頭端式ホーム
頭端式ホーム(とうたんしきホーム)とは、同一平面上にプラットホームが存在し、それぞれの一端が1つにつながっている形状のものをいう。
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概要
並行した2面以上のホームを持つ場合、上空から見ると、「ヨ」の字にプラットホームが形成されており、その形状から櫛形ホーム(くしがたほーむ)とも言われている。
主に、ヨーロッパのターミナル駅に見られ、日本も私鉄または私鉄に源を発する鉄道に見られる。
基本的にターミナル駅に見られる構造だが、稀に中間駅にも存在するケースがある。また、地上駅の場合が多いが、高架駅や地下駅にも存在し、さらには地下と地上の2層構造になっている駅もある。
頭端式ホームは貨物駅にも存在する[1]。この場合、ホームに入る際は機関車を最後部に付け替え、推進運転で入線する。
利点と欠点
利点
- 上下移動がないため、必然的にバリアフリーに対応できる。
- 階段の設置も必須ではないため、構造物が少なく、構内の見通しが良い。
- ホーム頭端部がつながっているため、その全幅にわたり改札を横一列に並べることで、階段を使用せず乗降客をスムーズにさばくことができる。
- ホームのつながっている部分が各ホームの共有スペースとなり、商業施設や休憩所などを置く事ができる。
- 乗車用と降車用でホームを分けることも可能になるため、人の流れをスムーズにしやすい(阪急梅田駅、小田急新宿駅など)。
- 線路は駅から一方向にのみ伸びているので、都心部に一直線に向かう形で駅を設置することができ、さらに駅の最も都心側に駅舎を設置できる。
欠点
- 線路が行き止まりになっているため、頭端式ホームの駅を経由してさらに他の方面に向かう列車は方向転換を強いられる。特に動力集中方式の場合推進運転や機関車の付け替え、プッシュプル方式と言った対策が必須になり、動力分散方式に比べ加減速性能に劣るにもかかわらず、更に時間を占有することになる。
- ※頭端式ホームの駅の一部に通過型のホームを併設(上野駅など)したり、この駅をショートカットする線を設けることがある。
- 方向転換すると進行方向が変わるため、頭端式ホームの駅がその列車の途中駅となっている場合、進行方向が変わる旨を車掌が案内したり、クロスシート車で乗客が座席の向きを変える手間をかけることになる。引き続き乗務する運転士・車掌などの乗務員が場所を入れ替わる必要があるなどで、停車時間の増加となる。
- 一方向からしか線路が来ないため、線路の余裕が少なくなり、通過型よりも効率が悪い。通過型の終着駅であれば一時的に引き上げ線などに車両を留置して番線の効率化を図ることができるが、頭端式ホームでは行き止まりのためそれができない。
- 大都市の巨大ターミナル駅などは過密ダイヤであり、上の理由から更に線路の余裕が少なくなるため、ホームが留置線を兼ねることになってしまいホーム・番線数が増大する傾向にあり、ホーム・線路用地を多く要する。大都市は地方よりも地価が高い傾向にあり、より多くの固定資産税などが必要になる。
- 番線数が多くなると、折り返し列車などの方向などによっては配線が複雑になったり交差支障が発生しやすくなる。そのため、駅そのものがダイヤ上のネックとなる危険性もある。
- 構造上線路の延伸が困難。延伸する場合は通過型ホームを併設するか、頭端式ホームを廃止して改良工事、もしくは全く別の位置に駅を移設することになる。
- 車両が暴走した場合の危険性が高く、安全性に問題があるため、それを回避するために、あらかじめ速度を落として進入する必要があるが、この減速・徐行がダイヤ上のネックとなる。さらに、いわゆるオーバーランになった場合、重大事故に至る可能性がある(関東鉄道取手駅列車衝突事故、土佐くろしお鉄道宿毛駅衝突事故、福島交通福島駅列車衝突事故など)。下記のように頭端型ホームとなっている駅に向かう先頭車両が混雑するため、尚のこと被害が拡大しやすい。
- 行き止まり側に改札を設ける場合が多く、改札へ向かう場合や乗り換えを行なう場合は最後尾ほど歩行距離が長くなるため、乗降客の多い駅やターミナル駅では混雑が編成の行き止まりとなる側に偏る。そのため、対策として車両を増結等しても混雑の緩和効果が低く(例:西鉄天神大牟田線の西鉄福岡(天神)駅・西鉄太宰府線の太宰府駅など)、遅延の原因となることもある。このためホームの別の位置に改札を設けていたり、鉄道事業者が時差通勤を促したりしている。
島式ホームの駅に比べ、列車の本数が過密な駅、利用客が非常に多くラッシュ時の混雑が激しい駅、線路容量の余裕が少ない路線などでは、運用していく上で困難が伴う。しかもそのような駅は、ほとんどの場合用地の余裕が少ない都心部に位置しているため、抜本的な改善は容易ではなく、近鉄大阪上本町駅や京王線の新線新宿駅のようにターミナル分散化や都心部直通を兼ねて既存ホームとは別に建設した地下新線上に通過用のホームを設けた例もある。
一方、列車の本数がそれほど多くない駅の場合、構造物の少なさやバリアフリー化などの利点から、島式ホームから頭端式ホームに改造される場合もある。
頭端式ホームの状況
ヨーロッパ
ヨーロッパでは、大都市のターミナル駅は大規模な頭端式ホームを備えた駅となっている場合が多い。ロンドン、パリなどでは、壮麗な駅舎を持つ大規模な頭端式ターミナル駅が方面別に複数あるが、これらは各方面に向かう路線を別々の鉄道会社が建設し、ターミナル駅は各社の顔となる駅として建設されたためである。また、ローマのテルミニ駅も頭端式の終着駅として名高い。
日本
日本では、発展期の鉄道建設が国策として行われたこともあり、国鉄時代から頭端式ホームの駅は非常に少ない。また、将来の延長を見越した駅に限らず、港町など物理的に延長の不可能な終着駅においても機関車の付け替えおよび機回しのため島式ホームが採用されることが多かった。昭和50年頃までは国鉄の駅の多くは旅客と貨物の双方を扱う一般駅だったため、終着駅においても機関車牽引列車が入線することが多かったことから、機回しのできない頭端式ホームは敬遠されていたのである。国鉄末期において大規模な(3面以上の)頭端式ホームを有する駅は、上野駅(地上ホーム)、天王寺駅(阪和線ホーム)、高松駅くらいで、中小の駅を含めても鶴見駅(鶴見線ホーム)、横須賀駅、湊町駅、可部駅、門司港駅など数えるほどしかなかった。JRになってからは、バリアフリー化の観点などもあり、長崎駅や函館駅のように島式ホームから頭端式ホームへの改造が行われた駅もある。
一方、私鉄では延長を見込んでいない路線が多いことから頭端式ホームはごく一般的であり、阪急梅田駅をはじめ、大小さまざまな頭端式ホーム駅が見られる。
頭端式ホーム一覧
日本
(旅客駅を対象とする。面線数は頭端式部分のみ)
北海道地方
東北地方
関東地方
- かつては総武本線の両国駅も2面4線の頭端式ホームが存在した。
- 東武鉄道
- 東上本線 池袋駅(3面3線)
- 伊勢崎線(東武スカイツリーライン) 浅草駅(3面4線)
- 日光線 東武日光駅(3面5線)
- 野田線(東武アーバンパークライン) 柏駅(2面4線)
- 京浜急行電鉄
- 京王電鉄
- 小田急電鉄
- 相模鉄道
- 東京都交通局
- 上毛電気鉄道
- 上信電鉄
- 東京モノレール
- 江ノ島電鉄
- 鎌倉駅(2面2線)・藤沢駅(2面1線)
- 湘南モノレール
- 湘南モノレール江の島線 大船駅・湘南江の島駅(ともに2面1線)
中部地方
- 富士急行
- 伊豆急行
- 伊豆急下田駅(2面3線)
- 伊豆箱根鉄道
- 富山地方鉄道
- 富山ライトレール
- 万葉線
- 福井鉄道
- 北陸鉄道
- 長野電鉄
- 東海旅客鉄道(JR東海)
- 名古屋鉄道
- 近畿日本鉄道
- 静岡鉄道
- 大井川鐵道
- 豊橋鉄道
近畿地方
中国地方
四国地方
九州地方
日本以外の国
イギリス
フランス
- パリ
- マルセイユ・サン・シャルル駅 - 南仏最大のターミナルで、TGVなど多くの列車が当駅でスイッチバックする。
- リール=フランドル駅
- オルレアン駅
- トゥール駅 - リール、オルレアン、トゥールとも頭端式の駅の他に通過式の新駅があり、上記の駅には始発・終着列車のみ発着する。
ドイツ
イタリア
- ローマ・テルミニ駅
- ミラノ中央駅
- ミラノ・カドルナ駅
- ミラノ・ポルタ・ガリバルディ駅
- ヴェネツィア・サンタ・ルチーア駅
- フィレンツェ・サンタ・マリア・ノヴェッラ駅- ローマ - ミラノ間の幹線ルート上にあり、当駅を経由する列車はスイッチバックを行う。
- トリノ・ポルタ・ヌオーバ駅
- ナポリ中央駅
オランダ
オーストリア
スイス
スペイン
ポルトガル
ハンガリー
エストニア
ノルウェー
スウェーデン
フィンランド
トルコ
インド
タイ
アメリカ合衆国
- ニューヨーク
- グランド・セントラル駅(44面67線)
- グランド・セントラル-42丁目駅 (ニューヨーク市地下鉄)・42丁目シャトルのりば(2面3線)
- グランド・セントラル駅(44面67線)
- シカゴ
- デンバー
- ユニオン駅(5面8線)
- ロサンゼルス
- サンフランシスコ
- バート サンフランシスコ国際空港駅(2面3線)
- カルトレイン 4th and King駅(英語版記事)(6面12線)
脚注
- ↑ 隅田川駅・東京貨物ターミナル駅など多数。『2016貨物時刻表』、公益社団法人鉄道貨物協会、2016年3月、258 - 296頁