常念岳

提供: miniwiki
2018/8/12/ (日) 15:11時点におけるAdmin (トーク | 投稿記録)による版 (1版 をインポートしました)
移動先:案内検索


常念岳(じょうねんだけ)は、飛騨山脈(北アルプス)南部の常念山脈にある標高2,857 mである。山体すべてが長野県に属し、松本市安曇野市にまたがる。常念山脈の主峰。日本百名山のひとつ[1]

概要

安曇野からは全容が望め、ピラミッド型のその端正な山容は一目瞭然ですぐ見つけられる[2]。常念岳のこの印象的な形状は東に隣接する前常念岳の峰が重なって見える安曇野市豊科以南から眺める場合で、安曇野市穂高以北になるとそれぞれの峰が独立して見えるためまた印象が違って見える。
なお、安曇野から眺められる北アルプスは、常念山脈が主役で、穂高岳槍ヶ岳といった山々は、常念岳、蝶ヶ岳大滝山といった前衛の常念山脈に隠れ、場所によってその間から顔を出す程度である。安曇野のシンボルであり、長野県立こども病院のマークにも使われている。常念岳の北側の山体は花崗岩質からなり、南側の不変成古生層と大きく異なる境界となっている[3]。東側の山腹には常念岳断層が確認されている[4]高山帯の山頂部には花崗岩の岩塊が積み重なっている。

常念坊と山名の由来

ファイル:Mount Jyonen from Azusa River 1996-04-29.jpg
残雪部前常念岳の中央に、黒い姿のとっくりを手にした坊さん雪形の常念坊が見られる。

古くは乗鞍岳と呼ばれていた[3]。常念岳の由来は、昔、毎年暮れに不思議な常念坊という山姥が酒屋に酒を買いに来たからという説や、坂上田村麻呂がこの地に遠征した際に、重臣である常念坊がこの山へ逃げ込んだとされることから付けられたという説など、いくつかの説がある。春に前常念岳の東北東の雪の斜面に、とっくりを手にした坊さんの黒い姿の常念坊の雪形が見られ、安曇野に田植えの時期を知らせる雪形とされている[5]。安曇野名誉市民の山岳写真家の田淵行男が、『山の紋章 雪形』の著書でこの雪形を紹介している[6]

歴史

ファイル:Jyonendake and yokotooshidake from River-Azusa 1996-4-29.jpg
安曇野の梓川右岸から望む
常念岳・横通岳
ピラミッド型の山容の常念岳(左)

動植物

標高約2,400 mの上部は、森林限界を越える高山帯でライチョウの生息地となっている。山腹にはホシガラスメボソムシクイの鳥類やツキノワグマカモシカキツネニホンザルなどの哺乳類が生息していて、近代登山史以前から猟師の狩猟場となっていた[3]。常念乗越など周辺の山域は、ミヤマモンキチョウやタカネヒカゲなどの高山が生息し、田淵行男が100回以上常念岳に登り[1]、高山蝶の研究を行った[14]。当時9種類を確認し、タカネヒカゲは長野県の天然記念物に指定されている。ハイマツ帯にはアオノツガザクライワギキョウクロマメノキコマクサチングルマ、ハイマツ、ミヤマキンポウゲなどの高山植物が自生している[15]

ハイマツ ライチョウ コマクサ チングルマ ミヤマモンキチョウ
125px 140px 125px 110px 120px

登山

登山ルート

ファイル:Mount Jonen from Mount Yokotooshi 2004-5-2.JPG
横通岳から望む5月初旬の常念岳
山小屋開きと共に残雪期の春山登山シーズンが始まる

安曇野側及び上高地側からのルート及び常念山脈の稜線上に登山道が開設されている[16]。東の安曇野側にからは、中房登山口、一ノ沢登山口、三股登山口などが利用されている[17]。安曇野の麓の中学生が夏休みに、一ノ沢の登山口から常念小屋に一泊して学校登山を行っている例がある[18]。西側からは、上高地奥の徳沢や横尾などの登山口などが利用されている[19]。また他に大滝山を経由する中村新道や槍ヶ岳方面から大天井岳を経由した常念山脈の縦走路が利用される場合もある[20]。山頂の岩場には、祠と方位図が設置されていて、360度の展望が得られる。

かつて槍沢の一ノ俣谷出合には一ノ俣小屋があり、そこから一ノ俣に沿って常念乗越に至る上級者向けの谷コースがあったが、現在は廃道化している[21]。 1919年の常念坊乗越小屋開業当時は、上高地から槍ヶ岳へのルートはまだ整備されておらず、「有明 - 中房温泉 - 大天井岳 - 常念乗越 - 一ノ俣谷 - 槍沢 - 槍ヶ岳」のルートが利用されていたが、その後小林喜作が整備した表銀座の喜作新道がメインのルートとなった。

  • 中房登山口 中房温泉 - 合戦小屋 - 燕山荘 - 蛙岩 - 切通岩 - 大天井岳 - 東大天井岳 - 横通岳 - 常念小屋 - 常念岳
  • 一ノ沢登山口 ヒエ平 - 王滝ベンチ - 胸突八丁 - 常念小屋 - 常念岳
  • 三股登山口
    • 三股 - 前常念岳(一等三角点と石室) - 常念小屋 - 常念岳 (2014年現在前常念岳から常念小屋への道は通行止め、前常念岳から常念岳へ直接向かう道がある)
    • 三股 - 本沢吊橋 - 力水 - まめうち平 - 蝶ヶ岳 - 蝶ヶ岳ヒュッテ - 蝶槍 - 常念岳
  • 横尾登山口 上高地 - 徳沢 - 横尾 - 蝶槍 - 常念岳
  • 徳沢登山口 上高地 - 徳沢 - 長塀山 - 蝶ヶ岳 - 蝶ヶ岳ヒュッテ- 蝶槍 - 常念岳

周辺の山小屋

山頂北側の横通岳との鞍部である常念乗越には、山小屋常念小屋とそのキャンプ指定地があり、そこから西に槍ヶ岳が東鎌尾根越しに見られる。また周辺の登山ルート上に以下の山小屋がある[16][22]。夏期のシーズン期間中に、常念小屋では信州大学医学部の夏山診療所が開設されている[23]

画像 名称 所在地 標高
(m)
常念岳からの
方角と距離(km)
収容人数 キャンプ
指定地
備考
70px 大天荘 大天井岳山頂
直下南
 2,850 テンプレート:Direction北北西 3.3  200人 テント
30張
安曇野市
70px 常念小屋 常念乗越  2,450  テンプレート:Direction北 0.9  200人 テント
40張
夏山診療所
70px 蝶ヶ岳ヒュッテ 蝶ヶ岳山頂
直下北
 2,660 テンプレート:Direction南 4.1  300人 テント
30張
夏山診療所
70px 大滝山荘 大滝山北峰と
南峰との鞍部
 2,610 テンプレート:Direction南南東 5.9  50人 テント
10張
Gthumb.svg.png 横尾山荘 上高地奥の横尾  1,620 テンプレート:Direction南西 4.4  300人 テント
150張
入浴施設あり

地理

周辺の山

ファイル:YariKamikohchiTagged.jpg
上空から望む常念岳周辺の山
ファイル:Karasawa&Zyonen.jpg
涸沢上部から望む常念岳(左上)と蝶ヶ岳

飛騨山脈南部に位置し、その主稜線上にある槍ヶ岳から東尾根を経て派生する常念山脈のほぼ中央部にある[16]。山頂からは東の前常念岳へと延びる顕著な尾根がある。前常念岳の山頂には点名「常念岳」の一等三角点が設置されている[24]。常念山脈の西側に梓川を挟んで、穂高岳と槍ヶ岳の山並みを眺める絶好の展望台となっている。また山頂付近からは、安曇野、浅間山などを望むことができる。

山容 名称 標高[25][24]
(m)
三角点等級
基準点名[24]
常念岳からの
方角と距離(km)
備考
80px 燕岳 2,762.85  二等
「燕岳」
テンプレート:Direction北 9.1 燕山荘
日本二百名山
80px 有明山 2,268.34  二等
「有明山}
テンプレート:Direction北北東 8.3 日本二百名山
80px 槍ヶ岳 3,180 テンプレート:Direction西北西 7.4 槍ヶ岳山荘
日本百名山
80px 大天井岳 2,921.91  三等
「天章山」
テンプレート:Direction北北西 5.0 大天荘、常念山脈最高峰
日本二百名山
80px 横通岳 2,766.99  三等
「赤樽」
テンプレート:Direction北 1.9
80px 常念岳 2,857 テンプレート:Direction 0 常念小屋
日本百名山
80px 前常念岳 2,661.78  一等
「常念岳」
テンプレート:Direction東南東 1.0 安曇野側の前衛峰
石室、祠
80px 蝶ヶ岳 2,677 (三等「蝶ヶ岳」)
2,664.32 m
テンプレート:Direction南 4.2 蝶ヶ岳ヒュッテ
三角点の位置は旧山頂
80px 穂高岳 3,190 テンプレート:Direction西南西 8.2 飛騨山脈の最高峰
日本百名山

源流の河川

源流となる以下の信濃川水系河川であり、日本海へ流れる[26]。常念乗越は、一ノ俣谷と一ノ沢との分水嶺となっている。

  • 本沢、一ノ沢、二ノ沢 (烏川支流
  • 一ノ俣谷 (梓川の支流、山頂から1.5 km西に常念ノがある。)

交通・アクセス

最寄りの鉄道駅JR東日本大糸線穂高駅インターチェンジ長野自動車道安曇野ICとなる。最も近い空港松本空港

常念小屋が、最寄りの山小屋である。

当地は日本郵便により交通困難地の指定を受けているため、地外から郵便物を送付することは出来ない。

常念岳の風景

常念岳の山容

東側(安曇野)や西側などから眺めた時の、ピラミッド型のその山容がその特徴である。

170px 160px 160px 160px 142px
赤岩岳から望む
常念岳
南側の登山道から望む
秋の常念岳
蝶ヶ岳から望む
常念岳と前常念岳
槍ヶ岳から望む
常念岳
槍ヶ岳から望む
常念岳とご来光

常念岳山頂からのパノラマ展望

山頂は蝶ヶ岳と共に、穂高岳から槍ヶ岳へと連なる山並みを望める絶好の展望台である。

295px 345px
焼岳 - 穂高岳 - 槍ヶ岳、下方に梓川 (秋の紅葉) 南岳 - 槍ヶ岳 - 大天井岳、遠景は鷲羽岳 - 水晶岳 (春の残雪)

テレビ番組

脚注

  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 深田久弥 『日本百名山』 朝日新聞社、1982年7月、pp.213-216。ISBN 4-02-260871-4。
  2. 常念岳の情報(登山天気)”. 日本気象協会. . 2011閲覧.
  3. 3.0 3.1 3.2 『コンサイス日本山名辞典 修訂版』 三省堂、1979年3月、p.258。ISBN 4385154031。
  4. 確率論的地震動予測地図の説明 (PDF)”. 地震調査研究推進本部 (2005年3月23日). . 2016閲覧.
  5. 雪形「常念坊」くっきり 北ア・常念岳”. 信濃毎日新聞 (2009年4月23日). 2009年4月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2011閲覧.
  6. 田淵行男 『山の紋章 雪形』 学習研究社、1981年7月、ASIN B000J7X4HU。
  7. ウォルター・ウェストン 『日本アルプスの登山と探検』 青木枝朗訳、岩波書店、1997年6月、pp.372-373。ISBN 4003347412。
  8. 『新日本山岳誌』 日本山岳会ナカニシヤ出版、2005年11月、pp.942-943。ISBN 4779500001。
  9. 9.0 9.1 柳原修一 『北アルプス山小屋物語』 東京新聞出版局、1990年6月、pp.71-74。ISBN 4808303744。
  10. 『目で見る日本登山史』 山と溪谷社、2005年10月、pp.172-175。ISBN 4635178145。
  11. 『北アルプス山小屋案内』 山と溪谷社、1987年6月、pp.146-148。ISBN 4635170225。
  12. 中部山岳国立公園区域の概要”. 環境省自然保護局. . 2011閲覧.
  13. 『切手と風景印でたどる百名山』 ふくろう舎、2007年6月、p.361。ISBN 4898062768。
  14. 田淵行男 『高山蝶―生態写真』 朋文堂、1959年、ASIN B000JARCV6。
  15. 15.0 15.1 さわやか自然百景 北アルプス常念岳(2010年9月11日放送)”. NHK. . 2011閲覧.
  16. 16.0 16.1 16.2 『槍ヶ岳・穂高岳 上高地』 昭文社〈山と高原地図 2011年版〉、2011年3月。ISBN 9784398757777。
  17. 登山ガイド”. 安曇野市. . 2016閲覧.
  18. 常念岳登山”. 安曇野市立豊科南中学校 (2010年7月22日). . 2011閲覧.
  19. 上高地のスポット紹介”. 上高地公式Website. . 2016閲覧.
  20. 『槍・穂高連峰』 山と溪谷社〈ヤマケイ アルペンガイド7〉、2008年5月。ISBN 9784635013512。
  21. 『日本登山図集』 日地出版、1986年10月、pp.44-47。ISBN 45270023333。
  22. 『山と溪谷2011年1月号付録(山の便利手帳2011)』 山と溪谷社、2010年12月、pp.159-160、ASIN B004DPEH6G。
  23. 信州大学 医学部山岳部 常念診療所”. 常念診療所. . 2011閲覧.
  24. 24.0 24.1 24.2 基準点成果等閲覧サービス”. 国土地理院. . 2011閲覧.
  25. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。 「hyoko」という名前の引用句に対するテキストが指定されていません
  26. 地図閲覧サービス(常念岳)”. 国土地理院. . 2011閲覧.
  27. NHKクロニクル 保存番組検索結果詳細 日本百名山 常念岳”. NHK. . 2016閲覧.
  28. NHKクロニクル 保存番組検索結果詳細 小さな旅 シリーズ 山の歌 (2) ふるさとは雲の上に 信州・常念山脈”. NHK. . 2016閲覧.
  29. おすすめの山(常念岳)”. NHK日本の名峰. 2012年1月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2011閲覧.
  30. おひさまのあらすじ(第1週)”. NHK. 2012年1月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2011閲覧.
  31. おひさまの関連情報”. NHK. 2011年12月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2011閲覧.、実際の撮影は安全性などを考慮して、常念岳ではなく美ヶ原の王ヶ鼻で行われた。

関連書籍

  • 寺島蔵之 『白樺の木舟 常念岳二重遭難記』1981年5月、ASIN B000J7TN6G。 - ドキュメンタリー
  • 小口和利 『北アルプス常念刻々 小口和利写真集』 郷土出版社、1996年6月。ISBN 4876633304。 - 常念岳の写真集
  • 『日本200名山』 昭文社、1992年4月、p.163。ISBN 4398220011。
  • 『日本の山1000』 山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、1992年8月、pp.418-419。ISBN 4635090256。
  • 『日本三百名山』 毎日新聞社、1997年3月、p.161。ISBN 4620605247。
  • 梓林太郎 『霧の常念岳殺人事件』 有楽出版社、2004年6月。ISBN 440860271X。 - 山岳ミステリー小説
  • 『常念岳・燕岳』 集英社〈週刊 ふるさと百名山 15号〉、2010年9月、ASIN B0046ZYQKU。 - 名山紹介ガイド
  • 鈴木ともこ 『山登りはじめました2 いくぞ!屋久島編』 メディアファクトリー、2011年3月、pp.33-76。ISBN 978-4840138093。 - コミックエッセイ

関連項目