ブロッコリー

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ブロッコリー英語: Broccoli、学名:Brassica oleracea var. italica)は、アブラナ科アブラナ属緑黄色野菜。花を食用とするキャベツの一種がイタリアで品種改良され現在の姿になったとされる[1]。和名はメハナヤサイ(芽花野菜、芽花椰菜)、ミドリハナヤサイ(緑花野菜、緑花椰菜)。カリフラワーはブロッコリーの変種である[2]。単位は「株」である。

語源は「茎」と言う意味のイタリア語である brocco を経て、「突起」「出っ歯」の意であるラテン語brocchus からきている。

地中海沿岸の原産。食用とするのはつぼみの状態の花序であり、収穫せずに栽培を続けると巨大になった花序に多数の黄色やクリーム色の花をつける。

品種はピクセル、エンデバー、グリーンベール、シャスター、パラグリーン、マーシャル、チャレンジャー、海嶺、雷鳴、緑炎、緑帝、緑笛、緑嶺などがある。

生産・流通

ファイル:Production Quantity of Cauliflower & Broccoli in Japan 1973-2012.png
日本のカリフラワーとブロッコリーの収穫量の推移(1973-2012年)
ファイル:Production Quantity of Cauliflower & Broccoli all of the world 1961-2012.png
世界のカリフラワーとブロッコリーの収穫量の推移(1961-2012年)
ファイル:2005cauliflower and broccoli.PNG
世界のカリフラワーとブロッコリーの生産地域(2005年)

日本での主産地は北海道(2012年収穫量:22,600t、栽培面積:2,440ha)、愛知県(同:15,700t、951ha)埼玉県(同:14,900t、1,260ha)であり[3]、市町村別では愛知県の田原市が全国で最も生産量が高い[4]

常温でも外見が変化しないカリフラワーに対し、ブロッコリーは収穫後ただちに低温保存しないと変色が進んでしまうことから、保存技術が未熟だったかつては、ブロッコリーの流通量は、カリフラワーに大きく水を開けられていた。しかし低温流通技術の開発や家庭における冷蔵庫の普及により、1980年代頃からブロッコリーの生産・流通が急速に拡大。現在、東京都中央卸売市場における取扱量では、ブロッコリーが約13万トン、カリフラワーは約2万トンと、かつての状況とは完全に逆転している[5]

日本における収穫量上位10都道府県(2012年)[3]

収穫量順位 都道府県 収穫量(t)
1 北海道 22,600
2 愛知県 15,700
3 埼玉県 14,900
4 香川県 9,050
5 長野県 7,210
6 長崎県 6,210
7 徳島県 6,090
8 鳥取県 5,800
9 群馬県 5,690
10 福岡県 5,180
全国計 137,500

世界のカリフラワーとブロッコリーの収穫量上位10か国(2012年)[6]

収穫量順位 収穫量(t)
1 中華人民共和国 9,500,000
2 インド 7,000,000
3 イタリア 414,142
4 メキシコ 397,408
5 フランス 344,414
6 ポーランド 306,776
7 アメリカ合衆国 303,450
8 パキスタン 224,000
9 ドイツ 176,692
10 エジプト 171,088
世界計 21,266,789

日本は14位で154,000tを生産する[6]

食材

緑色の花蕾を食用とする。ビタミンBビタミンCカロテン鉄分を豊富に含む。日本ではゆでてマヨネーズなどの調味料をつけて食べることが多いが、欧米ではサラダなどで生食されることも少なくない。スープシチューの具、炒め物、天ぷら糠漬け(主に茎)にすることもある。茎の部分の外皮は、繊維質で硬く食感が悪いことがあり、その場合は剥いてから調理するとよい。保存温度は低いほうがよく、野菜室程度の温度では花蕾が育ち花が咲くこともある。そうなると味と食感が落ちるが、食用は可能である。

また、発芽したての子葉胚軸を、カイワレダイコン同様スプラウトもやし)として食用にする。一般には、ブロッコリースプラウトと呼ばれる。

スルフォラファンイソチオシアネートの一種でアブラナ科野菜の中でもブロッコリーなどに含まれ、がん予防効果[7][8][9]ピロリ菌抑制効果[10]等があるとされている。

CYP1A2リガンド誘導剤)として作用することがわかっている。

ブロッコリーには、”インドール- 3-カルビノール(I3C)”と”インドリルメタン”が豊富に含まれ、女性ホルモンであるエストロゲンの働きを抑える効果がある。

トピック

アメリカ人とブロッコリー

ブロッコリーは、アメリカ合衆国において健康の象徴として親しまれる一方、子供の頃に無理矢理食べさせられた記憶を思い出させる野菜として語られる。後者に関しては、ジョージ・H・W・ブッシュが知られており、しばしばブロッコリー嫌いを公言したため農家からブロッコリーを大量に送りつけられる抗議活動を受けている。また、ブロッコリーは「嫌いな人は多い」というイメージを逆手に取り引用される例もある。例えば、2010年に国民皆保険制度を進める法律(オバマケア)が成立し、各地で強制的な保険料徴収に関して違憲性を問う裁判が行われたが、「週に何回ブロッコリーを食べるかを国が決めるのか?」(フロリダ地裁)、「保険の強制加入はブロッコリーの購買を強制するのと同じではないか?」(バージニア地裁)というようにブロッコリーを引き合いに出す議論も行われた[11]

ブーケとしての利用

結婚式では新婦によるブーケトスが行われることがあるが、新郎が幸せの象徴などの意味をもつブロッコリーを独身男性たちに向かってトスし、無事にブロッコリーをキャッチできた人が次の花婿となるというブロッコリートスが行われることがある[12]

参考画像

近縁種

はなっこりー
山口県でブロッコリーと中国野菜サイシンを掛け合わせた野菜[13]2003年市場に登場したが、まだ生産量は全国に流通するほどには達していない。
ロマネスコ(ロマネスク、ブロッコフラワーとも)
ブロッコリーに味の似たカリフラワーの変種。イタリア・ローマ近郊で開発され、1990年代よりヨーロッパで流通している。単にカリフラワーの形でブロッコリーのような緑色をしたものと、フラクタル図形をした多数の突起が特徴の2種類があり、味はカリフラワーに近い[14]。日本では「カリッコリー」「カリブロ[15]」等の名称でも流通している。
スティックセニョール
近年、サカタのタネにより開発された、ブロッコリーと中国野菜カイランを掛け合わせた野菜[16][17]。主に花と共に伸びる茎を食べるブロッコリーとして流通している。「茎ブロッコリー」とも呼ぶ。
アレッタ
近年、三重県のナコスで開発された、ブロッコリーとケールを掛け合わせた野菜[18]
あすっこ
島根県農業技術センターで開発された、ブロッコリーとビタミン菜(大阪白菜と搨菜を掛け合わせた野菜)を掛け合わせた野菜[19]

脚注

  1. 「旬を育てる 旬を味わう 野菜づくり大図鑑」藤田智・編著 講談社 より
  2. 「別冊やさい畑 野菜づくり名人虎の巻」家の光協会 より
  3. 3.0 3.1 作物統計調査>作況調査(野菜)>確報>平成24年産野菜生産出荷統計>年次>2012年”. e-Stat. 総務省統計局. . 2014閲覧.
  4. 豊橋田原広域農業推進会議|農産物輸出の推進|ブロッコリー”. 豊橋田原広域農業推進会議. . 2014閲覧.
  5. カリフラワーとブロッコリー、盛衰くっきり 変わる食卓2013年3月25日閲覧、朝日新聞デジタル
  6. 6.0 6.1 FAOSTAT>DOWNLOAD DATA” (英語). FAOSTAT. FAO. . 2014閲覧.
  7. Zhang, Y; Kensler, T. W.; Cho, C. G.; Posner, G. H.; Talalay, P. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1994 91, 3147–3150.
  8. Fahey, J. W.; Zhang, Y.; Talalay, P. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1997, 94, 10367–10372.
  9. Basten, G. P.; Bao, Y.; Williamson, G. Carcinogesis 2002, 23, 1399–1404.
  10. Fahey, J. W.; Haristoy, X.; Dolan, P. M.; Kensler, T. W.; Scholtus, I.; Stephenson, K. K.; Talalay, P.; Lozniewski, A. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2002, 99, 7610–7615.
  11. “Broccoli and Bad Faith”. PAUL KRUGMAN (ニューヨーク・タイムズ). (2012年4月29日). http://www.nytimes.com/2012/03/30/opinion/krugman-broccoli-and-bad-faith.html?_r=2&smid=tw-NytimesKrugman&seid=auto . 2012閲覧. 
  12. “結婚式の新定番 ブロッコリートスやラストバイト”. アメーバニュース. (2013年3月19日). オリジナル2014年1月13日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140113155632/http://yukan-news.ameba.jp/20130319-265 . 2015-6-24閲覧. 
  13. 山口県農林総合技術センター農業技術部 山口県オリジナル野菜はなっこりー
  14. フランス語版fr:Chou romanescoに詳しい解説がある。英語版en:Broccoflowerはオランダ原産との表記がノート上で疑問視されている
  15. 中原採種場株式会社 カタログ
  16. サカタのタネ スティックセニョール
  17. 農林水産省生産局知的財産課 品種登録ホームページ
  18. 県発祥新野菜:「アレッタ」収穫、親子料理教室も 「産地化へ」PR−−伊賀 /三重 毎日新聞 2015年3月9日
  19. 島根ワイド : 摘みたて塩ゆで春の味 八雲保育園で「あすっこ」収穫

関連項目