スピルリナ

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タブレット状のスピルリナ

スピルリナ(Spirulina)は、藍藻ユレモ目の幅 5-8μm、長さ 300-500μm ほどの「らせん形」をした濃緑色の単細胞微細藻類。約30億年前に出現した原核生物の仲間で、現在でも熱帯地方のに自生し、フラミンゴ大地溝帯に点在する強いアルカリ性の湖に育つ種のものを主食としている。

スピルリナという名前は、ラテン語の“ねじれた”“らせん形の”を意味する “Spira”(英語ではSpiral)に由来する。ただし色素の原料や健康食品として利用される「スピルリナ」の多くはスピルリナ属(Spirulina)ではなく、近縁のアルスロスピラ(オルソスピラ)属(Arthrospira)の藍藻、特に A. platensisA. maxima である。以前はこれらの種がスピルリナ属に所属していたために「スピルリナ」の呼称が定着し、属の変遷後も使用されている。

生息環境

スピルリナは古来アフリカや中南米の湖に自生する熱帯性の藻類で、現地の人々の貴重な食糧源として利用されてきた。水温30-35℃の無機塩類濃度の高いアルカリ性(pH9-11)の水を好み、陸上植物と同じように酸素発生型光合成を行い増殖する。

食経験

フランスの P. Dangard らが、アフリカ中央部のチャド湖の東約50kmにある村の市場で、チャド湖で収穫されたスピルリナの乾燥物が「ダイエ」という名前で売られていることを、1940年に紹介し、世界の注目を集めた。1967年11月には、エチオピアで開かれた国際応用微生物会議で、「スピルリナはタンパク質が豊富であり、将来の食糧源として注目されるべきである」と報告された。

生産

食品としての工業的生産は、日本の大日本インキ化学工業(現DIC)が1978年にタイのバンコク郊外に人工池による培養工場を建設して販売したのが世界最初とされている。現在は亜熱帯から熱帯地方の各国で培養・生産されている。培養液からの分離・濃縮工程では、スピルリナの大きさが0.3 - 0.5mmと大きいため、0.003 - 0.01mm程度のクロレラなどの生産で用いられる遠心分離機を使用する必要がなく、スクリーンフィルター(ろ過)で脱水濃縮される。乾燥工程後、粉末状またはタブレットなどに成型された形で生産されている。

応用

乾燥したスピルリナは、タンパク質を約60%含み、ビタミン、ミネラル、多糖類(食物繊維)、クロロフィルなどを含む。中でもカロテノイド系色素のβ-カロテンゼアキサンチンを多く含み、その抗酸化作用が注目されている。クロレラと比較し、β-カロテン含量が多く、消化吸収性が良いのが特徴である。なお、これを主食とするフラミンゴの体色が赤いのは沈着したβ-カロテンのためである。

国立健康・栄養研究所は、「ヒトでの有効性について十分なデータが見当たらない」としている[1]。下痢や鼓腸、胃のむかつき、浮腫などが起こることがある。妊娠中・授乳中の安全性については十分な情報がないため摂取は避けたほうがよい。スピルリナ類は細菌や重金属 (水銀、カドミウム、鉛、ヒ素) 、放射性の2価または3価のイオンを含むことがある。またミクロシスチンを含むものは肝毒性があり摂取するのはおそらく危険である。スピルリナ含有製品摂取との因果関係が疑われる健康被害が報告されている。薬剤過敏症や炎症を起こす報告が存在する[1]

橙黄色のカロテノイドのほか、緑色の葉緑素(クロロフィルa)、青色のフィコシアニンの3種の色素を含む。フィコシアニンは藍藻類の名前の由来ともなっている鮮やかな青色を呈するため、天然の食用色素として冷菓・乳製品・粉末ジュース・飲料・ガムなどに利用されている。

粉末状またはタブレット以外では、株式会社タベルモが独自に開発した、生食品質を担保する培養技術と急速冷凍技術の二つを用いることで、日本で唯一、生食ができるタイプの商品を開発・販売している[2]

脚注

外部リンク

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