エティハド航空
エティハド航空(エティハドこうくう、亜: الاتحاد للطيران; al-ittiḥād liṭ-ṭayarān、英: Etihad Airways)は、アラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国アブダビに本拠を置く国営の航空会社である。アラブ航空会社機構 (Arab Air Carriers Organization) の一員。エティハド(اتحاد、イッティハード)とは連合の意。
イッティハード航空と表記されることもある。 また、設立当時はエチアード航空とも呼ばれていた。 [1]
イギリス・スカイトラックス社による航空会社の格付けで、実質最高評価の「ザ・ワールド・ファイブ・スター・エアラインズ(The World's 5-Star Airlines)」の認定を得ている[2]。
Contents
概要
エティハド航空はアラブ首長国連邦の第2代大統領ハリーファ・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーンによって、2003年7月にアラブ首長国連邦の航空会社として設立。アブダビ首長国のいわゆるフラッグ・キャリアで、同じUAEのドバイを拠点とするエミレーツ航空と並び、UAEおよび中東の代表的な航空会社である。エミレーツ同様に3大航空連合には加盟していないが、アライアンスを超えた多種多様なコードシェア便で拡大を図っている。
なお同社設立までは、アブダビ首長国がバーレーンやオマーンとともに出資して運航していたガルフ・エアが同国のフラッグ・キャリアであったが、エティハド航空設立に伴いアブダビ首長国は2005年にガルフ・エアへの出資を取りやめた。
2003年11月に商業運航を開始してから、潤沢なオイルマネーを背景に新規機材を投入し、2006年6月までに一か月に一路線ずつ開設という驚異的な成長を遂げた。2004年には5機のボーイング777-300ERと24機のエアバス機(4機のA380を含む)の総額80億ドルに及ぶ機材発注を行う。
ハブ空港のアブダビ国際空港を中心に、中東やアフリカなどの他、アジア各地やヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカ、オセアニアなど世界各地に路線を展開している。
M&Aによる拡大
2010年代に入ってからはM&Aによる拡大路線を取っており、2014年現在以下の航空会社に出資している。ヴァージン・オーストラリア以外はほぼ経営権を握っており、事実上の傘下企業となっているが、経営難によりその後傘下から外れた会社もある。
- エア・セイシェル(セーシェル共和国)- 2012年に株式の40%を取得
- ダーウィン・エアライン(スイス)- 2013年に株式の33.3%を取得[3]
- エア・セルビア(セルビア)- 2013年8月に株式の49%を取得
- ヴァージン・オーストラリア(オーストラリア)- 2014年5月に出資比率を21.24%に引き上げ[4]
- アリタリア-イタリア航空(イタリア)- 2014年8月に株式の49%を取得したが[5]、2017年5月に経営破綻し傘下から事実上離脱
ただアリタリアの経営破綻に加え、2017年10月には提携先のエア・ベルリンが運行を停止するなど、傘下企業の中には経営が厳しいものも多く、それらに足を引っ張られる形でエティハドの連結業績も2016年・2017年と赤字に転落し業績不振に陥っている[6]。このため従来ライバルと見られていたエミレーツ航空との協力関係強化に走っており、操縦士の2社兼業を認めるなどの施策を打ち出している[6]。
保有機材
2013年11月17日、ボーイング 777-8Xやボーイング 787-10、エアバスA350 XWBなどの航空機を大量に発注した。同社は777-8Xのローンチカスタマーとなる[7]。 なお、エアバスA350-1000は、設計変更などの開発の遅れが生じたため、12機まで減少している[8]。 2015年の787とA380導入を機に新塗装をまとっている。
エティハド航空の機材は以下の航空機で構成されている(2018年9月現在)
機種 | 保有数 | 発注数 | 座席数 | 備考 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
F | C | Y | Total | ||||
エアバス A320-200 | 22 | - | - | 16 | 120 | 136 | |
エアバス A321-200 | 10 | - | - | 16 | 158 | 174 | |
エアバス A321neo | - | 26 | 未定 | ||||
エアバス A330-200 | 18 | - | - | 22 | 240 | 262 | 1機は"Manchester City Football Club"の特別塗装を施している。 |
エアバス A330-300 | 6 | - | 8 | 32 | 191 | 231 | 1機は"Visit Abu Dhabi 2018"の特別塗装を施している。 |
エアバス A350-900 | - | 40 | 未定 | ||||
エアバス A350-1000 | - | 22 | 未定 | 2018年より受領をする予定。 | |||
エアバス A380-800 | 10 | - | 11 | 70 | 417 | 498 | 一席はレジデンスを含む。 |
ボーイング 777-300ER | 19 | - | - | 28 | 384 | 412 | |
- | 40 | 340 | 380 | ||||
8 | 40 | 280 | 328 | ||||
ボーイング 777-8 | - | 8 | 未定 | ローンチカスチマー | |||
ボーイング 777-9 | - | 17 | 未定 | ||||
ボーイング 787-9 | 21 | 21 | - | 28 | 271 | 299 | |
8 | 28 | 199 | 235 | ||||
ボーイング 787-10 | - | 30 | - | 32 | 304 | 336 | 2018年より受領をする予定。 |
ボーイング 777F | 5 | - | - | 貨物機。 | |||
Total | 111 | 164 |
- Etihad Airways Airbus A380-861 at Finkenwerder.jpg
エティハド航空のエアバスA380。A380,B787の導入に合わせて機体デザインが一新されている[10]
- Etihad.airways.1.750pix.jpg
エティハド航空のエアバスA330
- Etihad a330-200 a6-eys manchester arp.jpg
エティハド航空のエアバスA330-200
- Etihad.a340-300.a6-eyc.arp.jpg
ロンドン・ヒースロー空港に着陸中のエティハド航空A340-300
- Etihad Airways aircraft at Narita airport.jpg
成田空港に駐機中のエティハド航空機
就航都市
サービス
長距離路線ではファーストクラス(ファーストスイートもしくはファーストアパートメント)、ビジネスクラス(ビジネス・ステューディオ)、エコノミークラス(エコノミースマートシート)の3クラス制で、短中距離路線はビジネスクラスとエコノミークラスの2クラス制である。なお、エアバスA380のみファーストクラスより最上級クラスの「ザ・レジデンス」を2席用意している。「ザ・レジデンス」は座席を設けた個室の「リビングルーム」の他に専用のベッドルーム、バスルームを配したものとなっている[17]。
2009年8月から投入する新ファーストクラスは個室タイプで、室内は全長2m・幅75.6cmのフルフラットベッドになる大型シートを採用。シートはイタリアのポルトローナ・フラウ社製を使用するなどインテリアにもこだわり、個室の入り口もアラビア風のドアで演出。その他、マッサージ機能やパソコン・iPod・イーサネットケーブルなどのソケットが設置される。
上級クラスでは、テレビ・ラジオや600時間以上の映画、ゲームを楽しめるAVOD(オーディオ・ビデオ・オン・デマンド)エンターテインメント機付きの23インチワイドスクリーンLCD、専用ワードローブ、ミニバーを設置している。新ファーストクラスはエアバスA340-600に12席を設置し、2010年末までに多機種へも順次展開する予定。2011年からパナソニックアビエーション(パナソニックの現地法人でIFEの提供会社)と10年間にわたって機内エンターテイメント(IFE)の独占供給の契約を締結。但し、2012年12月現在、映画のジャンルに東南アジア映画、韓国映画があっても、邦画のカテゴリはない。2011年からボーイング777-300ERやエアバスA380にeX2を供給する事やエアバスA350 XWB受領後には最新のeX3シリーズを搭載する[18]。
マイレージ・プログラムの Etihad Guest は、ニュージーランド航空、アリタリア-イタリア航空、全日本空輸、アメリカン航空、アシアナ航空、バンコク・エアウェイズ、ブリュッセル航空、ジェットエアウェイズ、オマーン・エア、パシフィック・ブルー、スリランカ航空、ウクライナ国際航空、V オーストラリア、ヴァージン・オーストラリアと提携している。また前述の「Etihad Airways Partners」には、系列のダーウィン・エアライン、エア・セルビア、エア・セイシェルに加えエア・ベルリン、ジェットエアウェイズが参加しているが、一方でアリタリアやヴァージン・オーストラリアは参加を見送っている[19]。
エティハド航空パートナーズ
2014年10月には独自の航空連合として「Etihad Airways Partners」を立ち上げた[19]。
コードシェア
エティハド航空は下記航空会社とコードシェアを行っている(2017年11月現在)。
受賞歴
- 2004、2005、2006年:World’s Leading New Airline (11th,12th,13th World Travel Awards)
- 2006、2007年:World’s Leading Flatbed Seat (13th,14th World Travel Awards)
- 2007年:World’s leading travel television commercial (14th World Travel Awards)
- 2009年:World’s leading Airline(World Travel Awards2009)
スポンサー
- 2007年と2008年初期までにおいて、F1世界選手権に参戦するスパイカーF1チームと後継チームであるフォース・インディアチームのメインスポンサーとなっていた。
- しかし、フォース・インディアのオーナーとなったビジェイ・マリヤの所有するキングフィッシャー航空の存在がありバッティングを回避するため、2008年開幕戦からスクーデリア・フェラーリのスポンサーとなっており、リアウィング後ろ側にロゴが配されている。
- 2009年から開催されるF1アブダビグランプリのタイトル・スポンサーとなった。
- イングランドプレミアリーグのチェルシーFCのオフィシャルエアラインであった。
- 2010-11シーズンより同じくプレミアリーグのマンチェスター・シティFCの胸スポンサー。また2011年7月には本拠地のシティ・オブ・マンチェスター・スタジアムの命名権を獲得し「エディハド・スタジアム」と称している。その他メジャーリーグサッカー、MLSのニューヨーク・シティ、メルボルン・シティ、クリケットイングランド代表、IPLのムンバイ・インディアンズ、アル・アイン、全アイルランドシニアハーリング選手権、シドニー・オペラハウス、アブダビHSBCゴルフ選手権のオフィシャルエアラインとして指定されている。
- またオーストラリア・メルボルンの競技場「ドックランズ・スタジアム」の命名権を獲得し、「エディハド・スタジアム(上述のスタジアムとは別)」と称されている。
- 2010年、成田就航に合わせ京成電鉄の「スカイライナー」に使用されるAE100形電車にラッピング広告を実施。
- 2015年、資本提携関係にあるアリタリア・イタリア航空との共催特別塗装機「ミラノEXPO2015特別塗装機」(A330型機)を運航しており、2月にはエティハド航空定期便にこの特別塗装機が投入され、愛知万博10周年記念イベント開催中の中部国際空港に飛来し、万博開催都市同士の交流がなされた。なお同博覧会では両者の共同で「エディハド・アリタリア・パビリオン」として出展している。
脚注
- ↑ “アラブ首長国連邦の産業基盤 (PDF)”. 一般財団法人 中東協力センター. p. 7. . 2015閲覧.
- ↑ 5-Star Airline Rating SKYTRAX
- ↑ エティハド航空、ダーウィンエアラインの株式を取得し「エティハド・リージョナル」にリブランド! - Mapionニュース・2013年11月18日
- ↑ Etihad Airways stake in Virgin Australia rises to 21.24 per cent - TheNational・2014年5月19日
- ↑ エティハド航空、アリタリア株49%取得で合意 - ウォール・ストリート・ジャーナル 2014年8月9日
- ↑ 6.0 6.1 エティハド航空の業績不振 エアバスとボーイングに波及も - Forbes Japan・2018年7月20日
- ↑ エティハド航空、B777XやA350などボーイングとエアバスに大量発注 Aviation Wire 2013年11月18日
- ↑ Orders & deliveries The month in review: April 2012
- ↑ Etihad Airways Fleet
- ↑ ファセット・オブ・アブダビ(エティハド航空公式サイト)
- ↑ エティハド航空、2018年3月にアブダビ/バクー線を開設 A320で週3便FlyTeam 2017年10月13日付
- ↑ 就航当初は名古屋 - 北京間のみの利用は出来なかったが、現在では同区間のみの利用も可能。これは同区間を運航する日系の航空会社が存在していなかった事も理由にある。これに伴い、週末に設定されていた直行便は廃止され、全て北京経由便のみとなった。
- ↑ カタール航空、サウジアラビア・UAE・バーレーン・エジプト線を運航停止FlyTeam 2017年6月6日付
- ↑ エティハド航空、2015年6月からアブダビ/エディンバラ線に新規就航FlyTeam 2014年7月23日付
- ↑ エティハド、2018年夏にアブダビ/ダラス線を運休 アメリカンと提携解消でFlyTeam 2017年11月6日付
- ↑ エティハド航空、2017年3月下旬からアブダビ/サンパウロ線を運休FlyTeam 2016年12月19日付
- ↑ ザ・レジデンス(エティハド航空公式サイト)
- ↑ [1]
- ↑ 19.0 19.1 Etihad launches Etihad Airways Partners - BusinessTraveller・2014年10月8日
関連項目
外部リンク
- エティハド航空 公式サイト (日本語)