ダイキン工業
ダイキン工業株式会社(ダイキンこうぎょう、英名:DAIKIN INDUSTRIES, Ltd.)は、日本の大阪府大阪市に本社を置き、世界五大陸38ヶ国に拠点を持つ空調機、化学製品の世界的メーカーである。略称は「ダイキン」。空調事業の売上高は2010年からキヤリア社を抜き世界第1位、またフッ素化学製品でもデュポン社に次いで世界第2位、換気事業においても世界第1位のシェアを誇る。約150か国に事業展開し海外売上比率は7割、全従業員の8割が日本国外で働いている。日経平均株価採用銘柄。
Contents
概要・沿革
- 1924年(大正13年)10月25日 - 創業者の山田晁により合資会社大阪金属工業所として創業される。
- 1934年(昭和9年)2月11日 - 大阪金属工業株式会社として改組・設立(代表取締役:山田晁、取締役:加藤剛介・岡村一夫、監査役:松田隆亮)。当時の主な製品は内燃機関、精密機械、航空機部品などであった。
- 1936年(昭和11年) - 南海鉄道(現・南海電気鉄道)2001形向けに日本初の鉄道車両用の冷房ユニットを製造している。また、戦時には海軍イ号潜水艦の空調設備も手掛けていた。当時の潜水艦において、冷房装置の装備は画期的であり、南太平洋での長期作戦行動を可能とした一因である。
- 1951年(昭和26年) - 日本初のエアコン開発に成功。ビルなどの業務用空調設備を得意とし、現在も40 %という圧倒的なトップシェアを誇っている。また、家庭用ルームエアコンでは日本国内シェアトップのパナソニックに次いで2位。これは、冬季の加湿機能と夏季の除湿機能を併せ持つルームエアコン「うるるとさらら」がヒットしたことに加え、競合する家電メーカーのような系列販売店網を持たないゆえ、販売力の強い大手家電量販店チェーンへ積極的に販路を開拓したことが功を奏したものと思われる。
- 1951年(昭和26年) - 迫撃砲弾の生産を開始した[1]。
- 1963年(昭和38年) - 商号を「大阪金属工業株式会社」からダイキン工業株式会社に変更[2]。
- 1972年(昭和47年) - 欧州現地法人として「ダイキンヨーロッパ」を設立、その後アジア・オセアニア、北米・中南米にも生産・販売拠点を設け世界的に事業を広げている。海外ではダイキンブランドの確立に成功し高級の証として認識されている。
- 2006年(平成18年)5月 - 大手空調メーカーのOYLインダストリーズ(マレーシア)を買収。買収後は売上高1兆円を突破し、経常利益も1000億円超を見込んでいる。相互の得意技術の補完とOYLの持つアメリカ販売網(OYL傘下で、業務用空調で世界4位のマッケイ・インターナショナルが中心)を利用してアメリカでの空調事業へ再進出。
- 2008年(平成20年) - 環境省からエコファースト企業として認定。環境省には2010年度までに生産時の温室効果ガスのグループ総排出量を二酸化炭素換算で140万トン以下(2005年度比で50%以上)に削減することや国内のフッ素化学工場におけるHFCおよびPFC排出量を2010年度までに2005年度比90%以上の削減となる15万トン以下にすることなどを約束した。国内のみならず消費電力削減効果の高いインバータ商品を、中国市場ではインバーター機を、中国や北米、欧州ではハイブリッド油圧商品を普及させることも併せて約束した。
- 2012年(平成24年) - アメリカの住宅用空調大手のグッドマン・グローバルを買収し、北米市場でのシェア拡大に向け事業拡大。
かつて1934年に住友金属工業(現:新日鐵住金)が資本提携を行い大株主になって以来住友グループの一員として活動し、住友出身者を役員に据えてきた。しかしながら現在では多数の金融機関が株式を握り住友金属工業から完全に資本独立している。住友グループとは主要株主に三井住友銀行が入ることで繋がりを維持している、一方で三菱グループである三菱東京UFJ銀行や外資であるバンク・オブ・ニューヨーク・メロン、ステート・ストリート、BNPパリバ、ノルウェー政府年金基金も主要株主に名を連ね関係が強まっている。また企業ではパナソニックとトヨタとの資本関係を持っている。
- 2013年(平成25年) - ルームエアコン『うるさら7』が、第5回ものづくり日本大賞「内閣総理大臣賞」、省エネ大賞「経済産業大臣賞」、「レッド・ドット・デザイン賞」など、数々の賞を受賞。
- 2014年(平成26年) - 創業90周年記念 社会貢献事業 『“空気をはぐくむ森”プロジェクト』をスタート。経済産業省主催の「キャリア教育アワード」で当社の環境教育プログラムが優秀賞を受賞。
- 2015年(平成27年) - Goodman社が米国・テキサス州に新拠点を設立。『ダイキン工業 90年史』を発刊。米国政府より「環境貢献企業」に認定。
- 2016年(平成28年) - イタリアの業務用冷凍・冷蔵庫メーカー ザノッティ社を買収。北欧のエアフィルターメーカーディンエア社を買収。
主な生産拠点と品目
- 堺製作所 金岡工場(堺市北区)、業務用エアコン
- 堺製作所 臨海工場(堺市西区)、業務用エアコン・圧縮機
- 滋賀製作所(草津市)、家庭用エアコン・業務用エアコン
- 淀川製作所(摂津市)、フッ素化学製品・油圧機器・砲弾・誘導弾用弾頭・航空機部品
- 鹿島製作所(神栖市)、フッ素化学製品
- 上海大金空調有限公司(中華人民共和国 上海市)、家庭用エアコン・業務用エアコン
- 大金機電設備(蘇州)有限公司(中華人民共和国 蘇州市)、圧縮機
- ダイキン インダストリーズ タイランド(タイ王国 チョンブリー県)、家庭用エアコン・業務用エアコン
- ダイキン コンプレッサー インダストリーズ(タイ王国 ラヨーン県)、圧縮機
- ダイキン ヨーロッパ N.V.(ベルギー オーステンデ)、家庭用エアコン・業務用エアコン
- ダイキン インダストリーズ チェコ(チェコ共和国 ピルゼン)、家庭用エアコン
- ダイキン デバイス チェコ(チェコ共和国 ブルノ)、圧縮機
- ダイキンアメリカ(アメリカ合衆国 アラバマ州) - フッ素化学製品
- ダイキンケミカルフランス(フランス共和国 リヨン) - フッ素ゴム製品
関連会社
- ダイキンHVACソリューション北海道
- ダイキンHVACソリューション東北
- ダイキンHVACソリューション北陸
- ダイキンHVACソリューション新潟
- ダイキンHVACソリューション東京
- ダイキンHVACソリューション東海
- ダイキンHVACソリューション近畿
- ダイキンHVACソリューション中四国
- ダイキンHVACソリューション九州
- ダイキンHVACソリューション沖縄
- オーケー器材
- ダイキン・コンシューマ・マーケティング
- ダイキンエアテクノ
- ダイキンアプライドシステムズ
- 日本無機
- ダイキンサンライズ摂津(障害者雇用特例子会社)
- ダイキンレクザムエレクトロニクス(レクザム(旧:隆祥産業)との合弁)
- ダイキントレーディング
- 大金空調香港有限公司
- サイアムダイキンセールスリミテッド(タイ)
- ACEダイキンPTEリミテッド(シンガポール)
- ダイキンイタリアS.P.A
- ダイキンフランスS.A.
- ダイキンドイツ
- ダイキンユーエスINC
- ダイキンアルゼンティーナ
- ダイキンアメリカ
- ダイキンエアコンディショニングインド社[3]
なお、一時期、ダイキンが住友金属から買収して子会社化していたイズミフードマシナリについては保有株を全て放出、現在同社は住友重機械の子会社である新日本造機の完全子会社となっている。また、2009年(平成21年)秋にも日本板硝子から空調用フィルターのトップメーカー・日本無機(元日立化成子会社)を買収した。
主な製品
空調製品
- スカイエア(FIVE STAR ZEAS、Eco-ZEAS、個別◎ZEAS-Q、ホッとエコZEAS)
- ビル用マルチパッケージエアコン(VRV シリーズ)
- 更新用個別運転マルチエアコン(更新VRV Qシリーズ)
- 設備用パッケージエアコン
- ガスヒートポンプエアコン(アイシン精機との共同開発品[4])(ヤンマーエネルギーシステムにもOEM供給されている)
- 水配管レス調湿外気処理機(DESICA)
- 全熱交換機ユニット(「ベンティエール」)
- 家庭用ルームエアコン(「うるるとさらら」)
- エコキュート(家庭用/業務用)
- 住宅用ヒートポンプ式温水床暖房(「ホッとく~る」、「ホッとエコフロア」)
- 遠赤外線暖房機(「セラムヒート」)(家庭用/業務用)
- 暖房専用機(「暖全ヒート」)
- ストリーマ放電式空気清浄機
- 除加湿ストリーマ空気清浄機(「クリアフォースZ」)
- 中低温用エアコン
- 電算機室用エアコン
特品冷熱製品
- 海上コンテナ用冷凍冷蔵装置
- 船舶用エアコン
化学関連
- フッ素樹脂・加工品
- フッ素ゴム
- フッ素離型剤 ダイフリー(DAIFREE)
- フルオロカーボンガス
- フッ素系撥水・撥油剤
- フッ素系機能剤
- フッ素系高機能塗料
油圧関連機器
- ハイブリッド冷却機器(オイルコンAKZ/AKZJ/AKZCシリーズ、チラーAKZWシリーズ、等々)
- ハイブリッド油圧機器(エコリッチEHUシリーズ、スーパーエコリッチEHU-Sシリーズ、スーパーユニットSUTシリーズ、等々)
- ハイドロメカ油圧機器
- 建機車両用油圧機器
特機
航空機部品
防衛省向け
- 96式40mm自動てき弾銃用擲弾
- 06式小銃てき弾
- 120mm戦車砲弾
- 105mm戦車砲弾
- 84mm無反動砲弾
- 81mm迫撃砲弾
- 120mm迫撃砲弾
- 155mmりゅう弾砲弾
- 50口径5インチ砲弾薬包(127mm速射砲弾)
- 62口径76mm砲弾薬包(76mm速射砲弾)
電子システム
- SpaceFinder
- Toon Boom Animation
- Scenarist
歴代社長
ダイキン盆踊り大会
CSR(地域貢献)および若手人材育成の一環として、国内拠点では淀川製作所(大阪府摂津市)・堺製作所金岡工場(大阪府堺市北区)・滋賀製作所(滋賀県草津市)・東京支社草加事業所(埼玉県草加市)のほか、中国やアメリカなどの海外拠点において、毎年8月頃敷地内で「ダイキン盆踊り大会」を開催している[5]。
1970年代から現在まで、ダイキン工業が主催し、同社健保および同社労組も協賛して行われ、周辺の地域住民を中心に毎年約2万人以上(淀川製作所)が来場する。
ダイキン工業では、本大会を「人材育成の要」と位置づけており、企画から運営の全てを、入社3~4年以内の若手社員が行なっている。そのため、大会の実行委員に選ばれた社員は、通常業務を大幅に免除される代わりに、大会の企画・ショーのリハーサル・広報宣伝活動・運営などの全てに専念する[6]。
ダイキン空調技術訓練校
ダイキン空調技術訓練校は現場に適応した講座内容で時代の変化に対応できる空調技術者の養成を目指して開校している。東京校と大阪校の2校あり、東京校は、茨城県つくば市のダイキン工業株式会社つくば研修所で短期課程施工コース、サービスコース、設備設計コース、大阪校は大阪府堺市のダイキン工業株式会社大阪研修所金岡スクールで、開講コースは短期課程施工コース、サービスコースを実施。
入校資格は、ダイキン東日本EI技能向上協会か西日本EI技能向上協会のいずれかの協会に加入の事業所従業員で、高等学校の卒業またはこれと同等以上の学力を有する者。なお、東京校のサービスコースはダイキン定例講習会の指定コース受講済者が該当。
不祥事
- 1988年(昭和63年)にフッ素化学製品に関わるココム(対共産圏輸出統制委員会)規制違反事件が明らかになった。
- 1999年(平成11年)から2008年(平成20年)の10年間に亘り、同社のサービス本部とサービス関連子会社に於いて、売上高の前倒し計上などの不適切な会計処理が繰り返し行われ、利益33億円の虚偽記載が行われていたことが、2009年(平成21年)4月10日に発覚した[7]。これを受け同社は4月30日に、、不正会計に直接関わった子会社の社長や役員ら計27人について、5人を解任、2人を諭旨退職、他にも出勤停止や減給などの処分とした[8]。
- 同社が大阪国税局の税務調査により、2013年3月期 - 2015年3月期の2年間に亘り、海外の子会社との取引を巡って約7億4,000万円の申告漏れ(うち約1億7,000万円分は意図的な所得隠し)を指摘されていたことが、2016年8月の各新聞報道によって判明した[9]。
イメージキャラクター
- 2016年現在、珠城りょうを家庭用エアコン「うるるとさらら」のCMに起用している。現在、テレビCMは主としてスポット枠にて不定期に30秒として流れる事が多い。
- かつては、神津善行・中村メイコ夫妻をはじめ、三根梓、西山茉希、篠沢秀夫、板東英二、岩城滉一、中居正広、ビビアン・スー、栗本奈央、石田雪乃などを起用して、家庭用エアコンのテレビCMを流していた(また、板東英二らは業務用エアコンCMにも出演していた)。また企業CMには松村雄基が出演したもの、下条アトムがナレーションを行ったもの、さだまさしが歌ったもの等もあった。
マスコットキャラクター
- ぴちょんくん(ルームエアコン「うるるとさらら」のイメージキャラクター。湿気を擬人化)
- おユぴちょんくん(ダイキンエコキュートのイメージキャラクター)
- クリアぴちょんくん(クリアフォースのイメージキャラクター)
- ロボぴちょんくん(ダイキン空気清浄機のイメージキャラクター)
- 換気ぴちょんくん(住宅用換気システム「デシカホームエア」のイメージキャラクター)
- あったかぴちょんくん(寒冷地専用エアコン「スゴ暖」のイメージキャラクター)
- ソーラーぴちょんくん(住宅用太陽光発電システム「スカイソーラー」のイメージキャラクター)
- プラズマぴちょんくん・ストリーマぴちょんくん(ダイキン空気清浄機のイメージキャラクター。双子)
提供番組
ユニフォームスポンサー
脚注
- ↑ ダイキン工業90年史
- ↑ 大阪の「大(ダイ)」と金属の「金(キン)」をつないだ「ダイキン」の略称に由来する。
- ↑ “DAIKIN CORPORATE NEWS”. . 2018閲覧.
- ↑ 室内機はダイキンが、室外機はアイシンが担当。
- ↑ “ダイキン工業 CSR・環境への取り組み「地域共生」地域社会の交流(日本)”. ダイキン工業. 2016年9月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2016閲覧.
- ↑ “ダイキン工業会長 井上礼之氏(2014年8月28日放送)”. 日経スペシャル カンブリア宮殿. テレビ東京. 2014年10月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2016閲覧.
- ↑ “ダイキン10年間不適切会計処理、利益33億円虚偽記載”. MSN産経ニュース (産経新聞社). (2009年4月10日). オリジナルの2009年4月13日時点によるアーカイブ。
- ↑ “10年に及ぶ不正会計で5人を解任 ダイキン、当時の本部長ら”. MSN産経ニュース (産経新聞社). (2009年4月30日)
- ↑ “ダイキン 所得隠し、7.4億円申告漏れ…大阪国税指摘”. 毎日新聞 (毎日新聞社). (2016年8月5日) . 2016閲覧.
関連項目
- ダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメント
- DAIKIN エア・メッセージ
- BEMSアグリゲータ
- 神戸総合運動公園野球場(ほっともっとフィールド神戸) - 長年バックネット裏のスポンサーを勤めている。
- 大阪ドーム(京セラドーム大阪) - 大阪市の第三セクター時代から現在に至るまで運営会社に出資している。
外部リンク
- ダイキン工業株式会社 (日本語)・(英語)
- McQuay International (英語)
- American Air Filter (英語)