準軍事組織
準軍事組織(じゅんぐんじそしき)とは、「Paramilitary」(英語)、「Paramilitär」(ドイツ語)、「Paramilitaire 」(フランス語)などの英欧語に対する訳語で、国軍を除く官民の武装集団すべてを包含する多義的な用語である。
日本では政治学・社会学およびジャーナリズムの業界で、特に中南米関連の英欧語文献の翻訳に際して、民兵や軍閥(私兵)等を指した Paramilitary 等の翻訳語として準軍事組織を当てて使用してきた経緯がある。一方、日本の軍事関連業界においては、国家が有する軍事力の主力部隊として編制された軍隊とは別個の国境・領海の警備、暴動鎮圧、治安維持などに専門化された補助的な役割を担う武装組織に対して使用されている。
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概説
具体的には、警察や沿岸警備隊、国境警備隊、および国家憲兵などが挙げられる。国によっては、国境の警備から交通取締りなどの行政警察活動や犯罪捜査、災害救助など幅広く運用されている。戦時体制においては軍あるいは国防省の指揮系統に編入される場合や、ノルウェー沿岸警備隊の様に平時から軍の一部である場合もある。軍隊と警察の中間的な位置づけで論じられることも多いが、軍事力の構成要素としても、国や時代によって異なるものの決して小さいものではない。
政治的に微妙な地域における警察活動あるいは準軍事作戦を実施するにあたり、直接重装備の軍隊を投入したり、または貧弱な装備かつ国内法に縛られることも多い文民警察を派遣したりせずに済み、他国からの非難を浴びにくい存在でもある。例えば、国境付近に主力部隊を配置すれば隣接国が進攻を警戒し緊張状態を生み出しかねない。そこで、準軍事組織たる国境警備隊を配置し、ある種の緩衝地帯とする。
現存する主な準軍事組織
国境警備隊
沿岸警備隊
国家憲兵
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政党・政治団体の準軍事組織
政情の不安定な国家では政党や政治団体が政敵との抗争や党要人の身辺警護、党関連施設の警備などのために、事実上の「準軍事組織」と言える武力団体(私兵集団)を傘下に組織している場合がある。ヴァイマル共和政時代のドイツの各政党の武力団体が有名である。
- 赤衛隊 - ボリシェヴィキの政党軍隊であったが、第二次世界大戦後の1946年に、正式に旧ソ連の国軍たるソビエト連邦軍へと移行する。
- 中国人民解放軍 - もともとは中国共産党の政党軍隊であるが、現行憲法(82年憲法)において国家の中央軍事委員会が指揮権を有するものとされた。
- 国民革命軍 - 中国国民党の政党軍隊にして、北伐完了後の1928年以降は中華民国の事実上の国軍であった。第二次大戦後の国共内戦のさなかの1947年、中華民国憲法の制定とともに中華民国国軍へと移行するが、中国共産党に敗北した中華民国は中国大陸の実効支配領域を失陥する。
- ベトナム人民軍 - ベトナム社会主義共和国の国軍にして、ベトナム共産党の政党軍隊。憲法上は元首のベトナム国家主席が形式的な指揮権を持つとされるが、事実上は党中央軍事委員会が最高意思決定機関となっている。
- 突撃隊・親衛隊 - 国家社会主義ドイツ労働者党
- 鉄兜団、前線兵士同盟 - ドイツ国家人民党と同盟を結ぶ組織
- 赤色戦線戦士同盟 - ドイツ共産党
- 労働者階級戦闘団 - ドイツ社会主義統一党
- 国旗団 - ドイツ社会民主党
- 中核自衛隊、山村工作隊 - 日本共産党
- 日本赤軍、連合赤軍、東アジア反日武装戦線 - 日本の新左翼諸派組織により結成された。
フィクション作品における準軍事組織
- 首都圏治安警察機構 - コミックス・小説・映画・OVA「ケルベロス・サーガ」シリーズ(作:押井守)に登場。作中でも警視庁とは別個の組織。
- ジャパッシュ - コミックス「ジャパッシュ」(作:望月三起也)に登場。
- まほろば - コミックス「狂四郎2030」(作:徳弘正也)に登場。
- マルドゥク党 - アニメ映画「メトロポリス」(脚本:大友克洋、骨子・原案:手塚治虫)に登場。
- 図書隊- 小説・映画「図書館戦争」シリーズ(作:有川浩)に登場。図書館が図書館法(図書館の自由に関する宣言法)を根拠に良化隊に対抗するため設立した独自の組織。
- 良化隊- 小説・映画「図書館戦争」シリーズ(作:有川浩)に登場。メディア良化法に基づいて発足した法務省の下部組織。各都道府県に良化隊を設置し、公序良俗を乱すあらゆるメディアを取り締まる権限を持つ。
- クロマニヨン - 村上龍著の小説「愛と幻想のファシズム」に登場する私設武装組織。主人公が率いる極右政党の党軍として活躍。