ボクシング

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別名 拳闘
競技形式 正方形のリングを使用。ラウンド制。
発生国 古代ギリシャ
発生年 不明
創始者 不明
主要技術 拳(ナックル)による打撃
オリンピック競技 有り
公式サイト 国際ボクシング協会 (AIBA)
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ボクシング: boxing)は、拳にグローブを着用しパンチのみを使い、相手の上半身前面と側面のみを攻撃対象とする格闘スポーツ拳闘(けんとう)ともいう。ボクシングに似た競技はフランスサバットのほか、タイムエタイおよびムエタイをベースにした日本キックボクシングシュートボクシング等があり、それらと区別するための俗称として国際式ボクシングと呼ばれることもある。

歴史

古代ボクシング

紀元前4000年ごろの古代エジプト象形文字から軍隊で使われていたことが判読されており、クレタ島紀元前3000年ごろのエーゲ文明の遺跡からも、ボクシングの図が書かれた壺が発見されている。

古代ギリシア語では握りしめた拳をPUGMEといい、それからPUXOS(箱)となった。古代オリンピックでは第23回大会から正式種目となり、オノマストスが月桂冠をうけた。この時代は全裸でオリーブ・オイルを塗り、拳には鋲を皮のバンテージのような物で包んだグローブのような物を着用、腕や肘でも攻撃できたようだ。この当時はラウンドは無く、どちらかが戦闘不能、またはギブアップ(右手の人差し指を天に突き上げるとギブアップになったらしい)で勝負がつく。この競技は第38回大会まで続けられた。この競技からパンクラチオンが生まれた。

ローマ時代に入ってギリシア語から: PUGILATUS(拳での戦い)、: PUGILISM(「ピュージリズム」)の言葉が生まれている。奴隷同士が鉄の鋲を打ち込んだ武器のカエストゥスを拳に着けて、コロッセウムなどで見せ物として行われるようになり、観客を喜ばせるためにどちらかが死ぬまで戦わせた。時には床に描かれた円の中で戦わせることもあったが、これが現在のリングの語源となっている。しかし西暦393年に残忍すぎたため禁止となり、ローマで再びボクシングが盛んになるのは17世紀後半になってからである。

436年西ローマ帝国が滅びると共に姿を消した。

中世ボクシング

正式な名称ではないが、ここでは仮に「中世ボクシング」と呼ぶ。

イタリアイギリスオランダなどヨーロッパを中心に、護身として、レクリエーションとして細々と行われていたようだが、剣による護身が一般的であったため定着しなかった。13世紀ごろのイタリアまたはイギリスの神父が「ボクシング」と名付け、近所の若者に教えたことが「ボクシング」の名称の始まりとする説もある。

近代ボクシング

剣の携帯が一般的でなくなりだした、16世紀前半ごろから、賞金をかけたベアナックル・ボクシングの形で徐々にイギリスで浮上の兆しを見せ始める。

現在のボクシングの始祖といわれるのは、1695年にイギリスのオックスフォードシア州テーム村に生まれたジェームス・フィグ (James Figg) である。彼は、レスリングフェンシングや棍棒術を得意としており、1718年にロンドンで「ボクシング・アカデミー」を設立してボクシングを教え始めた。彼が行った当時の「ボクシング」とはベアナックル(素手)で行い、蹴りや投げ、締め、噛み付き、目つぶしだけでなく、フェンシングや棍棒術も含まれたものだった。フィグ自身も教える傍ら自ら「プライズ・ファイター」(つかまれないように頭髪を剃っていた)として腕自慢達を倒して賞金を稼ぎ、護身術としても優れていると認められたボクシングとともに名声を得てイギリス初のチャンピオンとなった。1730年に36歳で引退し、1734年に39歳で死去した。

フィグの後継者であったジャック・ブロートン (Jack Broughton) が、自ら保持するタイトルの防衛戦の時、相手を殺してしまったために、「ボクシングを普及させるのはこのような危険は廃さねばならない」と考え、1743年に近代ボクシング初となる7章のルールブック「ブロートン・コード」(Broughton's Rule) を発表した。その内容はベルト以下への打撃の禁止・腰より下の抱込みの禁止・倒れた相手への攻撃禁止、ダウン後30秒以内に立つことができなければ負け、リング(直径25フィートの円形、硬い土の上)などである。練習とエキシビション試合の怪我防止用にマフラーの名のパッド入りグローブを開発した。

しかし、実際の試合にはグローブを用いることはなく相変わらず素手に近い形で行われ、1754年には死者が多いためイギリスでボクシングが禁止された。このため、ボクシングの試合はフランスやベルギーなどで行われたが、貴族や富裕層の支持は根強く1790年にはイギリスでボクシングが再開され、1811年のイギリス人チャンピオン、トム・クリブ対アメリカ合衆国トム・モリノーの再戦には2万5千人もの観衆が訪れるほどとなった。

1814年に元チャンピオンのジョン・ジャクソンが英国ピュジリスト保護協会を設立し、1838年に29条からなる「ロンドン・プライズリング・ルールズ」を発表した。その内容は、ベアナックルで行い、蹴り技の禁止・頭突きの禁止・目玉えぐりの禁止、ダウン者に30秒の休憩に加え所定の位置に戻るまでに8秒間の猶予を与えるなどであった。

このころのボクシングはダウンごとに1ラウンドとし50ラウンドにも及ぶ場合があり、序盤は拳や手首を痛めないように用心しながら、徐々に打ち合った。

1856年、フランスで八百長疑惑によりボクシングなどの興行がパリで全面禁止された。

1867年にロンドン・アマチュア・アスレチック・クラブのジョン・グラハム・チャンバースはルール保証人の第9代クインズベリー侯爵ジョン・ショルト・ダグラスの名を冠した、12条からなる「クインズベリー・ルール」(Marquess of Queensberry Rule) を発表した。これにより、投げ技が禁止されたほか、3分1ラウンドとしラウンド間に1分間の休憩をとるラウンド制、グローブの着用、ダウンした者が10秒以内に立ち上がれない場合はKO負けとすることなどが定められ、現在に通じるボクシングルールが確立した。定着は遅れ以前の「ロンドン・プライズリング・ルールズ」についても1889年7月にジョン・ローレンス・サリバンがジェイク・ロドリゲスと行った防衛戦まで続いた。

クインズベリー・ルールにより行われた最初の公認世界ヘビー級タイトルマッチは、1892年9月7日、ジョン・ローレンス・サリバン(ジョン・L・サリバン)対ジェームス・J・コーベット戦である。コーベットは当時のスタイル「スタンド・アンド・ファイト」ではなく、相手から距離をとってパンチをかわし、左の軽いジャブをあてる「卑怯者の戦法」といわれたスタイルでサリバンを21回にKOし勝利をおさめた。

現在のように世界タイトルマッチのラウンド数の規定はなく、プロモーターや現地のコミッション的組織、対戦選手陣営同士の合意などで初期はその都度変わっており、初期の名選手で黒人初のヘビー級チャンピオンのジャック・ジョンソン1915年4月5日の防衛戦では全45ラウンド制(※結果は挑戦者の26回KO)だった一方、その2回前の1913年12月19日の防衛戦では、全10ラウンド制(※結果は10ラウンドPTSドロー)でバラバラであったが、自身の防衛戦を全て全10ラウンド制で行ったジーン・タニーの引退後の1930年6月12日に行われた空位の世界ヘビー決定戦以降は、世界タイトルマッチは一部の例外を除きほぼ全15ラウンド制で行われるようになったため、1930年代の半ば前には慣例として『世界タイトルマッチ15回戦制』が事実上成立し、1982年11月13日以降の一連のリング禍事件まで続いた。


ボクシングの試合・スパーリングを挑んだり、実際に対戦しても「スポーツや格闘技である以上」は、それが違法性阻却事由となり決闘罪は成立し得ない。(「決闘罪ニ関スル件」を参照)

関連書籍

  • 『ボクシングはなぜ合法化されたのか―英国スポーツの近代史』松井良明 平凡社 2007年 ISBN 978-4-582-83354-6

試合形式

アマチュア

アマチュアボクシングでは、シニア(18歳以上)では1ラウンドを3分間、ジュニア(高校生)では1ラウンドを2分とし、ラウンド間に1分のインターバルをおく。ラウンド数は、日本国内では3ラウンドでおこなわれる形式が一般的であるが、国際試合では1990年代後半から2000年代前半にかけて、1ラウンドを2分間に短縮して5ラウンド制または4ラウンド制で行われるなどした。日本国内でも、全日本選手権とそのブロック予選では2分4ラウンド形式で試合がおこなわれた時期がある。しかし、国際アマチュアボクシング連盟では2009年1月より3分3ラウンド制に統一され、これに従って国内でも3分3ラウンド制に統一された。

選手の服装

アマチュア

アマチュアボクシングでは、選手はトランクス、ランニングシャツ、シューズ、グローブを着用する。ヘッドギアの着用は2013年より禁止されており、プロボクシング同様、選手は頭部を露出した状態で試合を行う。グローブの重さはシニア(18歳以上)の選手は全階級を通じて10オンス、ジュニア(高校生)はライトウェルター級までの選手は10オンス、ウェルター級以上の選手は12オンスである。負傷防止のためマウスピースとファウルカップを着用する。

階級

近代ボクシングが発祥したイギリスはヤード・ポンド法を用いることからボクシングの階級もポンドによるため、キログラムでは中途半端な数字だが、アマチュアの階級はキログラムを単位として区分されている。

本体級よりやや軽い級に「ライト」、やや重い級に「スーパー」が添えられて呼ばれるものもある。

アマチュア

国際ボクシング連盟が定める階級は以下の通り(AIBA Technical and Competition rules(PDF))。なお、エリート部門は2010年より改められ、男子はフェザー級が廃止され、それより下の3階級の上限が変更、男女とも10階級となった。

 年齢:Elite(19歳以上40歳以下)

    Youth(17歳および18歳)

    Junior(15歳および16歳)

 体重:

階級名称 男子Elite

Youth

女子Elite

Youth

男女Junior
スーパーヘビー級 91kg超 --- ---
ヘビー級 81kg超 91kgまで 81kg超 80kg超
ライトヘビー級 75kg超 81kgまで 75kg超 81kgまで 75kg超 80kgまで
ミドル級 69kg超 75kgまで 69kg超 75kgまで 70kg超 75kgまで
ライトミドル級 --- --- 66kg超 70kgまで
ウェルター級 64kg超 69kgまで 64kg超 69kgまで 63kg超 66kgまで
ライトウェルター級 60kg超 64kgまで 60kg超 64kgまで 60kg超 63kgまで
ライト級 56kg超 60kgまで 57kg超 60kgまで 57kg超 60kgまで
フェザー級 --- 54kg超 57kgまで 54kg超 57kgまで
バンタム級 52kg超 56kgまで 51kg超 54kgまで 52kg超 54kgまで
ライトバンタム級 --- --- 50kg超 52kgまで
フライ級 49kg超 52kgまで 48kg超 51kgまで 48kg超 50kgまで
ライトフライ級 49kgまで 48kgまで 46kgまで
  • (参考)国内大会での階級
階級名称 体重(男子) 体重(女子) 備考
スーパーヘビー級 91kg超 (設定なし)
ヘビー級 81kg超 91kgまで 80kg超 86kgまで
ライトヘビー級 75kg超 81kgまで 75kg超 80kgまで
ミドル級 69kg超 75kgまで 70kg超 75kgまで
ライトミドル級 (設定なし) 66kg超 70kgまで
ウェルター級 64kg超 69kgまで 64kg超 66kgまで
ライトウェルター級 60kg超 64kgまで 60kg超 63kgまで
ライト級 57kg超 60kgまで
フェザー級 (設定なし) 54kg超 57kgまで
バンタム級 52kg超 56kgまで 52kg超 54kgまで
フライ級 49kg超 52kgまで
ライトフライ級 46kg超 49kgまで
ピン級 42kg超 46kgまで ジュニア(高校生)のみ

プロ

プロボクシングにおける階級は、以下の通り。以前は、日本ボクシングコミッションでは「ジュニア○○○級」の呼称を採用していたが、1998年5月1日世界ボクシング協会(WBA)と世界ボクシング評議会(WBC)とでルールが統合され、両団体で異なっていた呼称も「スーパー○○○級」に一本化されたため、同時に日本ボクシングコミッションでも「スーパー○○○級」に呼称が変更された。それにより、ジュニアミドル級はスーパーウェルター級へ、ジュニアウェルター級はスーパーライト級へ、ジュニアライト級はスーパーフェザー級へ、ジュニアフライ級はライトフライ級へ変更された。

WBAやWBC以外の団体ではジュニアの名称は今でも使われており、団体によって名称に差異はあれど同じウエイトである。男子は全17階級。女子は団体によって異なり、ミニフライ級(ミニマム級)の下にアトム級(ライトミニマム級)が設けられたり、スーパーミドル級より上の階級が一部または全部抜けていることもある。

階級名称 体重
(キログラム/kg)
体重
(ポンド/lb)
備考
ヘビー級 90.719kg超 200lb超
クルーザー級/ジュニアヘビー級 90.719kg以下 200lb以下 女子はWBOのみ
ライトヘビー級 79.379kg以下 175lb以下 WBC女子はなし
スーパーミドル級 76.204kg以下 168lb以下
ミドル級 72.575kg以下 160lb以下
スーパーウェルター級/ジュニアミドル級/ライトミドル級 69.853kg以下 154lb以下
ウェルター級 66.678kg以下 147lb以下
スーパーライト級/ジュニアウェルター級/ライトウェルター級 63.503kg以下 140lb以下
ライト級 61.235kg以下 135lb以下
スーパーフェザー級/ジュニアライト級 58.967kg以下 130lb以下
フェザー級 57.153kg以下 126lb以下
スーパーバンタム級/ジュニアフェザー級/ライトフェザー級 55.338kg以下 122lb以下
バンタム級 53.524kg以下 118lb以下
スーパーフライ級/ジュニアバンタム級/ライトバンタム級 52.163kg以下 115lb以下
フライ級 50.802kg以下 112lb以下
ライトフライ級/ジュニアフライ級 48.988kg以下 108lb以下
ミニマム級/ストロー級/ミニフライ級 47.627kg以下 105lb以下
アトム級/ライトミニマム級/ミニマム級/ストロー級/ミニ級 46.266kg以下 102lb以下 女子のみ

勝敗

アマチュア

アマチュアボクシングの勝敗の決し方は以下の通り。

  • KO (KnockOut):相手がダウンしたのち、10カウント以内に立ち上がれない場合やファイティングポーズをとれない場合、もしくはレフェリーがダメージ甚大と判断してカウントアウトした場合。
  • RSC (RefereeStopContest):プロボクシングのTKOに相当する。RSCのバリエーションとしてRSCH (H=head)、RSCO (O=outclass) がある。RSCHは頭部へのダメージが甚だしい場合に適用する。RSCOはコンピュータ採点方式の試合中に15ポイント以上差がついた場合に適用する。試合中に選手が負傷し、レフェリーまたはドクターによって試合続行が危険と判断された場合にもRSCが適用される。
  • 棄権 (Retire):選手本人、もしくはセコンドがこれ以上試合を続けることができないと判断した場合。タオルを投げ込んで合図するのが通例。
  • 失格 (disqualified):反則によって減点が3点に達すると失格となる。
  • 判定 (On Point):ラウンド毎に採点をし、より多くの点をとった選手を勝者とする。
  • 不戦勝 (WalkOver):予定された対戦相手が出場できない場合は不戦勝となるが、不戦敗は記録につかない。

プロ

勝敗の決し方は、以下の通り。

  • KO (KnockOut):プロの場合、相手がダウン後、10カウント以内に立ち上がれなかった場合。(1ラウンドで3回ダウンした場合=「スリー・ノックダウン方式」もKOに準じる)
  • TKO (Technical KnockOut):どちらかの選手が明らかに不利な場合や、試合続行不可能な状態になって試合を止めた場合。
  • レフェリーストップ:どちらかの選手のダメージが深いなど、これ以上試合を続行させると危険であるとレフェリーが判断した場合。記録上はTKO。
  • ギブアップ:選手本人、もしくはセコンドがこれ以上試合を続けることができないと判断した場合。タオルを投げ込むのが通例。記録上はTKO。
  • 失格:相手が故意に重大な反則を犯した場合、もしくは反則を繰り返した場合。
  • 判定:ラウンド毎に採点をし、より多くの点をとった選手を勝者とする。
  • 負傷判定:試合の途中で偶然のバッティングにより負傷した場合、規定のラウンドに達していればそれまでの採点で勝敗を決する。達していない場合は負傷引き分けとなる。
  • そのほか、リングアウトとなるケースもある。リングアウトされた選手は20秒以内にリングに戻らなければ負けとなる。

採点方法

アマチュア

アマチュアでは、KOにこだわらず、グローブの決められた部分で相手のボディ(ベルトラインから上の胴体)や顔面に、手打ちではない有効なパンチを当てたことで得点打とみなされ、それを多く当てたかで勝敗が決まる[1]。主要大会ではコンピュータ採点が導入されている。5人のジャッジのうち3人以上が有効打と判断した場合に1ポイントが与えられ、試合終了時に最もポイントが高かった選手が勝者となる。ジャッジペーパーを使用して20点満点の減点方式を取る場合もある。両方式とも引き分けは認められず、同点の場合は、コンピュータ採点の場合は「採点機のボタンは押されたが有効打と判断されなかったパンチ」まで含めて、より多いポイント数を獲得した選手を勝者とする。ペーパー採点方式の場合は「より攻勢を示した選手」あるいは「より優れた防御を示した選手」のいずれかを基準としてジャッジの判断に委ねられる。

プロ

10点満点の減点方式。JBCルールによると、互角の場合は10対10、一方が勝る場合は10対9、1度のダウンやそれに近い状態のときは10対8、2度のダウンの場合、あるいは3度のダウンがあったがダメージがそれほど深刻ではない場合は10対7、3度のダウンがあった場合や2度のダウンでも10対7相当よりも一方が圧倒的に優勢であるときは10対6となり、10対5以上の大差と認められた場合はTKOとなる。(旧JBCルールではそれ以上に差が開いた場合や3度目のダウンが起こった際は、レフェリーが試合を止めるため10対6の採点は無かったが、2016年よりフリーノックダウン制となったため基準が変更された)。現在世界的に採用されている10ポイント・マスト・システムでは、必ず片方の選手に満点の10点をつけることになっているが、必ずしも「10対10」の採点を認めないことではなく、双方の選手に1度ずつダウンがあっても「8対8」にはならず、ダウン以外の要素を総合的に判断して「10対X」の採点を行う意味である。なお、近年の世界タイトルマッチでは極力「10対10」を採らない「ラウンド・マスト」と呼ばれる採点方法が主流となっており、これが「10ポイント・マスト・システム」と混同されているケースがテレビの世界戦中継などでも散見される。「ラウンド・マスト」の弊害として微差のラウンドを制して得た1点差と明確な優勢によって得た1点差の価値が同等になる点が指摘されており、その緩和のためPABAのように「ハーフポイント」と呼ばれる0.5ポイント刻み(10対9.5など)の判定が認められる団体も存在する。反則減点は合計点から引く。主な採点基準として次の4項目がある。

  1. どちらが有効打でダメージを与えたか。(クリーンヒット)
  2. どちらがより攻撃的だったか。(アグレッシブ)
  3. どちらがより相手の攻撃を防いだか。(ディフェンス)
  4. どちらの試合態度が堂々とし、戦術に長け、主導権を握ったか(リング・ジェネラルシップ)。

各要素の優先順位は概ね「クリーンヒット>アグレッシブ>ディフェンス>リング・ジェネラルシップ」であるとされるが、例えば「片方の選手が軽いパンチの『クリーンヒット』を数多く重ねたが、もう片方は大半の時間で『アグレッシブ』に攻め、『リング・ジェネラルシップ』を握った」場合など、容易に形勢判断がつかない際は、どちらの選手を優位とするかはジャッジの主観に委ねられることとなり、これが採点結果が割れる理由になる。 採点は3人のジャッジがそれぞれラウンドごとに行い、2人以上のジャッジが支持した選手を勝者とする(ハーフポイント制の場合、0.5点差は引き分け)。ジャッジが3人とも一方の選手を支持した場合をユナニマス・デシジョン(Unanimous Decision, UD)、2人が支持し、もう1人が引き分けであった場合をマジョリティ・デシジョン(Majority Decision, MD)、1人のジャッジがもう一方の選手を支持した場合をスプリット・デシジョン(Split Decision, SD)と呼ぶ。トーナメントなどで引き分けとなった場合は、引き分けをつけたジャッジが最終判断を下して決着を付けることになるが、大会によっては延長戦を行う場合もある。

反則

試合中に以下の行為を行った場合、反則となり、レフェリーに注意を受ける。注意が重なった場合、プロボクシングでは減点対象となり、悪質な場合は失格負けとなる。

  • バッティング。頭、肘などで攻撃する。
  • ホールディング(ホールド)。腕やグローブで相手の身体や腕を押さえつける。
  • ローブロー。相手のベルトラインより下を攻撃する。
  • オープンブロー。グローブのナックル・パート以外の部分で攻撃する。
  • チョップブロー。空手チョップのように攻撃する。
  • ラビットパンチ。相手の後頭部を攻撃する。
  • キドニーブロー。腎臓を攻撃する。背中側への攻撃は全面的に禁止。
  • 投げ技タックルなどのレスリング行為。
  • レフェリーがブレイクを命じた後、「ボックス」と試合再開を促す前に攻撃する。
  • ラウンド終了のゴングが鳴った後に攻撃する。
  • サミング。グローブの親指で相手の目を突く攻撃。

なお、アマチュアボクシングでは、プロボクシングよりも反則規定が厳格である。国際ボクシング協会(AIBA)のルールブックに示される反則行為は以下の17項目で、審判員の過半数が認める警告を一方の選手が主審から受けた場合、もう一方の(警告を受けていないほうの)選手に2ポイントが加点される[2]

  • ベルトラインより下を打つこと、ホールディング(ホールド)行為、足を引っかけること、蹴ること。
  • 頭・肩・前腕・肘で打つこと、対戦相手を絞める行為、腕や肘で対戦相手の顔を圧迫すること、対戦相手の頭をロープの外側に押すこと。
  • オープンブロー(握らない状態で打つこと)・インサイドブロー(グローブの内側で打つこと)、手首やグローブの側面で打つこと。
  • 対戦相手の背面を打つこと。特に対戦相手の首・頭の後部への打撃、キドニーブロー。
  • ピボットブロー(回転して打つこと)。
  • ロープを握った状態で攻撃すること。その他ロープを利用したあらゆるアンフェアな行為。
  • 寝ころぶこと、クリンチからのレスリング行為や投げ技。
  • ダウンした、あるいはダウンから立ち上がろうとする相手を攻撃すること。
  • ホールディング。ホールディングのまま打つこと、対戦相手を引っ張りながら打つこと。対戦相手の腕や頭を抱え込むこと、または対戦相手の腕を下に押さえつけること。
  • 危険な状態で対戦相手のベルトラインより低いダッキングを行うこと。
  • 故意に反則をし、逃げ回るなどして攻撃を避けようとし、完全に受け身の防御を行うこと。
  • 不適切な攻撃的姿勢をみせること。
  • レフェリーがブレイクを命じたときに、きちんと後退しないこと。
  • レフェリーがブレイクを命じ、後退した後、間髪入れずに打撃を試みようとすること。
  • レフェリーに対して攻撃的な態度をとること。
  • マウスピースを吐き出す行為。
  • 対戦相手の視界を妨げるように腕を伸ばし続けること。

タイトル

プロ・アマ関係なく、基本的にボクサーはこれを獲得するために試合に臨む。十分な地位や名誉を得たプロボクサーで、自身のプライドや金銭的な理由から、保持するタイトルを返上してもほかの強豪選手との試合を優先する者もいる。

アマチュア

アマチュアボクシングでは、地区国内国際世界オリンピックの順に価値が上昇する。年齢ごとにジュニア・カデット・シニアのカテゴリーに分けられる。アマはプロと違いトーナメント制を採用しているため一度も敗北が許されず、プロよりも王座の獲得は難しいといわれる。プロ選手のアマチュア大会の参加は現在も認められていない。

国際ボクシング協会(AIBA) 日本アマチュアボクシング連盟(JABF)

プロ

プロボクシングでは、タイトルの価値は、地区(ローカル)・国内(ナショナル)・地域国際(インターナショナル)もしくは大陸間(インターコンチネンタル)・世界統一もしくはスーパー王座の順に価値が上昇し、団体によってはユース王座ジュニア王座を設ける。日本は日本ボクシングコミッション (JBC)が日本王座を認定し、知名度は低いが日本の地区タイトルも存在する。国内王座より上位に位置する地域王座は地域連盟や世界団体の下部組織が認定し、国際(インターナショナル)王座や大陸間王座(インターコンチネンタル)、世界王座やスーパー王座等は世界団体が直接認定している。ここでプロボクシングで4大団体と称される主要な世界タイトル認定団体を下記する。WBAやWBC含むその他の団体はサッカーのFIFAのような組織ではなく王座の認定組織で、“団体aのあり方・運営のされ方に不満を持った人達が、団体bと、bが認定する別の世界タイトルを立ち上げ”て分派した団体もあるため、プロボクシングを統括しているわけではない。

プロボクシングにおけるその他の世界タイトル認定団体を以下に挙げる。歴史が浅いこれらのタイトルは4大団体のものよりも価値は低いと見なされ、獲得しても世界王座とは認識されないことが多い。

プロボクシングにおける国際王座や大陸間王座は、世界団体が直接統括している。王座としての価値は世界王座よりも低く、世界王座挑戦前の試金石や箔付けのために利用される。JBCはこれらについて認めていない。

  • WBA
    • インターナショナル王座
    • インターコンチネンタル王座
  • WBC
    • インターナショナル王座
    • インターコンチネンタル王座
  • IBF
    • インターナショナル王座
    • インターコンチネンタル王座
  • WBO
    • インターナショナル王座
    • インターコンチネンタル王座

プロボクシングにおける地域王座は、世界団体とは独立した組織である地域団体、世界団体の下部組織、もしくは世界団体が直接認定している。JBCはOPBF王座しか認めていない。

テレビ中継番組

ボクシング中継も参照。

ボクシングをテーマにした作品

映画
テレビドラマ
漫画
小説
ゲーム

脚注

  1. 『もっとうまくなる!ボクシング』13頁。
  2. AIBA Technical and Competition Rules – Effective March 24, 2011 (Latest amendments: March 27, 2012)” (英語). Rules for Competition Management – Rule 12. Fouls – 12.1., 12.3. (p.16). AIBA. . 2012閲覧.

関連項目

外部リンク

プロボクシング関連

4大ボクシング世界タイトル認定団体

その他のボクシング世界タイトル認定団体

ボクシング地域タイトル認定団体

ボクシング日本国内の団体