP 2018年4月16日閲覧
- ↑ http://www.town.nishinoshima.shimane.jp/files/original/20180119085419202.pdf 西ノ島町HP内「島前内航船【いそかぜ】【フェリーどうぜん】時刻表」 2018年4月16日閲覧
- ↑ http://www.town.nishinoshima.shimane.jp/files/original/20180208101911302.pdf 西ノ島町HP内「町営バス・時刻表」 2018年4月16日閲覧
- ↑ “観光バスガイドマップ”. 隠岐観光. . 2018閲覧.
- ↑ “観光船ガイドマップ”. 隠岐観光. . 2018閲覧.
- ↑ “島根県神社庁 隠岐郡”. . 2018閲覧.
- ↑ 西ノ島町町史編纂委員 『隠岐西ノ島の今昔』 西ノ島町長 岡田晶平、1995年4月、367-378頁。
- ↑ “国指定文化財等データベース:隠岐西ノ島のシャーラブネ”. 文化庁. . 2018閲覧.
- ↑ “西ノ島満喫☆観光 【イベント】:精霊船(しゃーらぶね)”. 西ノ島町. . 2018閲覧.
- ↑ 13.0 13.1 13.2 隠岐 西ノ島の今昔、西ノ島町、1995年
- ↑ “シマネスク36 美味・お国自慢”. . 2018-4-15閲覧.
- ↑ 15.0 15.1 “西ノ島町 2014年 町勢要覧 (PDF)”. 西ノ島町役場 (2014年). . 2018閲覧.
外部リンク