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テレワーク(telework)あるいはテレコミューティング(telecommuting)とは、勤労形態の一種で、情報通信技術(ICT, Information and Communication Technology)を活用し時間や場所の制約を受けずに、柔軟に働く形態をいう。「tele = 離れた所」と「work = 働く」をあわせた造語[1]。また、テレワークで働く人をテレワーカーと呼ぶ。
歴史
テレワークは、1970年代にアメリカ合衆国のロサンジェルス周辺でエネルギー危機とマイカー通勤による大気汚染の緩和を目的として、はじめられた[2]。1980年代前半にはパソコンの普及と女性の社会への進出に伴い、テレワークが注目されるようになった[2]。
特徴
テレワークの特徴は、「職場など一定の場所に縛られずにどこでも仕事ができる」ことである。そして職場以外で仕事ができると言うことは、労働時間の管理・把握が困難となり、必然的に「労働時間の不可視化」が起こる。そのため、管理困難に対応すべく労働者に一定の裁量権を与えて決められたノルマをこなす、というように「テレワーカーに一定の裁量権が与えられる」ことになる[3]。
テレワークの利点
テレワークにはいくつかの利点があると評価され、世界各国にテレワークの研究や普及促進する団体が存在する。
日本政府は、テレワークには交通渋滞や大気汚染(在宅勤務者が増えることによる交通機関利用者の減少)などの都市問題や地域活性化(サテライト・オフィスの活用、通勤が無くなればどこでも住めるので地方へ人が移住する)、少子化、高齢化など(在宅時間が増えることによる子育て、介護時間の増加)の社会問題解決の手段として有効であると期待し、推進している。またパンデミック対策の一つでもある。留意点としては、これらの利点は従前通勤勤務であった労働者が在宅勤務へと変わることにより期待されるという点である[3]。また、経営者には経費削減(通勤労働者の減少によるオフィスの縮小)、労働者には労働の裁量権が得られる、非雇用型の場合は自分の都合にあわせて働けるなどの利点があるとされる[3]。
テレワークの問題点
一方で、テレワークには問題点も指摘されている。
すべてのテレワークに共通することとして、労働時間が長期化しやすい傾向がある。「どこでも仕事ができる」は、「どこでも仕事をしなければならない」に容易に置き換わる。また、テレワーカーに裁量権があるといってもそれは限定的なもので、テレワーカーにはノルマ(仕事量)を決める権限は無く、ノルマは勤め先など外部が決定している。特徴の節で述べたとおり、労働時間が見えないため外部が決定する仕事量と労働時間とのバランスが難しく、「このくらいできるよね」と外部がノルマを課せばテレワーカーはこなさなければならない[3]。そして裁量労働制という名前の元に、テレワーカーは「自分が仕事をコントロールしており、ノルマをこなせないのは自分のせいだ」として、ノルマをこなすためについつい労働時間を延ばしていく。しかもこの延びた時間をテレワーカーは「労働時間として認識しない」傾向にあるという[3]。この労働時間の長期化は、特に仕事の単価が安い請負が多い在宅ワーク型において時給の低額化を招きやすい[3]。
収入面では、雇用型については一定の収入が保証され、額も多い。しかし、在宅ワーク型はCG・ホームページの作成などの技能を必要とする仕事であればまだ収入が多いが、データ入力、アドレス収集といった技能を必要とされない(とみられる)仕事の場合、請負制で最低賃金が適用されず単価は恐ろしく安くなり、一方で作業時間が長くなった結果、「結果として時給100円だった」といった事態が容易に起こりうる。ごく一部を除けば、「収入額も時給もパートの方がよほどマシ」といった状況にある[3]。
次に、特に政府が期待する通勤労働者から在宅勤型務への振り替えの増加は、現状では厳しいという[3]。企業にとって、通勤労働者の在宅勤務型への変更は労務管理が難しくなるという問題点を抱える。まず労働時間の管理が難しくなるため、在宅勤務を導入している企業においては、「○時から○時までは仕事をしろ」といったように、時間拘束が厳しい事例がある[3]。また企業の大多数は労働者をみることにより評価する方法を導入しており(特に事務職においてノルマ設定による評価方法は導入しづらい)、テレワークは仕事ぶりがみえづらく評価が難しくなる[3]。
一方、モバイルワーク型の導入は企業にとってオフィス縮小によるコスト削減、営業職が顧客に関わる時間が多くなることによる顧客満足度の上昇などの利点があるが、労働者はバックヤード縮小による事務作業など労働量の増加、他者との関わりが希薄化することによるロールモデルの消失、勤め先への忠誠心の低下などが起こりうる[3]。
日本
区分
日本でのテレワークの区分として、雇用関係の有無がある。企業や官公庁に雇用され、在宅勤務などを行う「雇用型」と、フリーライターやSOHOなどの「自営型」、あるいは「非雇用型」は、広く使われる区分である[4][3]。また、国土交通省のテレワーク人口実態調査では、情報通信機器等を利用し仕事をする時間が1週間当たり8時間以上の者を「狭義のテレワーカー」、それ以外を「広義のテレワーカー」としている[5]。また、佐藤彰男は雇用型、非雇用型を在宅勤務、モバイルワーク、SOHO、在宅就業に分けることができる、としている[3]。それぞれの概要は以下のとおり。
- 雇用型
- 自宅利用型テレワーク - 在宅勤務。自宅にいて、事業所とはインターネット、パソコン、電話などで連絡を取る。
- モバイルワーク - 事業所に毎日出勤することはせずに、顧客先や移動中にノートパソコン、携帯電話などを使って勤務する。
- 非雇用型
- SOHO - 個人事業主。法人格を持っていることが条件。
- 在宅ワーク型 - 個人が請負、あるいはテレワークあっせん会社に登録を行い、データ入力やアドレス収集、ホームページ作成などを行う。収入の低さから「電脳内職」と揶揄される形態でもある。
また、総務省では上記に付け加えて、施設利用型勤務(サテライト・オフィス、テレワークセンター、スポットオフィス等を就業場所とするもの)を定義している。
規模
平成17年度テレワーク実態調査(国土交通省)によれば、2005年時点で日本には狭義のテレワーカーが674万人(内訳は、雇用型で506万人、自営型で168万人)いる。政府は2003年7月策定の「eJAPAN戦略II」で、2010年に日本の労働人口の2割(7000万人×0.2=1400万人)をテレワーカーにする目標をかかげている。
一方で、この数字は過大であるという指摘もある。一例として、「調査は本人の自覚によらず定義に当てはまるかで判断しているため、例えば週に8時間以上自宅へ持ち帰り残業を行えばテレワーカーとなる」(佐藤、2008)を挙げる[3]。
テレワーク・デイ
総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、内閣官房、内閣府では、東京都及び経済界と連携し、2020年までの毎年、東京オリンピックの開会式が予定されている7月24日を『「働く、を変える日」テレワーク・デイ』とし、企業等による全国一斉のテレワーク実施を呼びかけている[6][7]。
- 第1回目(2017年) - 900団体以上、約6.3万人が参加[6]。NTTコミュニケーションズは約800人の社員が終日、在宅で勤務した[8]。Yahoo!は全従業員の半数に当たる3000人規模でテレワークを実施し、自宅やカフェ、サテライトオフィスなど、それぞれのワークスタイルに合う空間で作業をした[8]。サニーサイドアップは本社最寄り駅の一つが国立競技場駅であり、「下り電車に乗ろう」プランを導入、海の家や高尾山でミーティングを行った[8]。
- 第2回目(2018年) - テレワーク・デイズ(7月23日の週で、24日を含む計2日以上)として開催、1200団体以上が実施団体として登録した[9]。
関連文献・記事
脚注
- ↑ テレワークとは 日本テレワーク協会
- ↑ 2.0 2.1 世界のテレワーク事情(2012年7月) (PDF) 社団法人日本テレワーク協会
- ↑ 3.00 3.01 3.02 3.03 3.04 3.05 3.06 3.07 3.08 3.09 3.10 3.11 3.12 3.13 佐藤彰男『テレワーク―「未来型労働」の現実』岩波書店、2008年5月、ISBN 9784004311331
- ↑ 『THE Telework GUIDEBOOK 企業のためのテレワーク導入・運用ガイドブック』国土交通省他 2008年版
- ↑ 『平成20年度 テレワーク人口実態調査』国土交通省 2009年4月
- ↑ 6.0 6.1 “「働く、を変える日」テレワーク・デイ報告会の開催10月6日(金)”. 日本テレワーク協会 (2017年10月2日). . 2018閲覧.
- ↑ テレワーク・デイ|働く、を変える日|2017.07.24
- ↑ 8.0 8.1 8.2 “テレワーク・デイとは?東京五輪で変わる働き方”. PARAFT (2018年5月23日). . 2018閲覧.
- ↑ テレワーク・デイズ