ガールズバー
ガールズバー(和製英語:girl's bar)とはバーテンダーが女性中心のショットバーである。2006年半ば頃に京都で発祥したとされる[1]が、20世紀から営業しているバーが徐々にサービスを転換させていたり、発祥時期については諸説ある[注 1]。当初は大阪をはじめ東京や名古屋などの大都市圏の繁華街に多く出店していたが、2011年現在は地方都市にも広範囲にみられる。
概要
バーテンダーがすべて女性のショットバーであり、カウンター席に客が着席し女性バーテンダーが接客する。風営法で規制されるキャバクラと異なり飲食店に分類されるため、営業時間などの制約が少ない。深夜営業の際は店員は18歳以上である。
料金体系
- チャージ
- テーブルチャージが時間単位の店舗やタイムチャージのない店舗など様々である。女性客に対しては男性より割安または無料という店もある。「お通し代」としておつまみを出して徴収する店舗もある。3000円程度/1hで飲み放題という店舗もある。
- ドリンク、フード
- 500〜1,500円程度。シャンパンやワイン(ボトル)になると5,000〜20,000円程度。
- サービス料
- 「サービス料」として合計金額の10〜20%程度割増して徴収する店舗もある。
- 消費税
- 通常は内税方式だが、価格表示を内税方式とせずに別途消費税を徴収する店舗もある。
- 手数料
- クレジットカードの場合は、手数料として10〜15%程度割増しして徴収する店舗もある[注 2]。
- その他
- 一般的にコスプレなど店員の衣装が凝っていたり、露出度が高かったりする店舗ほど価格は高めである。
- ウィスキーや焼酎など特定のお酒飲み放題、カラオケ無料などスナックのような業態の店舗もある。
- 「指名」、「ノミネート」などのシステムのある店舗もある。
店舗毎の特色
- カジノバー風 - カジノテーブルを設け、店員や客同士でゲームできる。
- クラブ風 - ミラーボールやDJ用機器を備える。
- 和風 - 和風の内装にバーテンダーも和服姿で接客する[5]。
- メイド喫茶のバータイプの店やコスプレバー[6][7] - メイド服や女子高生風、アニメなどの衣装、萌え系サービス、萌え系メニュー等。
- スポーツバー[8]のコンセプトとの融合 - 店員がサッカーユニフォームなどのスポーツウェア着用、サッカーなどのスポーツ中継を大画面で放映等。
- 居酒屋・スナック風[8] - ローカウンターでアットホームな雰囲気。
- セクシー系コンセプト - パンチラや水着などのセクシーな衣装とセクシー系サービス。
ガールズ居酒屋
ガールズバーとほぼ同時期頃に[注 3]、ガールズ居酒屋という形態の店舗が誕生している。これは居酒屋のホール担当をすべて女性店員としたものであり、店舗のコンセプトによっては露出度の高い衣装を着たり、客との会話などの接客、店によっては女性店員によるライブやダンスなどのパフォーマンスが行われる[10]。大衆居酒屋よりも料金は割高となっている。風俗営業ではない店舗では18歳未満の女子高生も雇用可能であり、勤務しているケースも少なくない[10]。
法令関係
ガールズバーが2006年夏から急速に普及した背景には、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)と各自治体条例によるキャバクラ等への規制強化の動きがある[11]。風俗営業許可店である高級クラブやキャバクラ(いずれも1号営業)は、深夜・午前0時以降日の出までのあいだ合法的に営業を行うことはできない。実態としては終夜営業が行われる事もあったが、2005年前後の規制強化以降はそれも難しくなってきていた。一方「深夜酒類提供飲食店営業」として届け出た場合は終夜営業が可能であるためガールズバーの多くは深夜酒類提供飲食店として営業しており、キャバクラからの鞍替えも起きている。また、ガールズバーではキャバクラと違ってキャッチによる客の呼び込みが規制されておらず、実際に繁華街で行われていることがある[4]。
このようにガールズバーは風俗営業許可店ではないことから、高級クラブやキャバクラのように「歓楽的雰囲気をかもし出す方法により客をもてなすこと」すなわち法令上の「接待」行為は認められていない。ただし地域や店舗によってはテーブル席の客の傍に着席して接客したり、客とカラオケでデュエットするなど法令上グレーな店舗もある[注 4]。これをうけ2008年10月には風俗営業の許可をとらずに接待行為を行ったとして、警視庁は歌舞伎町のガールズバーを摘発した[12]。その後も、東京都新宿区歌舞伎町や大阪市中央区宗右衛門町の店舗などが、接待行為を理由に摘発されている[13][14]。また、神戸市において、18歳未満の少女を、年齢を知りつつガールズバーで22時以降に勤務に就かせたとして、公用車の運転手をしていた同市職員が逮捕された事例がある[15][16]。
パンチラのある衣装や、体を触らせたりするようなセクシーパブ寄りのサービスを目玉にしている店舗もガールズバーと称して営業していることがある[17][18]。
前述のガールズ居酒屋でも、中高生を深夜に働かせたことや16歳の少女を下着・ビキニ姿で就業させたことを問題視されて労働基準法違反で店舗が摘発されるという事例がある[19][20]。
他、大阪・ミナミなどで「ボッタクリ」営業を行うガールズバーが複数存在し、支払いを拒否した客に対して暴力を用いて支払いを強いるなどの事件が多発しており、地元警察がこのうちの1件の店舗の経営者らを強盗致傷容疑で逮捕し、実態解明を進めている[21]。
参考文献
- 大脇克浩 (2006年11月29日). “歌舞伎町でガールズバーがブレイクのウワサ”. All About. . 2008年10月21日閲覧.
- 大脇克浩 (2006年12月19日). “失敗しないガールズバー選び 前編”. All About. . 2008年10月21日閲覧.
- 大脇克浩 (2006年12月21日). “失敗しないガールズバー選び 後編”. All About. . 2008年10月21日閲覧.
- “法令データ提供システム 風俗営業の規制および業務の適正化等に関する法律”. . 2014年5月10日閲覧.
- “2001年5月にオープンしたガールズバーの元祖と思われる店舗/大阪・十三”. . 2012年07月25日閲覧.
脚注
注釈
- ↑ 『フードリンクニュース 』[2]によると店舗数が急速に増加したのが2006年夏であるため、発祥はそれ以前である可能性が高い。ライターの大脇克浩によると[3]、2002年に上野にオープンしたカウンターパブ「サーカス」ではカウンター越しに女性が接客するサービスが提供されており、少なくともその時期既に同種の業態は存在したことになる。評論家の荻上チキは、2003年頃から人気になったと述べている[4]。
- ↑ クレジット会社の規定で、カードの利用に際し手数料相当額を徴収する行為は本来禁止されており、発覚した場合はカード会社による指導・処分の対象となり得る。
- ↑ 大脇克浩は、2009年8月の時点で「かれこれほど4年前に誕生し、…」と述べているため[7]、これを信じるならば2005年頃が発祥となる。フードプランナーの曽我和弘は、ガールズ居酒屋のルーツらしき店舗が2005年にあったと述べている[9]。
- ↑ 近年はガールズバー人気の上昇に伴い、許認可上は1号営業ながら「ガールズバー」名目で営業する店も現れており、その場合は違法ではない。
出典
- ↑ 亀井肇「ガールズバー」『新語探検』Japan Knowledge
- ↑ “昼キャバ、ガールズバーの台頭でライト化するナイトビジネス”. フードリンクニュース. フードリンク (2006年10月20日). . 2013閲覧.
- ↑ 大脇克浩 (2008年3月12日). “最新! ガールズバー事情”. AllAbout. . 2013閲覧.
- ↑ 4.0 4.1 荻上チキ 『セックスメディア30年史 欲望の革命児たち』 筑摩書房、2011年。ISBN 978-4-480-06606-0。
- ↑ “京橋初の和風ガールズバー、和空間で着物接客ウリに”. 京橋経済新聞 (ダイメディア). (2008年7月15日) . 2013閲覧.
- ↑ “上野に「魔法」がテーマのガールズバー-開店3カ月、固定客着々と”. 上野経済新聞 (KeepAlive). (2008年10月3日) . 2013閲覧.
- ↑ 7.0 7.1 アキバのハーレム居酒屋『こくまろみるく』AllAbout 更新日:2009年08月30日
- ↑ 8.0 8.1 大脇克浩 (2008年3月12日). “最新! ガールズバー事情(2/3)”. AllAbout. . 2013閲覧.
- ↑ 曽我和弘 (2010年8月). “コレが食べたいから、あの店へ行く 8月号 サントリーグルメガイド”. SUNTORY. . 2013閲覧.
- ↑ 10.0 10.1 “異空間広がる「ガールズ居酒屋」初体験 過激衣装の店員が腰くねくね(1/3ページ)”. MSN産経ニュース (産経デジタル). (2012年4月22日) . 2013閲覧.
- ↑ 大脇克浩 (2008年3月12日). “最新! ガールズバー事情”. AllAbout. . 2013閲覧.
- ↑ “ガールズバー、無許可営業で初摘発 新宿・歌舞伎町”. MSN産経ニュース (産経デジタル). (2008年10月27日). オリジナルの2008年10月31日時点によるアーカイブ。 . 2008閲覧.
- ↑ “従業員はバニーちゃん…新宿のガールズバー摘発”. MSN産経ニュース (産経デジタル). (2008年11月19日). オリジナルの2008年12月18日時点によるアーカイブ。 . 2008閲覧.
- ↑ 「大阪 ガールズバー摘発」、『風俗営業トピックスマガジン』、風俗営業開業経営サポートセンター(澁谷行政書士事務所)、2008年12月4日。
- ↑ “神戸市職員 夜はガールズバーで“仕事””. スポニチ Sponichi Annex (スポーツニッポン新聞社). (2011年9月8日) . 2013閲覧.
- ↑ 近藤諭 (2011年9月8日). “風営法違反:神戸市職員ら逮捕 少女に深夜接客させた疑い”. 毎日jp (毎日新聞社). オリジナルの2011年10月7日時点によるアーカイブ。
- ↑ “ガールズバーで女子中高生を雇用 経営者ら4人逮捕 大阪府警”. MSN産経ニュース (産経デジタル). (2008年12月2日). オリジナルの2008年12月5日時点によるアーカイブ。 . 2008閲覧.
- ↑ 『サンスポ』2008年1月14日、社会面。
- ↑ “異空間広がる「ガールズ居酒屋」初体験 過激衣装の店員が腰くねくね(2/3ページ)”. MSN産経ニュース (産経デジタル). (2012年4月22日) . 2013閲覧.
- ↑ 宗岡敬介 (2012年5月18日). “労基法違反:16歳下着で接客 容疑の店を捜索 横浜”. 毎日jp (毎日新聞社). オリジナルの2012年5月20日時点によるアーカイブ。
- ↑ 客に暴行、ぼったくり…ガールズバー店員ら逮捕 読売新聞 2014年5月28日