打者
打者(だしゃ)またはバッター (英: batter) とは、野球、ソフトボールまたはクリケットにおいて、投手が投げるボールを、バットを用いて打撃する選手のことである。
クリケットの打者は一般にバッツマン (batsman) と呼称されるが、オーストラリアではバッターと呼ばれている。
以下野球の打者について説明する。
Contents
概要
チームはあらかじめ9人の選手の攻撃時の打順を定めておく。これに従って、各選手は自分の番が来たときに打者となり、バットを持って打者席(バッタースボックス、打席ともいう)に立つ。打席は本塁を隔てて一塁側と三塁側に設けられているが、どちらを用いるかは打者の打ち方によって選択してよい。三塁側に位置した打者を右打者、または右打ち、一塁側に位置した打者を左打者、または左打ちという。一般的な打者は右打ちまたは左打ちのいずれか一方であるが、左右両方の打ち方をすることができる者もおり、スイッチヒッターと呼ばれる。
打席に立った打者は、打撃姿勢をとって、バットを使って投球を打つ。ただし、実際にその投球を打つかどうかは、打者の判断による。打者が打たなかった(打てなかった)場合は、球審によりストライクまたはボールが宣告される。
打者は、安打を打ったり、四球・死球などで出塁すると走者になる。特に、打者が一塁に進塁するまで、または打順が次の打者に回るまでは、打者走者(だしゃそうしゃ)と呼ばれて区別されることもある。打者は、何らかの理由でアウトになってグラウンドから退くか、走者として出塁することで、打撃を完了する。これにより、打者には打席「1」が記録される。打撃が完了したら次の番の打者に打順が回る。
投手成績としての「打者」は対戦した打者ののべ数である。前述の「打者が打撃を完了」すると、結果に関わらずその際に登板している投手に打者「1」が記録される。
以下、この項目では打者走者についても述べるが、走者としての規則の詳細は走者の項も参照されたい。
打者がアウトになる場合
次の場合、打者はアウトになる。
- フェア飛球またはファウル飛球(ファウルチップを除く)が野手に正規に補らえられた場合[1]。
- 第3ストライクを宣告されたとき(これを三振という)に、
- 2ストライク後の投球をバントして、ファウルボールになった場合(しばしば、スリーバント失敗と呼ばれる。第3ストライクが宣告されるので、これも三振である)[5]。
- インフィールドフライが宣告された場合[6]。
- 2ストライク後、打者が打った(バントの場合も含む)が、投球がバットに触れないで打者走者に触れた場合[7]。
- まだ内野手が触れていない打球に、打者走者がフェア地域で触れた場合[8]。
- 打者が打つかバントしたフェアの打球に、フェア地域内でバットが再び当たった場合[9]。
- 打者が、打つか、バントした後一塁に走るにあたって、まだファウルと決まらないままファウル地域を動いている打球を、どんな方法であろうとも故意に狂わせた場合[10]。
- 第3ストライクの宣告受けた後、またはフェアボールを打った後、一塁に触れる前に、その身体か一塁に触球された場合[11]。
- 一塁に対する守備が行われているとき、本塁一塁間の後半を走るに際して、打者がスリーフットラインの外側(向かって右側)またはファウルラインの内側(向かって左側)を走って、一塁への送球を捕らえようとする野手の動作を妨げたと審判が認めた場合[12]。
- 打球の処理する野手を避けるためにスリーフットラインの外側(向かって右側)またはファウルラインの内側(向かって左側)を走ることはさしつかえない[12]。
- 故意落球が宣告された場合[13]。
- バッターボックスから完全に片足または両足をはみ出した状態で、バットに投球を当てた場合(これを反則打球という)[14]。
- バッターボックスから完全に足をはみ出すとは、バッターボックスを示している白線の外に足の全部を出すことをいい、足が白線にかかっている(白線を踏んでいる)限りは、反則打球にはならない。
打者が安全に進塁できる場合
打球が次のようになった場合には、打者は安全に進塁することが認められる。
- 本塁が与えられる場合
- 本塁打を打った場合。または、明らかに本塁打となるであろう打球が、観衆や鳥、野手が投げつけたグラブや帽子などに当たった場合。
- 3個の安全進塁権が与えられる場合
- 野手が帽子やマスク、グラブやミットなどを本来つけているところから離したり、投げつけたりして打球に故意に触れさせた場合。この場合はボールインプレイなので、打者走者はアウトを覚悟で本塁に進塁してもよい。なお、投げつけても、打球に触れなければそのまま続行である。
- 2個の安全進塁権が与えられる場合
- 打球が、バウンドしてからスタンドに入った場合、または一度野手が触れて進路が変わった打球が、ファウルスタンドに入った場合。または、フェンスやスコアボード、木などにはさまった場合。日本ではこれらはエンタイトルツーベースと呼ばれる。この場合はボールデッドである。
また、次の場合には打者に安全に一塁が与えられる。打者は進塁し、一塁に触れなければならない。
なお、上記のうち、死球・打撃妨害・守備妨害はボールデッドであるが、四球はボールインプレイである。四球で一塁に進んだ打者走者が塁から離れれば、触球されるとアウトになる。
上記の場合、打者が一塁に触れることは義務付けられている。最終回または延長回の裏で満塁のとき、上記のようなプレイで押し出しになり、試合が決する(サヨナラゲーム)場合、三塁走者と打者走者には進塁の義務がある。適当な時間が経っても三塁走者・打者走者が本塁・一塁に進まず、かつ塁に触れなかったときには、守備側のアピールを待つことなく、審判員はアウトを宣告する。
用語
- アベレージヒッター
- 安定した打率を残す打者。「巧打者」と表現されることもある。
- アンティルボーラー(アンティルヒッター)
- 積極的に打ちにいかず、何球か見送る打者を指す。「待球スタイル」とも呼ばれる。四球狙いや、なるべく投手に多くの球数を投げさせるタイプの打者と、バリー・ボンズに代表されるような打てる球が来るまでは打ちにいかない「好球必打」の打者に分かれる。
- オポサイトヒッター
- 流し打ち(opposite field)をする打者のこと。特に、自然と打球が反対方向に流れる打者を指す。二岡智宏、千葉茂、マイク・ピアッツァらが典型例で、本塁打のほとんどが(3人とも右打者なので)ライト方向に飛ぶ。
- ギャップヒッター
- 外野手の間(右中間・左中間)を抜ける打球を打つのが得意な打者を指す。二塁打を量産する選手に多いが、あくまで外野手の間を抜ける打球なので、フェンス直撃や外野手の頭を越える場合ではほとんど呼ばない。
- グラウンドボールヒッター
- ゴロをよく打つ打者。
- クラッチヒッター
- 得点圏打率の高い打者、勝負強い打者のこと。
- スプレーヒッター
- 引っ張り・流し打ちで広角に打球を打ち分けることができる打者のこと。
- スラップヒッター
- コンパクトなスイングから内野手の間や頭上を抜ける当たりを狙う打者のこと。
- スラッガー
- 主に、飛距離のある打球を飛ばせる打者、本塁打の多い打者を指す。「大砲」「長距離砲」「強打者」などと表現される。打率は高くないが本塁打の多い打者を指す打者が多いが、本塁打を主体に打率、打点の三部門すべてで高い成績を残せる選手を指す場合もある。「ホームランバッター」とも呼ばれる。IsoPが高い数値である打者が、特に該当する。
- ハイボールヒッター
- 高めの球に強い打者のこと。
- バッドボールヒッター
- ボール球でも積極的に打ちにいく打者を指す。特に、ボール球でも安打にできる能力を持っている打者で、アベレージヒッターであることが多い。また、ボール球を打ってしまうことで四球が極端に少ない事が多く、また三振も少ない。イチロー、A.J.ピアジンスキーが代表例である。一方、ボール球に手を出して三振してしまう打者はフリースインガーと呼ばれる(なお、A.J.ピアジンスキーは三振が少ないながら、初球打ちが非常に多いため、タイプとしてはバッドボールヒッターだが、フリースインガーと呼ばれている)。
- フライボールヒッター
- フライ性の打球をよく打つ打者。
- フリースインガー
- どんな球にでも手を出してしまうバッドボールヒッターのうち、選球眼やミート技術が乏しい打者のこと。このような打者は、打率が高くなりづらく、ボール球スイング率が高く、四球が少なく、三振が多い傾向が強くなる。
- プルヒッター
- 引っ張りが多い打者。このタイプの打者は打球方向が偏るためしばしば極端な守備隊形(シフト)が敷かれる。代表的な打者として、中田翔、T-岡田、松田宣浩などが挙げられる。
- ラインドライブヒッター
- ライナー性の打球をよく打つ打者。パワーによってライナー性の打球となる打者と、バットコントロールによって意図的にライナー性の打球を打つことができる打者の二通りがある。前者はスラッガーに多く、後者はフリオ・フランコなど痛烈な打球を一二塁間、三遊間に飛ばして安打にできるアベレージヒッターに多い。
- ローボールヒッター
- 低めの球に強い打者のこと。